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第十八話

 五月四日、月曜日。


 ……。


 目が覚めた。


 カーテン。


 明るい。


 ……。


 朝。


 私は枕元のスマホを取った。


 九時十二分。


 ……。


 結構寝た。


 でも。


 今日は休み。


 明日も休み。


 明後日も休み。


 ……。


 ゴールデンウィーク。


 最高。


 私は布団の中で伸びをした。


 んー。


 ……。


 あ。


 そうだ。


 今日、なおと出かけるんだった。


 画材屋さん。


 それから楽譜のお店。


 なおが画材を買いに行くって言って。


 私も、そろそろ新しい楽譜が欲しかったから。


 じゃあ一緒に行こうって。


 ……。


 それだけ。


 別に、大きな予定があるわけじゃない。


 でも。


 ちょっと楽しみ。


 私は身体を起こした。


 ベッドから降りる。


 カーテン。


 開ける。


 ……。


 晴れ。


 いい天気。


 少し暑そう。


 もう五月だもんね。


 クローゼットを開ける。


 服。


 ……。


 何着よう。


 白いブラウス。


 薄い青のスカート。


 ……。


 これでいいかな。


 鏡。


 髪。


 ……。


 あ。


 今日、そんなに跳ねてない。


 よし。


 着替える。


 バッグ。


 財布。


 スマホ。


 イヤホン。


 ……。


 あ。


 定期。


 入れとこ。


 準備。


 大体終わり。


 私は部屋を出た。


     *


 階段を下りる。


 ……。


 何か音がする。


 リビング。


 ……。


 テレビ?


 いや。


 違う。


 小さい音。


 何かが床に触れる音。


 それから。


 少しだけ、息を吐く声。


 ……。


 誰だろ。


 扉を開ける。


 ……。


 あ。


 長谷川。


 ソファの前にマットを敷いていた。


 片脚で立ってる。


 左。


 膝を少し曲げる。


 戻す。


 ……。


 リハビリ?


 あ。


 そうか。


 サッカー部に入ったんだっけ。


 まだ練習はできないって言ってたけど。


 ……。


 こういうことはするんだ。


「おはよ」


 長谷川がこっちを見た。


「……おはよ」


 私は返した。


 ……。


 長谷川。


 また鏡へ向き直る。


 左脚。


 ゆっくり曲げる。


 ……。


 止める。


 戻す。


 ……。


 真剣。


 ……。


 いつも、こういう顔してるわけじゃないんだ。


 いや。


 そりゃそうか。


 別に、四六時中ふざけてるわけじゃないし。


 ……。


 私はキッチンへ向かった。


 冷蔵庫。


 牛乳。


 自分のパン。


 ……。


 ある。


 よし。


 トースターへ入れる。


 つまみを回す。


 カチ。


 ……。


 コップ。


 牛乳を注ぐ。


 ……。


 長谷川。


 まだマットの上。


 鏡を見ている。


 ……。


 邪魔しない方がいいかな。


 別に、話す用事もないし。


 私はテーブルへ向かった。


 椅子に座る。


 ……。


 静か。


 彩愛がいない。


 ジュンも。


 ……。


 今日、二人とも早かったんだっけ。


 彩愛は部活。


 県総体が近いから、練習も忙しいらしい。


 ジュンは撮影。


 映画。


 ……。


 『正義のヒーローとは』。


 昨日、台本にそのタイトルが書いてあるのを見た。


 ……。


 何か。


 壮大な名前。


 どんな話なんだろ。


 ジュンは楽しそうに仕事の話をするけど、内容はまだあんまり教えてくれない。


 ……。


 まあ。


 公開前だし。


 言えないこともあるよね。


 私は牛乳を一口飲んだ。


 ……。


 冷たい。


 長谷川が息を吐いた。


「……よし」


 マットから降りる。


 ……。


 終わった?


 いや。


 まだ何かするのかな。


 長谷川は水を飲んで、スマホを見た。


 画面。


 何か確認してる。


 ……。


 リハビリのメニュー?


 分かんないけど。


 私はトースターを見た。


 ……。


 まだ。


「武田」


 長谷川。


 ……。


 あ。


 呼ばれた。


「……何?」


「トースター使ってんの?」


「……うん」


「了解」


 ……。


 それだけ。


 長谷川はキッチンの反対側へ行った。


 ……。


 よかった。


 いや。


 何が?


