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あの日、言えなかったありがとう  作者: 二晴


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「仕方なく」と文句を言いながら世話する夫

夫は昔から犬が好きじゃなかった。

毛がつくし、世話も大変だし、うるさいから嫌なんだと。


娘が捨て犬を連れて帰ってきた時も最後まで反対していた。


それでも娘に押し切られ


「世話は全てお前がするなら。」


と渋々飼い始めた。


娘はちゃんと世話をしていたが

数年後、県外の大学へ進学して家を出た。


気づけば夫は「仕方なく」と文句を言いながら

毎日散歩へ連れて行き、ご飯をあげていた。


昨年の猛暑日、私は用事があって朝から出かけ

夫は庭の草むしりに精を出していた。


用事が終わり帰宅すると家の前に救急車が止まっていた。


あとでご近所さんから聞いたら


犬がすごい勢いで吠え続けてるから見に行ったら

夫が倒れているのを見つけて、すぐに救急車を呼んでくれたらしい。


夫は、朝からずっと庭仕事してて熱中症になってた。


誰にも気づかれなかったら危なかったと思う。


もう老犬で吠えることなんて滅多になかったのに

一番大きな声で「助けて」と叫んで家族を守ってくれたんだ。


娘に電話でこの事を話すと、少し笑って言った。



「お父さんよく『仕方なく』って言ってたけど

一番かわいがってたからね。


犬はね、優しくされたこと、忘れないんだって。」

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