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34:冒険王フジワラ

俺の名は、藤原(フジワラ) 秀平(ヒデヒラ)。


フジワラと言う名で冒険者ギルドに所属している

この世界では偉い奴しか苗字を持たないらしく、普通の者は名しかない。

日本で言うところの江戸時代とかそんな感じか、大名や武家は家名を持つが百姓は名しかないみたいな。


じゃあなんで俺はヒデヒラでなくフジワラで登録したのか?

このクソッタレな世界へのささやかな抵抗というやつだ。登録する時名前を聞かれフジワラと名乗ったからではない。


そう、俺は。


冒険者だ!!!


しかも只の冒険者ではない!!!


冒険者の中の冒険者。そう、冒険王を目指す者だ!!!!!!!




フジワラ、恰好良いポーズ決め中………………


決め中…………


中……




目の前に壁がある。

ローランアカデミーを覆う壁だ。


フフフ、冒険王の冒険心が疼くぜ!!!


隠密発動!


格闘術スキルの大ジャンプ発動! トゥ!


クルクルクル、スタッ!


サササッ!


フフ、ローランアカデミーここが俺の新しい冒険の場か!!!




まずは既に潜入中の仲間を探さなければならない!


冒険王たる俺は常に仲間を気にかける紳士!


潜入中の俺の彼女が任務を遂行できているか秘密裏に確認しなくては!


だが油断するな!


俺には天敵が居る!


そう!


やつの名は黒い悪魔!!!


俺とハニーとの仲を邪魔するお邪魔虫!


黒いお邪魔虫!!!


やつに気付かれてはならない、気配察知スキルを最大発動し常に警戒をしなくては!



くすくすくす...



まずはどうするか...周りを見回す...ん!?



くすくすくす...



目の端に白い子供が見えたような気がしたが、気のせいか?



くすくすくす...



気のせいだな。まずは目の前の建物から探索しよう。



隠密を発動したまま正面口から堂々と進入する。

学生は当然として、教師らしき男ともすれ違うが気付く素振(そぶ)りも無い。

(まあ、この程度だよな。常に命を懸けて、死と隣り合わせの生活をしている冒険者と魔物もいない安全な場で生活している者では意識の持ちようが違う)


建物内を歩き回る。

(男子寮っぽいな面白くも無い。他に行くか...)


「…………今夜行こうぜ!」

「大丈夫かよ?」


とある部屋から悪巧みの香りがする。気配察知で中を確認すると四人。


「見ただろ。あんな綺麗な顔してこれだぜ?」

「でもよ、その手紙本当に本人からなのか?」

「知るかよ、迷ってたら前回みたいに居なくなっちまうぜ」

「やれた奴等に散々自慢されたな」


会話が不穏だぜ!


「誰かの悪戯だったとしてもよ、力尽くでやっちまえば後はどうにでもなるだろ」

「けどよ、冒険者なんだろ? 強いんじゃないのか」


おいおい、雲行きが怪しいぜ!


「光魔法だけだろ、冒険者って言っても回復要員なら戦闘力は無いだろ」

「俺見たぜ。攻撃魔法専攻の女子達からビッチって罵られても何も言い返せず逃げていってたぜ」

「じゃあ、戦闘は苦手ってことか」

「だな!」


罠解除で扉の鍵を外し、静寂で扉の開く音を消し部屋へ入り、闇魔法の魅了で五人目の仲間と認識させる。


「名前はなんだっけ?」


確認をする。


「確か...リンとかいったな」


ああ、そうか...


「あれ? ところでお前誰だっけ?」


ん?


「俺の名は死神フジワラ。お前達を殺すものだよ」



四つの死体をアイテムボックスに仕舞う。一人で迷宮行った時にでも捨てておこう。


思っていたが、楠木は敵に対しては容赦がないみたいだが、敵と判断する基準が緩(ゆる)過ぎる気がする。

危険があるなら芽のうちから摘み取っておくべきだ。半端な倫理観など己を殺すだけの枷でしかない。

なんて俺が言おうものなら、クソネコになんて言い返されるか...


「大体なぁ、楠木のほうが俺より絶対強いもんなぁ...あー、なんかへこむわ」

だが、クソネコには負けない! と思ったがクソネコのステータスって楠木と同じなんだよな。

俺よりINTの高いカーサばあさんの鑑定を余裕でレジストするINTの値って幾つなんだよってな、そして知性の欠片も見出せないクソネコのINTもそれと同じと言う事実。


不条理だ。INTで大差がついてるという事は魔法でクソネコに勝てないという事になる。

しかも、俺がユニークスキルの刀術を手に入れて差をつけたと思ったらクソネコは魔闘技とかいう凄く怖いテレスお姉たまと同じユニークスキルと手に入れてるし。


ネコに勝てる気がしないとか、ドンダケ~って叫びたくなるぜ!



などと考えながら歩いていると。目の前に怪しげな施設が...

「おいおい、これはまさか...」


鼻を突く独特な臭いが高い石垣の上から漂って来る。


石垣を観察するが、見事なほどに隙間の無いそれは足場はおろか指を掛ける事さえ出来そうにない。


「鉄壁だな...」

何者の侵入も許さないそれを見上げる。


「だが、俺には効かないぜ!!!」

そこに障害があれば乗り越える。それが冒険王フジワラの矜持だぜ!



格闘スキル発動!


大ジャンプ! そして最高到達地点で、二段ジャンプ!


ぬぅ! まだだ! 三段ジャンプ!!!


クルクルクル! シタッ!


「俺に越えられない壁は無いぜ!!!」


………………


…………


……


カポーン! ザバーッ!

鹿脅(ししおど)しの音が響く。


「クッ! 未知の空間だぜ...」


硫黄の臭いが鼻を突く。


カラカラカラ...と引き戸を開き誰かが入ってくる...


「クッ! 未知の体験だぜ...」


隠密を発動し、それでもドキドキが止まらず思わず物陰に隠れる。


「クッ! こんなプレッシャーは初めてだぜ...」


未知の領域へと足を踏み出す冒険王フジワラ。彼の明日はどっちだ!?

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