 別に、何もなかったけど。


 ……。


 私はコップを持ち直した。


 こういう時。


 まだ少し、身体に力が入る。


 ……。


 長谷川は何もしてない。


 それは分かってる。


 勝手に近づいてきたりしないし。


 私のものにも触らない。


 ……。


 分かってるんだけど。


 それと。


 平気かどうかは。


 ……。


 別。


 トースターが鳴った。


 チン。


 ……。


 あ。


 パン。


 私は立ち上がった。


 皿。


 取る。


 焼けたパンを載せる。


 ……。


 ちょうどいい。


 私は席へ戻った。


 その時。


 階段。


 足音。


 ……。


「あ、おはよう」


 なお。


 リビングへ入ってきた。


「おはよ」


 私は答えた。


「おう」


 長谷川も。


 なおが私を見る。


「晴瑠奈ちゃん、もう準備した?」


「うん。大体」


「そっか」


 ……。


 なお。


 まだ部屋着。


 髪。


 少し乱れてる。


 ……。


 起きたばっかかな。


「なおは?」


「これから」


「……そっか」


 なおが頷いた。


 長谷川が冷蔵庫を開けた。


「赤間、朝飯どうする?」


「……何かある?」


「おにぎりなら作れるぞ」


「……じゃあ、それ」


「了解」


 ……。


 なお。


 普通に頼んでる。


 ……。


 まあ。


 そうだよね。


 私はパンをちぎった。


 一口。


 ……。


 おいしい。


 なおが隣へ座る。


「何時に出る?」


「十一時くらいでいい?」


「うん」


「なお、間に合う?」


「間に合うよ」


「じゃあ、それで」


 ……。


 なおがスマホを開いた。


 地図。


 ……。


 あ。


 もう調べてる。


 画材屋さん。


 楽譜のお店。


 それぞれの場所。


 ……。


 ちゃんとしてるな。


 私はパンをもう一口食べた。


「今日、二人で出かけんの?」


 長谷川が聞いた。


 ……。


「……うん」


 私が答える。


「何時くらいに帰る?」


「……夕方?」


 ……。


 なおが顔を上げた。


「四時か五時くらいだと思う」


「了解」


 ……。


 長谷川が頷く。


「じゃあ、夕飯は帰ってから考える感じか」


「……私は自分で用意する」


 言った。


「おう、分かった」


 ……。


 それだけ。


 長谷川は、なおの朝ご飯の準備へ戻った。


 ……。


 私はパンを食べる。


 なおは地図を見てる。


 長谷川はキッチン。


 ……。


 普通の朝。


 ……。


 少し前よりは。


 こういうのにも慣れてきた。


 ……。


 全部が平気になったわけじゃないけど。


 私はスマホを見る。


 九時三十七分。


 ……。


 まだ時間ある。


 なおの準備。


 待とう。


     *


 十一時六分。


 ……。


 外。


 明るい。


 思ったより暑い。


 私はバッグを肩に掛け直した。


 隣。


 なお。


 白いブラウス。


 薄い色のスカート。


 小さめのバッグ。


 ……。


 何か。


 雰囲気違う。


 家ではもっとゆるい服を着てることが多いし。


 ……。


 いや。


 普通にかわいい。


「なお」


「何?」


「その服、似合ってるね」


 なおがこっちを見た。


 ……。


 少し止まる。


「……ありがとう」


「うん」


「晴瑠奈ちゃんも、似合ってる」


「ありがと」


 ……。


 なおが少し笑った。


 ……。


 あ。


 こういう時のなお。


 結構かわいいんだよね。


 もともとかわいいけど。


 ……。


 何考えてるか分かんない時もあるけど。


 私は歩き出した。


 なおも。


 並ぶ。


 休日。


 人。


 結構いる。


 家族。


 友達。


 カップル。


 ……。


 ゴールデンウィークだなあ。


 駅。


 改札。


 電車。


 ……。


 人、多い。


「混んでるね」


 私が言った。


「うん」


「座れないかも」


「大丈夫」


 ……。


 そういうことじゃないんだけど。


 まあ、いいか。


 電車へ乗る。


 つり革。


 つかまる。


 ……。


 揺れる。


 窓の外。


 建物。


 道路。


 人。


 ……。


 流れていく。


 バッグの中。


 イヤホン。


 ……。


 今日は使わなくていいか。


 なおといるし。


「晴瑠奈ちゃん」


「ん?」


「何の楽譜を見る予定?」


「ああ。まだ決めてない」


「そうなの?」


「うん。いいのがあったら買おうかなって」


「そっか」


 ……。


 なおが少し考える。


「楽譜って、見ただけで音が分かる?」


 ……。


 え。


 何その質問。


「……まあ、ある程度は?」


「そうなんだ」


「弾いてみないと分かんないこともあるけど」


「うん」


 ……。


 なお。


 考えてる。


 ……。


 何だろ。


 そんなに楽譜が気になる?


「線と記号で、音を残してるんだよね」


「……そうだね」


「すごいね」


 ……。


 すごい?


 楽譜が?


