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25:初めての授業4

(むきゃ~、や~め~る~の~だぁぁぁ!)

勝手に変なナレーションを入れていた子をフードから取り出しわしゃわしゃの刑に処す。


やめろと言いつつ腕にガシッとしがみついてきて、手のひらに頭をぐりぐりと押し付けてくる。


わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ

わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ

かみかみかみかみかみかみわしゃわしゃわしゃわしゃ

わしゃわしゃわしゃわしゃかみかみかみわしゃわしゃ


「にゅぅぅぅ~」

嬉しそうにぐったりとしたその子を緩めた(えり)の合わせから懐にしまう。

もぞもぞと服の中で動き回り何種類かの恰好(かっこう)を試した後、背中を下にした体勢で丸まり前足をたたみその上に頭を乗せ後ろ足はだらしなく上に伸ばし、くわぁ~とひとつ欠伸(あくび)をしてから目を瞑る。本格的な休憩の体勢でそのまま永遠の眠りにつくネコ。


その一部始終をキラキラした目で見ていたマウラさんが一言。

「リン先生、私もワシャワシャしたいです!」

「だが断る!」

「はうあ! ひどいです」

はうあってなんだと小一時間問い詰めたい気持ちが止められない!


…………

……


最近、誰かの影響で自分の言動がおかしくなってきていると思うのは気のせいだろうか?

...気にしたら負けか。




小皿に水を張り種を一粒。


「じゃあ、取り合えずこれにヒールを掛けてみて」

「ワシャワシャさせてくれたらやります!」

「じゃあ、やらなくていいや」

「ごめんなさい、やらせてください」

ホッとしたり焦ったり、今の彼女は少し情緒不安定だ。

やりたくないと遠まわしに言い、やらせてくださいと本気で言う。


わからなくも無い。


覚悟を決めたのか使い古された魔法の杖を取り出し。

「ヒール!」

彼女の中に魔法の発動を感じる。


しかし、杖からは暖かい光どころか何の反応も無い。

「ふむ...もう一回やってみて」

「は、はい...ヒール!」

マウラさんを()る。


魔法は発動している。

MPも減っているし、ヒール自体も発動はしている。

これは、自分にヒールが掛かっている状態だなぁ。


「その魔法の杖は、誰かのお(ふる)ですか?」

杖に発動した魔法が伝わらないのは、杖に問題があるのか本人に問題があるのか。

「はい、光魔法を使えた母から譲り受けました」

「お母様の形見ね」

「生きています」

「あ、そう。じゃあこの杖でやってみて」


「はい...ヒール!」

「ふーむ...」

何人かの生徒がこちらを見ながらひそひそと話しをしている。

マウラさんもそれに気付いているけど少しうつむいているだけで特に何も言わない。


恥かしいのか悔しいのか。

ずっとこの状態でこのクラスのまとめ役をやらされてたのか、なかなかエグいことをする。


過度のプレッシャーを与える事で本人の革新を促したのか、単純に使えないけど光魔法のスキルがあるからという理由で任せたのか、どちらにしても針のむしろというやつだ。



最初に出会ったのは、大図書館。


ほとんど人が来ない本棚のそばに座り込み一人きりで光魔法の本を読むというのはどういうことか?

あれは、なにか手がかりを探そうという思いよりも、誰とも会いたく無いという思いのほうが強かったのではないのか?


スキルが有る者からはスキルがあるのに使えないと(さげす)まれ。

スキルが無い者からはスキルがあるのに使えないと(ねた)まれ。


どちらの仲間にもなれない一人ぼっち。


毎日どのような思いで過ごしているのか?



まあ、そんなことはどうでもいいか。

「ちょっと両手を合わせて上に向けて」

「え、はい...」


杖を置いて手を出す彼女の手のひらに小皿の水を少し垂らし種を置く。


発動した魔力が杖に上手く伝わっていないならばどうすればいいか?

簡単な事だ、媒介無しで直接対象に触れればいい。手当てと言う言葉があるように、手のひらという場所が外に触れる場所としては一番適している。


「じゃあ、この状態でヒールしてみて」

「え、あの、魔法の杖が...」

「ああ、多分必要ないから」

「え?」

「まあ、やってみればわかるよ、説明はそれからしてあげるからさ」

「は、はい...」



ヒール!

呪文とともに彼女の手のひらがひかり、暖かな光に包まれる。

「あ!」

驚きの声とともに、種から小さな芽が出る。

「お、一回で芽が出るとはなかなかの回復力だね」


「魔法が、発動出来た...」

手のひらに芽吹いた小さな芽を見ながら呆然と呟く彼女。


「マウラさんはね、多分杖との相性が良くないんだ。もしかしたら相性の良い道具か武器があるのかもしれないけど、色々試してみないとわからないし見つけるのも時間かかるだろうからね」


ポロポロと涙を流しだすマウラさん。


「自分でもわかってただろうけどヒールの魔法自体は発動してたから後はそれをどうやって外の対象に向かって発動するようにすればいいかだけだったからね、まあ手で直接触れて発動すると言う方法が一番確実だし手っ取り早い方法だったから」


お礼を言いながら抱きつかれる。

むぎゅ、苦しいよ。


「取り合えずしばらくは手のひらから直接発動する方法で魔法を外に発動する感覚を覚えるといいよ、しばらくは直接触らないとダメだろうけど上手くいけば媒介無しでも離れた相手にヒール出来る様になるかも知れないからさ」


他の生徒達も集まってきてマウラさんを祝福する。

上辺(うわべ)だけの人もいれば心から祝福している人もいる。


なんだ、心配してくれてる人もいるじゃん。



良かったね。




(リン、我、圧死のピンチ! 救援求む!)

私に抱きついてはなれないマウラさんに潰されそうなクロがむぎゅーといいながら救援を求めいてきた。

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