57:絶対なる防御?
(こちら現場のクロです。購入特典として副音声で実況します)
(なあにクロ、寝てたんじゃないの?)
(寝たふり)
(いやいや、よく解らないんだけど。それに購入特典ってなにさ)
(忙しそうなリンに代わってテレスの戦いを副音声でお送りします)
(念話じゃん)
(念話的な副音声)
(念話じゃん)
(それに私そんなに忙しくないから実況されなくても確認できるんだけど)
(甘いな! 魔闘技スキルを持たないリンは所詮素人。一子相伝である究極スキル魔闘技の技を理解出来まい! その点、我は魔闘技スキルを極めし者。我の解説を一聞けばたちまち十理解する。素晴らしい! 我を褒め称えよ!)
魔闘技スキルは無いけど魔眼で見れば理解できるし。一子相伝のスキルがなぜテレスさんとクロに継承されているのかとか色々と...
(うーん、クロ君。もしかして寝惚けてる?)
(にゅ!)
(にゅ?)
…………
……
こちらの騎士を蘇生したタイミングでテレスさん側にも動きがあった。
「今だ! 殺せ!」
トリンの指示と合わせるように親であるズヴァール卿が指示を出す。
付かず離れずの距離を取っていたズヴァール兵の中から騎士が一人歩み出る。
「女。ここまで戦えた事、流石と誉めておこう。俺の名は...」
テレスさんが一瞬ブレる。
ゴッ!
その一瞬で盾を構えた騎士が何か大きな衝撃を防いだかのようにその体勢のまま後方へとズレる。
盾を構えたままの騎士が、
「ハハハッ! 口上の最中に攻撃してくるとは流石冒険者と誉めておこう。魔物と戦うことしか知らぬ、対人との戦いという崇高な互いの尊厳をかけた場での礼儀も知らぬ蒙昧な冒険者風情と誉めておこう!」
盾の後ろから顔を覗かせ蔑んだ目でテレスさんを見つめ言う。
(リン、今のはあのアホっぽい騎士がなにか長々と語りだしそうだったからテレスが取り合えず空撃をお見舞いしたら、なんとアホっぽいくせに見事に攻撃を防いだという意外な展開。そして長々と嫌味まで言われてしまうという最悪の展開!)
(クロ先生、空撃っていうのはなんですか?)
(気っぽいものを飛ばす遠距離攻撃)
(気っぽいって、適当な表現に聞こえるんですけど)
(じゃあ、気を飛ばす遠距離攻撃)
(じゃあ、ってなんですかー?)
(質問は一回までしか受け付けないのだ!)
(意味が解りませーん)
「しかも、お前が今、全力で放ったのであろう卑怯な不意打ちが致命的であり、完全な敗北を決定付けてしまった事を知るがいい!」
騎士がスキルを発動する。
「チェーンバイト!」
半透明な鎖の様な物が騎士とテレスさんを繋ぐ!
(クロ先生あのチェーンバイトっていうのはなんですか?)
(しらん)
(え?)
(騎士のスキルなんてしらん、リンが魔眼で見て解説しれ)
(えぇ~、なにそれ)
(解説はよ!)
(ぇ~)
「フフフッ、このチェーンバイトは一定以上の敵対心を稼いだ相手に発動可能な挑発の派生スキル。鎖で繋がれたどちらかが倒れるまでこれは切れない。そして、チェーンバイトの鎖で繋がれた者はその相手にしか攻撃を加える事が出来ない。解るか?」
魔眼でスキル効果を鑑定するまでも無く親切な騎士さんが解説してくれた。
(だってさ)
(アホっぽい騎士から良い騎士に格上げしよう)
(バカな騎士の間違いじゃないの?)
(リン、それは味方にいたらという前提条件がついたらだ。敵ならばあれはとても良い騎士なのだ)
まあ、そうだね。
「お前のように飛び抜けた攻撃力を持つ冒険者というのは、稀によくいる」
(ツッコミを入れたほうがいいの?)
(待てリン、このままでは物語が全然進まない!)
(え、なに?)
(生暖かく見守るべき!)
(え、なにそれ?)
「しかしだ! いかに秀でた武力だとしても所詮は個止まり! 完全なる連携の取れた集団。群のいや軍の前には無力だと知れ!!!」
「そして、絶望の中で死ね! 絶対防御!!!」
騎士が絶対防御のスキルを発動する。
(やっぱり、そうくるよね。これは結構やばくない?)
(むぅ、助ける?)
(んー...必要無い。のかなぁ)
この展開は騎士がチェーンバイトの説明をした時点で予想出来た。
一番簡単な対処法はあの時点で騎士を殺すこと。縮地で一気に距離を詰め絶対防御を発動する間を与えず瞬殺する。テレスさんなら容易いこと。
ならばなぜそれをせずにこの状況にしてしまったのか?
(そういえばテレスさん、ずっと私のほう見てたなあ)
(人の話を聞かずに余所見をしているなんてダメな生徒さんですわ!)
(テレスさんは私の生徒じゃないかなあ)
(だが流石に余所見をしてて絶体絶命のピンチとかないだろ?)
(うーん、ないよね?)
(むーん、あるかも?)
絶対防御を発動した騎士が、
「俺とお前は互いしか攻撃できない。だが、他はその限りではない」
号令を下す。
「攻撃開始だ!」
兵が動き出す。
槍を持った騎士が前後左右からその槍で顔を背中をわき腹を脚を...
ズンッ!!!
槍が...顔を背中をわき腹を脚を貫く。
「ギャアアア!」
「ガアアア!」
「グフッ!」
「……」
悲鳴や絶命が木霊する。
その中心。そこには...
白銀に輝く美しい籠手が地面に突き刺さっている。
白虎の籠手。
いつ装備したのか、そこを中心に円を描いて広がる石の、いや岩の槍。
(クロ?)
(地裂拳。自身を中心に発動する範囲攻撃なのだ。たしかにこれなら問題無い、本気装備をしたテレスの攻撃力なら巻き添え攻撃を喰らっただけでも絶命する威力がある。流石に絶対防御を発動している騎士は無傷だが、騎士に対して範囲攻撃を発動し周りにいる者が勝手に巻き添えになる分にはあのスキルの制限には触れないのだろう)
(じゃあ、余所見をしていたわけじゃないんだね)
と、テレスさんを見るとまた余所見をしている。見ているのは私ではなくクロ? じゃなくて...
「やっと試せるわね...」
あぁ、見ているのはラムダ君だ。
「絶対防御が本当に無敵なのか...」
このためにワザとこの状況を作るなんて、なんていうか。
(燃える! テレス、イカス!)
あーここにも、もう一人、いや一匹か、いたね。
「魔闘技の奥義、最後まで受けられたものがいないのよ...」
テレスさんが嗤う。
(ウヒョー、激アツなのだ!)
クロ君大興奮。
もー、このノウキン共め!
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