 ……。


 まあ。


 考えてみたら、すごいのかな。


 私は窓を見た。


 ……。


 音符。


 五線。


 休符。


 強弱記号。


 ……。


 小さい頃から見てきたから、あんまり考えたことなかった。


「なおって、楽譜読める?」


 聞いた。


「少しだけ」


「へえ」


「授業で習ったところは」


「ああ、そっか」


 ……。


 なおが頷く。


 ……。


 まあ。


 普段から音楽やってるわけじゃないなら。


 そんなもんか。


「なおは何買うの?」


 私は聞いた。


「紙と、絵の具」


「普通の?」


「……普通って?」


 ……。


 あ。


 そう来た。


「いや、水彩とか?」


「ああ」


 なおが頷く。


「水彩も見るけど、今日は紙の方が大事かな」


「紙?」


「うん」


「何か描くの?」


「まだ決めてない」


 ……。


 え。


 決めてないのに買うんだ。


 なおが続けた。


「試したいことはあるから」


「へえ」


 ……。


 試したいこと。


 何だろ。


 ……。


 まあ。


 あとで聞こう。


 電車。


 少し揺れる。


 なおがつり革を握り直した。


 ……。


 次の駅。


 もうすぐ。


     *


 画材屋。


 ……。


 広い。


 思ったより。


 私は入口で立ち止まった。


 絵の具。


 筆。


 紙。


 キャンバス。


 ……。


 すご。


 こんなに種類あるんだ。


「晴瑠奈ちゃん」


「ん?」


「先に紙を見てもいい?」


「うん、いいよ」


 なおが歩き出した。


 ……。


 あ。


 速い。


 いつもより。


 ……。


 目的地が決まってる人の歩き方。


 私はついていった。


 紙。


 棚。


 ……。


 何これ。


 全部白い。


 いや。


 微妙に違うけど。


 ……。


 同じに見える。


 なおが一枚を手に取った。


 触る。


 裏返す。


 光に透かす。


 ……。


 何してるんだろ。


「なお」


「何?」


「何が違うの?」


 なおが紙を見た。


「表面」


「……表面?」


「うん。こっちは凹凸が大きくて、こっちは少ない」


「へえ」


「あと、厚さと、水の吸い方」


「そんなに変わる?」


「変わるよ」


 なおが紙を傾けた。


「同じ絵の具でも、広がり方が違うから」


「……なるほど」


「線の端も変わるし」


「へえ」


 ……。


 私は紙を見た。


 ……。


 分からん。


 いや。


 言われたら、ちょっと違う気もする。


「触ってみる?」


 なおが聞いた。


「いいの?」


「うん」


 私は指先で紙に触れた。


 ……。


 あ。


 ざらざら。


 もう一枚。


 ……。


 こっちは、ちょっと滑らか。


「……ほんとだ」


「でしょ」


 なおが少し笑った。


 ……。


 嬉しそう。


 私はもう一度触った。


 ……。


 紙って。


 こんなに違うんだ。


 知らなかった。


「なおは、いつもこういうの考えてるの?」


 聞いた。


「……こういうの?」


「紙の違いとか」


「ああ」


 なおが少し考える。


「描きたいものによるかな」


「へえ」


「何を残したいかで、使いたいものも変わるから」


 ……。


 なるほど。


 私は紙を見る。


 ……。


 全部こだわってたら、大変そう。


「なおって、全部こだわりそうだよね」


 言った。


 なおが首を傾げた。


「……全部?」


「うん」


 なおが少し考える。


「全部は難しいかな」


「……あ、そうなんだ」


「時間、足りなくなるから」


 ……。


 あ。


 なるほど。


 ……。


 私もピアノであるな。


 一音一音、全部同じくらい気にしてたら。


 曲。


 進まない。


 ……。


 似てるのかも。


 ちょっとだけ。


 なおが紙を二種類取った。


「……こっちも」


「決まった?」


「もう少し見る」


「うん」


 ……。


 私は隣の棚へ向かった。


 色鉛筆。


 すごい数。


 赤。


 青。


 黄色。


 ……。


 いや。


 赤だけで何種類あるの?


