14/14
「仕方なく」と文句を言いながら世話する夫
夫は昔から犬が好きじゃなかった。
毛がつくし、世話も大変だし、うるさいから嫌なんだと。
娘が捨て犬を連れて帰ってきた時も最後まで反対していた。
それでも娘に押し切られ
「世話は全てお前がするなら。」
と渋々飼い始めた。
娘はちゃんと世話をしていたが
数年後、県外の大学へ進学して家を出た。
気づけば夫は「仕方なく」と文句を言いながら
毎日散歩へ連れて行き、ご飯をあげていた。
昨年の猛暑日、私は用事があって朝から出かけ
夫は庭の草むしりに精を出していた。
用事が終わり帰宅すると家の前に救急車が止まっていた。
あとでご近所さんから聞いたら
犬がすごい勢いで吠え続けてるから見に行ったら
夫が倒れているのを見つけて、すぐに救急車を呼んでくれたらしい。
夫は、朝からずっと庭仕事してて熱中症になってた。
誰にも気づかれなかったら危なかったと思う。
もう老犬で吠えることなんて滅多になかったのに
一番大きな声で「助けて」と叫んで家族を守ってくれたんだ。
娘に電話でこの事を話すと、少し笑って言った。
「お父さんよく『仕方なく』って言ってたけど
一番かわいがってたからね。
犬はね、優しくされたこと、忘れないんだって。」




