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現実の裏には魔法がある  作者: ロタ


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39話『五校杯①』


選抜トーナメントが終わり、優勝者・浦和隆之介(うらわりゅうのすけ)にトロフィーや賞品が授与された。


その後しばらくは舞台の調整と休憩時間となり、その間に各学園の代表生は五校杯に備えてアップを行う。


五校杯開始の30分前、代表戦の対戦順が発表される。

大将同士のジャンケンの結果──


1番:北辰学園(ほくしんがくえん) 2番:暁陽学園(あかつきがくえん) 3番:星慧学園(せいけいがくえん) 4番:月嶺学園(つきみねがくえん) 5番:蒼天学園(そうてんがくえん)


第一戦は北辰学園 vs 暁陽学園から始まり、勝ち抜いた方と第二戦で星慧学園が当たる。


このタイミングで、大将と副大将以外の三人の出場順も明らかになった。

星慧学園は──


•一番手:南條 茜

•二番手:千堂 歩

•三番手:鷹野 真

•副大将:冬川 凛

•大将:雁田 元



「まさか、最初が私かぁ」


南條が少なからず緊張を顔に出していると、凛が明るく声をかける。


「茜、あんまり緊張しすぎず、全開でぶっ飛ばしてきな!」


それに続けて元が笑う。

「あぁ、最悪負けても大将の俺がしっかりとケツは拭いてやるよ」


真も拳を軽く合わせてくる。

「そうだな。南條が負けても俺と歩で取り返してやるし、気軽に行ってこいよ」


3人の言葉が、南條の緊張をすっと取り払う。


「誰に言ってるの? 負ける気なんてないんだけど」


南條が肩を回すと、凛がニヤッとする。

「真君こそ、三番手だからって気を抜いて負けないようにね」


「気なんて抜くかよ。このためにここ数ヶ月、ずっと修行してきたんだから」


対戦表を見ながらそんな話をしばらくした後、アップも終えた俺たちは控え室へ向かった。



やがて、場内にアナウンスが響く。


『──これより、各学園の代表生による〝五校杯〟を開始いたします。

最初は各学園の一年生の生徒たちから競い合ってもらいます。

五校杯・第一試合──北辰学園・勢津 彰( せつ  あきら) 対 暁陽学園・天宮 芽依(あまみやめい)。両名、舞台の上にお上がりください』


両名とも大将ではないが、今年度の一年生の中でもトップクラスの実力を持つことは間違いない。


真たちは控え室で、この二人の試合に注目する。


──そして、第一試合開始のブザーが大きく鳴り響く。


「なぁ元、今年の一年生で一番強いのって誰なんだ?」


「ん? そうだなぁ……前に言った一条以外なら、同じ月嶺学園の獅子堂 翔(ししどうかける)か、北辰学園の天童 勝太郎(てんどうしょうたろう)のどちらかだな」


歩が指を立てる。

「でも雁田君、一番なら暁陽学園の北野 直史(きたのただし)もあるんじゃないか?」


「……あぁ、確かにその可能性もあるな。あまり目立った実績は聞かないが、対人戦なら確かに北野かもな」


凛も頷く。

「いやいや、私は蒼天学園の稲葉 和勇(いなばかずと)もあると思うけどなぁ。去年、中等部の大会で見たけど、曲芸とも取れる“その場その場で最善を取る戦闘スタイル”は、対人戦なら尚更強みになると思うけどね」


「おぉ……全然わからないけど、そんなに候補がいるのな」


元が肩をすくめる。

「まぁ、実際戦ってみてしか分からない相性もあるからな」


歩が付け加える。

「そうだね。雁田君の言うとおり、戦闘スタイルによっての有利不利は当然あるからね」


南條が自身の拳を見下ろしながら言う。

「そうね。実際、闘気をメインで戦う私は、魔法で常に距離を離されると攻める手段が一気に減るもの」


真が思い出すように呟く。

「確かに、南條が個人戦で負けてたのも、魔法で貼り付けにされていたからだったか」


真は今の発言を聞いて、自身の手札を思い出しながら考える。

(今の俺に足りないのは……)


「真君? 試合のことでも考えてるの?」と歩。


「あぁ。今の自分が“やられたら嫌なこと”は何かなって」


「そういうのは大事だよね」


凛が俺と歩の会話に割って入る。

「でも、真君なら逆にそこまで考えなくてもいいんじゃない?」


「えっ?」


「だって“アレ”なら、下手なことを考えるより突っ込んで攻めまくった方が強いんじゃない?」


「そう上手くいくんだったらいいんだけど、戦闘中に発動させるのがまだ安定しないんだよ」


「でも、できたら負ける気はしてないんでしょ? せっかく先に茜が戦うんだし、しっかり戦い方でも見ときなさいよ」


「あぁ、そうするよ」



『──五校杯・第一試合終了。勝者:勢津 彰!』


続くアナウンス。

『次の試合は5分後。勢津 彰、連戦を希望。第二試合は星慧学園・南條 茜 vs 北辰学園・勢津 彰です』


「じゃあ、行ってくるね」


南條は立ち上がり、扉へ向かう。


「茜、頑張ってね!!」

「負けるなよ。そして闘気での戦いの見本をしっかり見せてくれ」

「南條さん、頑張ってください」

「無茶して大怪我しないようにな。負けても俺がしっかり捲ってやるからよ」


四人の言葉に南條は力強く頷き、舞台へ向かった。



『──それではこれより第二試合を開始します。両者、位置についてください』


南條は全身から闘気を溢れさせる。


「……なんつぅ闘気だよ」


勢津 彰は、あまりの闘気に驚きを隠せない。


──そして、第二試合開始のブザーが大きく鳴り響く。


ブザーと同時、南條の全身が紫電のような光に包まれ、瞬きした瞬間には──勢津 彰を蹴り飛ばしていた。


「ガッ……ってぇ」


勢津も腕を入れようとするが間に合わない。胸部を強く蹴り抜かれる。

そのまま、間髪を入れずに繰り出される連撃に、勢津は対応できない。


「さっきの試合で、アンタが闘気と魔法での近中特化なのは分かってる……なら強みは出させない」


吼雷・神功(こうらい  しんこう)──招雷掌(しょうらいしょう)