 一本取る。


 名前。


 ……。


 読めない。


 外国語。


 ……。


 でも。


 綺麗。


 なおが横から覗いた。


「それ、いい色だね」


「そう?」


「うん」


「似た色、いっぱいあるね」


「そうだね」


「使い分けるの?」


「うん。使い分けることもある」


 ……。


 こともある。


 ……。


 私は笑った。


「何?」


「いや、何でもない」


 なおが不思議そうに見た。


 ……。


 ごめん。


 変な意味じゃないんだけど。


 私は色鉛筆を戻した。


 ……。


 ちょっと欲しい。


 でも。


 使わないし。


 ……。


 やめとこ。


     *


 十二時四十三分。


 ……。


 画材屋。


 出た。


 なお。


 紙。


 買った。


 絵の具も。


 ……。


 私は何も買ってない。


 まあ。


 楽譜があるし。


「次、楽譜?」


 なおが聞いた。


「うん」


「場所、分かる?」


「分かるよ」


 私はスマホを出した。


 地図。


 歩いて八分。


 ……。


 近い。


「なお、お腹すかない?」


「……少し」


「先に食べる?」


「うん」


 ……。


 よし。


 お店。


 探す。


 近くのカフェ。


 ……。


 あ。


 ここ。


 評価いい。


「この店どう?」


 なおへ見せる。


 なおが画面を見た。


「……いいと思う」


「じゃあ行こ」


 ……。


 角を曲がる。


 店。


 見えた。


 ……。


 あ。


 並んでる。


 人。


 結構。


 ……。


 やっぱり。


 GW。


 混むよね。


「……どうする?」


 なおが聞いた。


「んー」


 ……。


 別の店?


 でも。


 ここ良さそうだったし。


 ……。


 いや。


 絶対ここじゃなくてもいいか。


 私は周りを見る。


 ……。


 あ。


 向かい。


 サンドイッチ。


 小さいお店。


「なお、あっちでもいい?」


「うん」


「じゃあ行こ」


 ……。


 決まった。


 簡単。


 ……。


 こういうの。


 楽でいいな。


 どっちがいいか聞いて。


 返事があって。


 決めて。


 ……。


 それだけ。


 私は横断歩道を渡った。


     *


 サンドイッチ。


 おいしかった。


 なおは卵。


 私はチキン。


 ……。


 お腹いっぱい。


 ちょうどいい。


 店を出る。


 ……。


 あ。


 音。


 聞こえる。


 ピアノ。


 ……。


 どこ?


 私は足を止めた。


「……晴瑠奈ちゃん?」


 なおが振り返る。


「ちょっと待って」


 ……。


 ピアノ。


 聞こえる。


 近い。


 ……。


 あ。


 あそこ。


 広場。


 人が集まってる。


 ストリートピアノ。


 ……。


 私は歩き出した。


 なおもついてくる。


 音が大きくなる。


 ……。


 あ。


 この曲。


 知ってる。


 弾いてるのは、若い男の人。


 大学生くらい?


 ……。


 分かんない。


 でも。


 上手い。


 私は少し離れたところで足を止めた。


 ……。


 いい。


 右手。


 少し速い。


 でも。


 勢いがある。


 ……。


 あ。


 今の。


 好き。


 左手の音が、少し強くなった。


 ……。


 そこ。


 もう少し柔らかくてもいいかも。


 ……。


 いや。


 この人は、この弾き方が好きなのかな。


 曲が進む。


 高い音。


 低い音。


 重なる。


 ……。


 あ。


 ここ。


 好きなところ。


 少し静かになる。


 ……。


 いいな。


 私はピアノを見た。


 指。


 動く。


 ……。


 あ。


 そこ。


 難しいんだよね。


 ……。


 弾けてる。


 すご。


 でも。


 ちょっと急いだ?


 ……。


 いや。


 気のせいかも。


 なお。


 隣。


 じっと見てる。


 ……。


 何見てるんだろ。


 指?


 手?


