第2話 神獣と王女
第2話 神獣と王女
翌朝、遠くから悲鳴と馬の蹄の音が聞こえた。ジンの報告によれば、魔帝国の斥候が近隣を襲っているという。だが、もっと切迫しているのは、逃げ延びてきた小国の王女とその護衛たちの存在だった。
王女――**エリス(えりす)**は、血にまみれた衣で震えていた。彼女の国は魔帝国の侵攻で滅び、残された民は逃げ惑っていた。アークは彼女を抱き上げ、優しく頬に触れた。
「ここが安全だと、約束しよう」アークの声は低く、だが確かだった。
魔帝国の大軍が迫る。数万という数に対して、クランの出撃は数百規模に過ぎない。だが、戦は数で決まるものではない。ダンテ(だんて)とガレス(がれす)が前に立つ。ダンテは掌から炎を噴き出し、空を赤く染める。ガレスは巨きな盾を掲げ、地を踏みしめるだけで周囲の魔力を吸い取る。
「退け」ガレスの声は岩のように重い。魔帝国の兵たちは一瞬で動きを止めた。ダンテの一撃が空を裂き、数万の軍勢は灰と化した。地は震え、空は静まり返る。誰もが息を呑んだ。
戦が終わると、エレナ(えれな)が傷ついた者たちに手をかざす。光が流れ、血は止まり、命が戻る。王女は膝をつき、涙を流した。
「あなたたちが――神ですか」彼女の声は震えていたが、そこには確かな敬意があった。
アークは首を振る。「違う。僕たちは人だ。だが、人としてできることを、全力でやるだけだ」
その日から、クランの城には難民が集まり、噂は瞬く間に広がった。人々(ひとびと)は「救世主」と呼び、子どもたちは幹部たちを英雄として崇拝した。だが、魔帝国の皇帝は黙ってはいなかった。彼は怒り、古代の兵器を目覚めさせる準備を始める。




