↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大英雄が無職で何が悪い  作者: 十文字青
All you need is what編
49/120

第48話 泣かないで



 ノール。

 ノール。

 ノール。


 ノール。ノール。ノール。


 ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。


 ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。


 ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。ノール。


 ドワーフよりもおそらくノールのほうが多い。どこもかしこもノール、生きたノールと死んだノールだらけだ。鉄血王国はノールにまみれている。


「どんだけいやがるんだ、ノールって生き物は……」

 万夫不当、天下無敵の俺も呆れるしかない。


「数はわからん」

 とゴットヘルドが弾薬筒を引っぱりだしながら言う。

 俺たちはゴットヘルドとハイネマリーの家にいる。ブルックベックのノール穴から鉄血王国に戻ってから、ノールどもをだいぶ撃った。あまりにもノールが多すぎて撃てば当たるという有様だったが、そのうち弾薬筒が切れそうになった。補給のために帰宅したってわけだ。まあ、家の中もノールどもに荒らされまくっていて、鍵の掛かった奥の保管庫にしまってあった銃と弾薬筒以外、使えそうな物は何も残ってなかったんだけどな。

 ゴットヘルドは俺に弾薬筒を詰めたケースを投げてよこしながら、

「鉄血王国も広大だが、ノールのトンネルはその上を行くとも言われている。大半のドワーフは認めたがらんが、連中の掘削能力だけは本物だ。それに、繁殖力も」


「あいつらはな」

 ヴィーリッヒはノームの斬りすぎで大剣が刃こぼれして、そのへんに転がっていた武器を適当に使っていたが、それもぜんぶだめにしてしまった。今はゴットヘルドが作った旧式の銃を剣代わりにできないか試しているみたいだ。

 いや、振らねーで撃てよ。

「生まれてから、物の二年か三年ででかくなる。そのときから盗人だ」


「……でも、ノールキングを倒せばノール嵐は収まるって……」

 イチカはまだくどくど言っている。


「むうう……だめだッ!」

 ハイネマリーが自分の部屋から出てきた。

「おぬしに何かズボンのような物でもと思ったのだが、残念ながらすべてノールにとられてしまったようだ……ッ!」


「……な、なかったんだ。そっか……」

 イチカは腰に巻いている俺のパーカーを押さえた。


「ぬー」

 モモヒナが眉をハの字にした。

「いっちょんちょん、のーぱんすーすーだよねー。風邪ひいちゃうかなー」

「……ノーパンとか言わないで、モモヒナ」

「んなこと言ったって、ノーパンなんだからしょうがねーだろ」

 と俺が言うと、イチカは顔を真っ赤にして、

「だから、わざわざ言わないでってば! 意識しないようにしてるんだから……っ」


「キサラギ様」

 ミリリュが真剣な顔つきで俺に迫ってきた。

「これから、いかがいたしましょう」

「いいけどおまえ、なんでオッパイの間に布的なもの挟んでんだ」

「あっ、こ、これはっ、その……っ」

 ミリリュは手で胸元を隠そうとしたが、その程度で隠しきれるようなオッパイじゃない。

「は、恥ずかしながら、ここはなかなか暑いですし、蒸れてしまうので、つい……」

「へえ。オッパイでけーのも、それはそれで大変なんだな」

「……おっぱい……」

 ハイネマリーがうつむいて、両手で自分の胸をさわった。

「おっぱい……ハイネマリーは、ほとんどない……モモヒナも多少は……キサラギッ!」

「あ?」

「キサラギは大きなおっぱいが好きなのかッ!?」

「んー。どうだかな。まあ、大は小を兼ねるとかいうし、大きいほうが応用はきくんじゃねーの」

「お、応用……ッ!? もしかして、おっぱいには基本編と応用編があるのか……ッ!? それはたとえば、どのような……ッ!?」

「いや、知らねーけど」

「キサラギ」

「……だからゴットヘルド、俺に銃を向けるのはよせっつってんだろ」

「く……ッ!」

 ハイネマリーは床を蹴った。

「このハイネマリーにもおっぱいがあればッ! おっぱいさえあれば……ッ! こんなことには……ッ!」

「オッパイの問題じゃねーと思うぞ……」

「では、何が悪いのだッ!?」

「べつに悪くはねーだろ。おまえはおまえでいいだろうが」

「そッ……それは……ッ、つまり、このままのハイネマリーでも、すッ……好きだということかッ。おっぱいがなくても……ッ!?」

「少なくとも、オッパイにはこだわってねーよ」

「そ、そうか。よかった……。おっぱいが大きくなるのは望み薄なので、もうだめかとハイネマリーは思ってしまった……」


 とりあえずおまえは頭のほうがだめなんじゃねーのかと思わなくもなかったが、めんどくせーから言わないでおいた。

「これからどうするか、か」

 俺は弾薬筒のケースを確かめた。最初より弾の数は少ない。節約してかねーとまずそうだな。

「乗りかかった船ってやつだ。ここで退けるかよ。俺はノール嵐を止める」


「だけど、どうやって……?」

 イチカは今にも死にそうな顔をしている。

 でも考えてみりゃあ、こいつ、ノールにつかまって、助けだされて、ノールキング殺しに参加して……なんだよな。


「方法は」

 俺は舌打ちをしそうになって、抑える。


 くそったれ。


 俺の中に仮定はある。ただ、あくまで仮定でしかない。

「わからねーけどな。なんとかするんだよ」


「……あんたは、いっつもそう」

 イチカは下を向いて、唇を噛んだ。

「なんとかする、なんとかなるって。本当に考えてるの? あてがあるの? ぜんぜん説明してくれないし。行き当たりばったりとしか思えない。こっちの気持ちにもなってみてよ。怖いの。怖くてたまらないの。あんたはわたしのこと、ビビリだって馬鹿にするけど、悪い? 怖がって、おかしい? 怖い目になんか遭いたくない。わたしが変なの? 変じゃないでしょ? だけど……」


 また泣くんだろうな。


 こいつは泣いてばっかりだしな。


 俺の予想が外れるなんて、めずらしいこともあるもんだ。


「だけど」


 イチカは顔を上げて、今にも泣きだしそうだが、泣いてはいない、それどころか、唇の両端をつりあげて、きらきら光る目を細めて、笑ってみせた。


 不覚にも俺は、どきっとした。


 天下広しといえども、そんな表情はこいつにしかできそうにない。


「だけど、何を言ってもどうせむだでしょ。あんたは人の言うことなんか、聞かないんだから。だからって、放っといて死なれたりしたら寝覚めが悪いから……ついてってあげる。感謝とか、しなくてもいい。あんたはそんなこと、しないだろうし。わたしがしたくてすることだから。わたしはあんたを死なせない。わたしは、神官だから」


 俺は、ふっ、と鼻を鳴らした。

 何か言い返したいのに、どういうわけか言葉が出てこない。

「まあ……」

 やっとしぼりだしたのが、それだった。何だよ、まあって。まあ、何だ?


 よくわかんねーな。


 とにかく、それどころじゃねーか。

 俺は銃を構えた。

 出入口に銃口を向ける。


 その直後、出入口の扉が吹き飛んだ。ノールどもがなだれこんでくる。俺は銃をぶっ放して、すぐさま次弾を装填した。ゴットヘルドも撃つ。ヴィーリッヒは銃でノールをぶん殴った。

「ここにいたら袋の鼠だ!」

 俺はノールを撃ち殺しながら叫んだ。

「外に出るぞ……!」

感想、評価、レビューなどいただけますと、はげみになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。