 ……。


 まあ。


 なおだし。


 曲が終わりに近づく。


 音。


 少なくなる。


 ……。


 最後。


 和音。


 響く。


 ……。


 消える。


 ……。


 拍手。


 周り。


 ぱちぱち。


 私も拍手した。


 なおも。


 ……。


 よかった。


 普通に。


 楽しかった。


「上手だったね」


 私は言った。


「うん」


 なおが頷いた。


 ……。


 でも。


 何か考えてる。


「なお?」


「……うん」


「どうした?」


 なおがピアノを見た。


「……あの音」


「うん?」


「絵にできるかな」


 ……。


 え。


 私はなおを見た。


「……音楽を?」


「うん」


 ……。


 何それ。


 ちょっと面白い。


「どうやって?」


「……それを考えてる」


 ……。


 ああ。


 そういうことか。


 私はもう一度ピアノを見る。


 演奏していた人が椅子から立つ。


 次の人。


 座る。


 ……。


 音楽を絵にする。


 ……。


 想像つかない。


 いや。


 音符なら描けるけど。


 そういうことじゃないよね。


「……難しくない?」


 聞いた。


「うん」


 なおが頷く。


 ……。


 即答。


 私は少し笑った。


「なおでも難しいんだ」


「難しいこと、いっぱいあるよ」


 ……。


 なお。


 普通に言う。


 ……。


 そうなんだ。


 まあ。


 そりゃそうか。


 私は広場を見る。


 次の演奏が始まる。


 知らない曲。


 ……。


 でも。


 いい感じ。


「なおってさ」


「うん」


「ほんと、何でも考えるよね」


 言った。


 なおがこっちを見た。


「……うん」


 ……。


 少し。


 間。


「……嫌?」


「え?」


「考えるの」


 ……。


 私はなおを見た。


 ……。


 あ。


 前にも。


 似たようなこと。


 聞かれたな。


 私がピアノを弾いてた時。


 なお。


『考えたくないの?』


 ……。


 あの時。


 ちょっと驚いた。


 何でそんなこと聞くんだろって。


 ……。


 でも。


 今。


 なおを見てると。


 ……。


 そういう子なんだな。


 って。


 少し分かる。


「嫌じゃないよ」


 私は言った。


「うん」


「でも、考えなくても楽しいことってあるじゃん」


 なおが少し考えた。


「……あるね」


「でしょ」


「うん」


 ……。


 また少し考える。


「でも、考えても楽しいよ」


 ……。


 私は笑った。


「なおらしいね」


 なおが首を傾げた。


「……そう?」


「うん」


 ……。


 ピアノ。


 音。


 続いてる。


 ……。


 あ。


 何か。


 ちょっとだけ。


 分かった気がする。


 なおは、考えることが好きなんだ。


 それって。


 別に変じゃない。


 ……。


 私がピアノ好きなのと。


 同じかも。


 ……。


 いや。


 違うかもしれないけど。


 でも。


 まあ。


 いいよね。


「楽譜、見に行こっか」


 私は言った。


「うん」


 なおが頷いた。


 ……。


 私たちは広場を離れた。


 背中。


 まだ。


 ピアノの音が聞こえてる。


 ……。


 いい曲だったな。


     *


 音。


 ……。


 まだ。


 残ってる。


 私は歩きながら、指先を少し動かした。


 ……。


 さっきのピアノ。


 鍵盤。


 白。


 黒。


 指。


 手首。


 肘。


 肩。


 ……。


 力。


 伝わる。


 前腕の屈筋。


 指を曲げる腱。


 手首を支える筋肉。


 ……。


 鍵盤。


 下がる。


 ハンマー。


 弦。


 振動。


 ……。


 空気。


 耳。


 鼓膜。


 耳小骨。


 蝸牛。


 ……。


 信号。


 脳。


 ……。


 音。


 聞こえる。


 ……。


 そこまでは。


 ある程度。


 分かる。


 ……。


 でも。


 音楽。


 ……。


 それは。


 違う。


 ただの振動じゃない。


 ……。


 同じ音。


 同じ高さ。


 同じ長さ。


 ……。


 それでも。


 違う。


 人が弾くと。


 違う。


 ……。


 何が?


 強さ。


 速さ。


 間。


 ……。


 それだけ?


 ……。


 違う気がする。


 私はバッグの紐を握り直した。


 ……。


 音を絵にしようとした人。


 たくさんいる。


 ……。


 カンディンスキー。


 クレー。


 ……。


 色。


 形。


 リズム。


 ……。


 音楽と絵画。


 結びつけようとした作品。


 ……。


 図形楽譜。


 線。


 点。


 記号。


 ……。


 見たことある。


 知ってる。


 ……。


 でも。


 あれは。


 何を残してる?


 ……。


 演奏するための情報。


 それとも。


 音を聴いた人の感覚?


 ……。


 同じではない。


 ……。


 たぶん。


 私は、さっきの最後の音を思い出した。


 和音。


 強く鳴って。


 それから。


 少しずつ。


 薄くなる。


 ……。


 鍵盤から指が離れる。


 でも。


 まだ。


 聞こえる。


 ……。


 響き。


 消える。


 ……。


 でも。


 頭の中には。


 残る。


 ……。


 その時間。


 どう描く?


 ……。


 線。


 長くする?


 色。


 薄くする?


 余白。


 広くする?


 ……。


 違う。


 ……。


 いや。


 違わないかもしれない。


 でも。


 それだけじゃ足りない。


 ……。


 私は少し歩く速度を落とした。


 ……。


 例えば。


 さっきの音。


 最後。


 消えた。


 ……。


 耳には、もう聞こえない。


 でも。


 曲は終わってる。


 ……。


 終わってるのに。


 残ってる。


 ……。


 何が?


 記憶?


 感情?


 ……。


 私は、その時。


 何を感じた?


 ……。


 綺麗。


 ……。


 それだけ?


 ……。


 違う。


 ……。


 もっと。


 何か。


 ……。


 あ。


 そうか。


 ……。


 私が描きたいのは。


 音そのもの?


 ……。


 それとも。


 音を聴いた。


 私の中で起きたこと?


