第13話『急襲』⑧
「先輩っ!」
また咲の声がマスク越しに響いてくる。
「そうだ、俺は……帰るって約束……した!」
優は咲の顔を思い浮かべ、意識を繋ぎ止めた。そしてマスクの中で返事を返す。
「咲、お前はいつも俺に力を与えてくれるな」
「ピンチの時に何を言ってるんですか! このままじゃ先輩……」
「咲、スーツの電気伝導率をゼロ、つまり反発するようにしてくれっ」
「なるほど! はいっ」
「こんな時に何をほざいているっ」
マインズが電撃の出力を上げたようで鞭が一層青白く輝く。このままその電流が優に流れるかと思いきや、青白い光がマインズ側に逆流した。呻きを上げて転がるマインズ。優はようやく電撃地獄から脱出した。
「はあっ……はぁ。何とか、抜け出せたな」
「逆放電とは小癪な真似を……。だが、ダメージは大きいようだな」
「かもな……。だが、俺は絶対に諦めないっ!」
指摘された通り、電撃のダメージで身体はボロボロだったが、優の心は折れていない。
「そうだったな、お前も私の……迫川家の血を引いている……」
「そうだな……父さんの血だ!」
優は右手を銃のように父に突き出した。だが、父は彼の方ではなく、カイゼルとウォーグの戦いに目を向けた。自然と優もそれを目で追う。
「優、お前が息巻くのは結構だ。だが、見ろ! どんなにお前があがいても無駄なのだ。既にウォーグ様はカイゼルを超えた」
「う、嘘だ……」
優は自分の目を疑った。視線の先にはやられて傷ついているカイゼルの姿があった。その身体から輝きは失われていた。優は思わず声を上げる。
「カイゼルさんっ」
「だ、大丈夫だ……」
応えたカイゼルは再度銀の輝きを煌めかせ、立ち上がった。ダメージは大きいようだが、まだ相当なパワーを発しているのが感じられる。
「先程もそれで通じなかったのがわからんか。もう我はお前を超えたのだ」
ウォーグもいつもの赤黒いオーラを纏っているが、さらに異質な小爆発のようなエネルギーがあちこちに渦巻いていた。まるで赤黒い雲か煙の中に、時折太陽の光が煌めくようなイメージだ。
ウォーグ目掛けて銀色の光が走った。だが、それは赤黒い雲に阻まれてかき消された。奴はカイゼルの一撃を顔面に受けても平然としているのだった。
「力の差は歴然……。もはや勝ち目はない、諦めろ」
「そんな筈はないっ」
カイゼルはバックステップしてからもう一度連続攻撃を繰り出すが、ウォーグは平然と受け流している。
「お前がその銀の力に目覚めた時に我を凌駕したように、我もこの新たな力でお前を超えたのだよ」
言いながら振るった拳がカイゼルのボディを捕え、その身体を吹っ飛ばした。何とか立ち上がったカイゼルが問い掛ける。
「新たな力……一体何をした。お前のオーラの中で爆発を起こしているそのエネルギーが原因か?」
「そうだ。原子力をエネルギーに変換したのだ」
「そうか、先日、研究センターで奪っていったのは……」
優は少し前の出来事を思い出して叫んだ。確か実験室の金庫の中身が奪われていた筈だ。
「私が進言した。ウォーグ様の力を増大させる術がないかとな」
「父さん……何て事を……」
優は父の顔を睨んだ。父がカイゼルを追い込む片棒を担いでいたというのは許し難い事実だった。原子力をウォーグのパワーに追加出来たとしたら、ただでさえ恐るべき力を持っているのに、さらにこれまでを超えるとんでもないパワーを発揮しそうだ。
「原子力だか何だか知らんが、俺は負けん!」
カイゼルが再び立ち上がり、銀の光を放出する。そして、両腕にエネルギーを集中し、
「シャイニングバーストッ!」
叫びと共に光弾をウォーグ目掛けて放った。
ウォーグはそれを避ける素振りも見せず、ただ半身になって右腕を前に出している。光のエネルギー弾が確かにその右腕に命中したが、奴の赤黒いオーラが覆い隠すように掻き消してしまった。
「な、何だと……」
「悲しいな、これ程までに差が開いてしまったか」