 ……。


 分からない。


 ……。


 私は少し笑った。


 ……。


 面白い。


 ……。


 知らないこと。


 まだ、いっぱいある。


 音楽も。


 絵も。


 その間にあるものも。


 ……。


 もっと。


 勉強したい。


 ……。


 あ。


「なお?」


 晴瑠奈ちゃん。


 振り返る。


 ……。


 私。


 立ち止まってた。


「……あ」


「大丈夫?」


「うん」


「疲れた?」


「……違う」


 私は答えた。


「ちょっと考えてた」


 晴瑠奈ちゃんが笑った。


「やっぱり」


 ……。


 やっぱり。


 ……。


 そうか。


 分かるんだ。


 私は少し笑った。


「……ごめんね」


「何が?」


「歩くの、遅くなった」


「別にいいよ」


 ……。


 晴瑠奈ちゃん。


 また歩き出す。


 私も。


 並ぶ。


 ……。


 さっき。


 晴瑠奈ちゃんが言った。


『考えなくても楽しいことってあるじゃん』


 ……。


 うん。


 ある。


 知ってる。


 ……。


 でも。


 考えたら。


 もっと楽しくなることもある。


 ……。


 私は。


 そう思う。


 ……。


 それを。


 晴瑠奈ちゃんは。


 どう感じるんだろう。


 ……。


 また聞きたい。


 ……。


 でも。


 前。


 聞いた時。


 少し。


 驚いてた。


 ……。


 考えたくないの?


 ……。


 あれ。


 聞き方。


 少し。


 変だったかな。


 ……。


 考えたくない。


 って。


 決めつけたみたいだった。


 ……。


 私は少し考えた。


 言葉。


 難しい。


 ……。


 でも。


 聞かないと。


 分からないこともある。


 ……。


 だから。


 今度は。


 違う聞き方。


 ……。


 できるかな。


     *


 楽譜のお店。


 ……。


 紙。


 たくさん。


 さっきと違う。


 五線。


 記号。


 文字。


 ……。


 音楽。


 並んでる。


 私は棚を見た。


 晴瑠奈ちゃん。


 少し前を歩いてる。


 ……。


 足。


 軽い。


 ……。


 楽しそう。


「なお、こっち!」


 呼ばれた。


「うん」


 近づく。


 ピアノの楽譜。


 いっぱい。


 晴瑠奈ちゃんが一冊取った。


 開く。


 ……。


 目。


 動く。


 左。


 右。


 上。


 下。


 ……。


 音符。


 追ってる。


 ……。


「これ、どう?」


 晴瑠奈ちゃんが聞いた。


 私は楽譜を見た。


 ……。


 分からない。


 難しそう。


「……弾けるの?」


 聞いた。


 晴瑠奈ちゃんが笑った。


「練習すれば、多分」


「……すごい」


「いや、まだ弾いてないし」


「うん」


 ……。


 でも。


 すごい。


 この紙。


 音。


 まだ鳴ってない。


 ……。


 晴瑠奈ちゃんは。


 ここから。


 音を出せる。


 ……。


 それって。


 すごい。


「なおも見てみる?」


 晴瑠奈ちゃんが楽譜を差し出す。


 私は受け取った。


 ……。


 黒い点。


 線。


 記号。


 ……。


 規則。


 ある。


 音の高さ。


 長さ。


 ……。


 分かるところもある。


 でも。


 分からないところ。


 多い。


 ……。


 この記号。


 何だろ。


「晴瑠奈ちゃん」


「ん?」


「これ、何?」


 指差す。


 晴瑠奈ちゃんが覗き込んだ。


「ああ、ペダルの指示」


「ペダル」


「うん。ここから踏むってこと」


「……そっか」


「でも、書いてなくても使うことあるよ」


「……え?」


「曲によるけど」


 ……。


 私は楽譜を見た。


 ……。


 書いてない。


 でも。


 使う。


 ……。


 じゃあ。


 全部は書かれてない。


 ……。


 演奏する人が。


 決めること。


 ある。


「同じ楽譜でも、違う音になる?」


 聞いた。


 晴瑠奈ちゃんが頷いた。


「なるよ」


「……どうして?」


「弾く人によって違うから」


 ……。


 晴瑠奈ちゃん。


 少し考えた。


「同じ音符でも、強さとか、速さとか。ちょっとした間の取り方とか」


「うん」


「あと、音のつなげ方も違うし」


「……そっか」


 ……。


 私は楽譜を見た。


 同じ。


 紙。


 同じ。


 記号。


 でも。


 違う。


 音。


 ……。


 じゃあ。


 楽譜は。


 音楽そのものじゃない?


 ……。


 音楽を。


 作るための。


 何か。


 ……。


 設計図?


 ……。


 いや。


 違うかも。


 ……。


 知らない。


 ……。


 もっと。


 勉強しないと。


「なお?」


 晴瑠奈ちゃん。


「……うん」


「また考えてる?」


「うん」


 ……。


 晴瑠奈ちゃんが笑った。


「ほんと好きだね」


「……うん」


 私も少し笑った。


 ……。


 好き。


 考えること。


 分からないこと。


 ……。


 知りたい。


 ……。


 それって。


 楽しい。


     *


 午後三時二十九分。


 ……。


 買い物。


 終わり。


 晴瑠奈ちゃん。


 楽譜を一冊買った。


 私も画材。


 ……。


 結構歩いた。


 足。


 ちょっと疲れた。


 でも。


 楽しかった。


「なお」


「何?」


「今日はありがと」


 晴瑠奈ちゃんが言った。


 ……。


「……こちらこそ」


「うん」


 ……。


 駅。


 ホーム。


 電車を待つ。


 ……。


 人。


 朝より少ない。


 私はベンチへ座った。


 晴瑠奈ちゃんも隣。


 ……。


 楽譜。


 バッグの中。


 紙。


 ……。


 音。


 まだ。


 頭にある。


「晴瑠奈ちゃん」


「ん?」


「今日のピアノ、好きだった?」


「うん」


「……そっか」


 ……。


 私は少し考えた。


「何が好きだった?」


 ……。


 晴瑠奈ちゃん。


 少し考える。


「……曲かな」


「曲」


「うん。あと、弾き方も」


「……どういうところ?」


 ……。


 晴瑠奈ちゃんが空を見た。


 ホームの屋根。


 ……。


「あの、静かになるところ」


「……静か?」


「うん。ずっと音が鳴ってるんだけど、急に少し柔らかくなるところがあったでしょ」


 ……。


 あ。


 あった。


 ……。


 私は頷いた。


「……うん」


「そこ、好きだった」


「……そっか」


 ……。


 私は考えた。


 静かになる。


 ……。


 音量。


 小さくなる。


 ……。


 でも。


 晴瑠奈ちゃんは。


 柔らかくなる。


 って言った。


 ……。


 音。


 柔らかい。


 ……。


 どういうこと?


 ……。


 触れない。


 形もない。


 ……。


 でも。


 柔らかい。


 ……。


 あ。


 そうか。


 ……。


 音を聴く時。


 人は。


 別の感覚の言葉を使う。


 ……。


 柔らかい。


 明るい。


 重い。


 ……。


 音。


 だけじゃない。


 ……。


 私は少し笑った。


「また考えてる?」


 晴瑠奈ちゃんが聞いた。


「うん」


「何考えてるの?」


 ……。


 あ。


 今度は。


 晴瑠奈ちゃんが聞いてくれた。


「……音を、絵にできるかなって」


 私は答えた。


「まだ?」


「うん」


 ……。


 晴瑠奈ちゃんが笑った。


「難しそうだね」


「難しい」


「でも、できたら面白そう」


 ……。


 私は晴瑠奈ちゃんを見る。


 ……。


「……うん」


 頷いた。


 ……。


 電車。


 来た。


 大きな音。


 風。


 ……。


 晴瑠奈ちゃんが立ち上がる。


「行こ」


「うん」


 ……。


 私も立つ。


 並んで。


 電車へ乗った。


     *


 午後四時五十一分。


 ……。


 家。


 帰ってきた。


 玄関。


 靴。


 ……。


 長谷川くん。


 いる。


 多分。


「ただいま」


 晴瑠奈ちゃん。


「ただいま」


 私も。


 ……。


 リビング。


 扉。


 開ける。


 長谷川くん。


 ソファ。


 スマホを見てる。


「おかえり」


「……ただいま」


 晴瑠奈ちゃん。


「ただいま」


 私。


「おう」


 ……。


 長谷川くんがスマホを置いた。


「買えた?」


 私を見る。


「うん」


「よかったな」


「うん」


 ……。


 キッチン。


 何かいい匂い。


 ……。


 あ。


 カレー。


「……何か作ってるの?」


 晴瑠奈ちゃんが聞いた。


「カレーの準備」


 長谷川くん。


「……へえ」


「一橋が帰ってから作るって言ってたけど、遅くなるらしいから下ごしらえだけな」


 ……。


 そうだった。


 彩愛ちゃん。


 今日は部活。


 ……。


 ジュンちゃんは撮影。


 長谷川くんは家。


 ……。


 みんな。


 それぞれ。


 何かしてる。


「赤間、楽しかった?」


 長谷川くんが聞いた。


「うん」


「何買った?」


「紙と絵の具」


「お、いいじゃん」


 ……。


 私は頷いた。


 晴瑠奈ちゃん。


 バッグを持ち直す。


 ……。


「私は部屋戻るね」


「うん」


 長谷川くん。


 頷く。


 ……。


 晴瑠奈ちゃんが私を見る。


「なお、あとで楽譜見る?」


「……うん」


「じゃあ、部屋来る?」


「いいの?」


「うん」


 ……。


 私は少し笑った。


「ありがとう」


 ……。


 二人で階段を上る。


 ……。


 後ろ。


 長谷川くん。


 またスマホ。


 見てる。


 ……。


 サッカーかな。


 ……。


 分からない。


 でも。


 長谷川くんも。


 楽しそうだった。


     *


 晴瑠奈ちゃんの部屋。


 ……。


 電子ピアノ。


 窓。


 机。


 ベッド。


 ……。


 前にも入った。


 でも。


 今日。


 少し違う。


 ……。


 音。


 絵。


 ……。


 私は椅子へ座った。


 晴瑠奈ちゃんが楽譜を開く。


 ピアノの上。


「ちょっと弾いてみるね」


「うん」


 ……。


 晴瑠奈ちゃん。


 椅子へ座る。


 鍵盤。


 指。


 置く。


 ……。


 音。


 鳴った。


 ……。


 あ。


 綺麗。


 ……。


 広場。


 さっきの。


 違う。


 曲。


 違う。


 弾き方。


 ……。


 でも。


 同じ。


 ピアノ。


 ……。


 私は見た。


 右手。


 親指。


 人差し指。


 中指。


 ……。


 鍵盤。


 沈む。


 指節骨。


 中手骨。


 手根骨。


 ……。


 手首。


 少し下がる。


 前腕。


 筋肉。


 ……。


 腱。


 滑る。


 関節。


 曲がる。


 伸びる。


 ……。


 皮膚。


 引っ張られる。


 指の腹。


 白くなる。


 ……。


 血液。


 圧迫。


 毛細血管。


 ……。


 戻る。


 色。


 ……。


 でも。


 その全部が。


 音になる。


 ……。


 力。


 指先。


 鍵盤。


 下がる。


 ……。


 ハンマー。


 弦。


 振動。


 ……。


 音。


 広がる。


 ……。


 私は耳を澄ませた。


 ……。


 高い音。


 低い音。


 重なる。


 離れる。


 ……。


 あ。


 今。


 少し。


 間。


 ……。


 何も鳴ってない。


 ……。


 でも。


 何もないわけじゃない。


 ……。


 次の音。


 待ってる。


 ……。


 私の耳。


 脳。


 ……。


 待ってる。


 ……。


 だから。


 空白。


 音楽。


 ……。


 じゃあ。


 絵。


 ……。


 余白。


 ……。


 何も描かない場所。


 ……。


 そこにも。


 何か。


 置ける?


 ……。


 私はバッグを開けた。


 小さいノート。


 ペン。


 ……。


 描く。


 ……。


 線。


 一本。


 ……。


 違う。


 ……。


 もう一本。


 ……。


 重ねる。


 ……。


 違う。


 ……。


 線が。


 音に追いつかない。


 ……。


 いや。


 追いつく必要はない?


 ……。


 さっきの音。


 もう消えた。


 でも。


 まだ。


 頭にある。


 ……。


 私はペンを止めた。


 ……。


 例えば。


 音の強さ。


 線の太さ。


 ……。


 音の高さ。


 位置。


 ……。


 音の長さ。


 線の長さ。


 ……。


 そうしたら。


 確かに。


 音を表せる。


 ……。


 でも。


 それは。


 楽譜と何が違う?


 ……。


 私が描きたいのは。


 音の情報?


 ……。


 それとも。


 音を聴いた時。


 私の中で起きたこと?


 ……。


 分からない。


 ……。


 でも。


 面白い。


 ……。


 もっと。


 知りたい。


 音楽。


 絵。


 時間。


 ……。


 まだ知らないこと。


 いっぱいある。


 ……。


 勉強。


 しないと。


 ……。


 うん。


 したい。


 私は顔を上げた。


 晴瑠奈ちゃん。


 ピアノ。


 弾いてる。


 ……。


 楽しそう。


 ……。


 あ。


 そうか。


 ……。


 私も。


 楽しい。


 ……。


 私は少し笑った。


 ……。


 今日。


 一緒に出かけて。


 よかった。


 ……。


 ピアノ。


 音。


 部屋に広がる。


 ……。


 私はノートを開いた。


 今度は、音符に合わせて線を引くのをやめた。


 ……。


 さっき。


 音が鳴らなかったところ。


 ……。


 そこ。


 残す。


 何も描かない。


 ……。


 その周りへ。


 線。


 少しだけ。


 ……。


 あ。


 ……。


 さっきより。


 いい。


 ……。


 何が?


 ……。


 まだ。


 分からない。


 でも。


 何か。


 違う。


 ……。


 私はもう一度、音を聴いた。


 晴瑠奈ちゃんの指が、鍵盤から離れる。


 ……。


 音。


 まだ響いている。


 ……。


 消える。


 ……。


 部屋。


 静かになる。


 ……。


 私はノートを見た。


 白い場所。


 線。


 ……。


 まだ。


 何でもない。


 ……。


 でも。


 描きたい。


 ……。


 この音を。


 ……。


 もっと。


 ちゃんと。


 ……。


 私はペンを握り直した。


 ……。


 知らないこと。


 いっぱいある。


 ……。


 だから。


 面白い。


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