「……ガ、ハッ……」


勢津 彰は崩れ落ちる。


『──っと……決まった! 勢津 彰、気絶。勝者:南條 茜です!』


勝利のアナウンス終了と同時に、南條が膝をつく。

体にまとっていた紫電が解き放たれ、霧散していく。


「ふぅ……《招雷掌》決まって良かった……」



『──次の試合は5分後です。南條 茜、連戦を希望。第三試合は星慧学園・南條 茜 vs 月嶺学園・平埜 慶介(ひらのけいすけ)


控え室。


「マジかよ、南條の奴、なんっつう速度だよ」


歩が冷静に補足する。

「個人戦でも使っていた、南條さんにとって必勝の型」


元が眉をひそめる。

「でもアイツ大丈夫か? 連戦希望の場合は5分後だぞ。今ので闘気が空っぽだろ」


凛が首を振る。

「雁田君の言うとおり、茜の闘気はほとんど空っぽに近い……でも、無策で連戦をするほどバカでもない」


元が腕を組む。

「確かに。せっかく勝ったのに連戦して負けたら、他校とのポイント有利がなくなるしな」


真はモニターの南條を見つめる。

「……でも、あの状態での策って?」



『──これより、五校杯・第三試合を始めます。両者、位置についてください』


南條は、さっきと打って変わって闘気が完全に消えている。

対して相手は、月嶺学園らしく真剣を抜き、正眼に構えを取る。


──そして、第三試合開始のブザーが大きく鳴り響く。


南條は攻めない。微動だにしない。

それを見て、相手の平埜は抜き身片手に斬りかかる。


刀の間合いに踏み込むと同時に、近づきながら展開していた風魔法を行使し、瞬間的に速度を上げる。

その加速から、南條の頭上から素早く袈裟斬りを落とす。


だが、その斬撃は南條を捉えられない。

袈裟斬りと同時に、南條は瞬間的に闘気をまとい、刀を受け流していた。


──本来、《吼雷・神功》は闘気のすべてを放出しきる技。

そのため、今残っているのは休憩5分で練り直した闘気にすぎない。

そして先ほど、土壇場で《吼雷・神功》のデメリットである“闘気の全放出をしない”調整に成功した。

練習でもなかなか成功率が低い調整を、ここでやってみせたのだ。


……とはいえ残り滓には変わりないため、闘気は限界まで節約せざるを得ない。

この賭けに出ることで、少なくとも一戦目の確実な勝利と、二戦目でも戦える可能性を見出したのだ。


平埜も、袈裟斬りを流された程度で止まらない。

そのまま即座に半歩引いて体勢を立て直し、横薙ぎを見舞う。


南條はそれに対して、闘気をまとわずに籠手のみで刀身を打ち落とす。

──が、今度は相手も“流し”や“受け”を警戒し、踏み込みの浅い二撃、三撃目を本命とした連続攻撃へ移行。

即座に次の刃が南條を襲う。


籠手で受けることで、確かに南條の腕がぶった斬られることはない。

だが……闘気をまとっていないというのは、身体を一切強化していないということ。

対して相手は魔力循環で身体能力を底上げしている。

要は、熊の一撃を素の力で受けているようなものだ。

南條がいくら近接戦の技量が高くても……例え、刀という“打撃に特化していない武器”でも……。


一呼吸のうちに八度の斬撃を、南條は受け流す。

だが、その八度目の斬撃で南條の両腕が悲鳴を上げた。

痛みで南條の意識が一瞬、逸れる──。


それを平埜は見逃さない。瞬時に魔力出力を高め、刀に風をまとわせる。

南條に“確実に”当てにくる一撃。


刃が南條を完全に切り裂いた……ように見えた。


次の瞬間、刀に付与された風で地面が抉れ、砂埃が舞う。

その砂埃を突き抜け、平埜が吹き飛ばされる。


よろめきながら折れた刀を拾い、平埜が南條に声をかける。


「まだ、そんな気力あったのかよ……」


「まぁね。でも少し防がれた……ここで気絶してくれたら楽だったのに」


平埜の斬撃と同時に、南條は残りすべての闘気で《吼雷・神功》を行使する。

その持続時間は一秒にも満たない。だが、斬撃を躱して一撃を与えるには十分すぎる時間だった。


「ハッ、万全のお前と当たらなくて本当に良かったわ」


「もしかして、勝てると思ってる?」


「今ので終わりだろ? 見たところ、もう闘気も感じない」


「そうだね。もう闘気も魔力も残ってないよ」


「なら詰みだ。降参するつもりはなさそうだな……なら、このまま終わらせてやる」


折れた刀に魔力を流し、風を最大出力でまとわせる。

平埜は南條に向かって斬撃を放とうとしながら一言。


「終わりだ」


返ってきたのは、静かな声。


「うん、終わりだよ」


南條が、風の斬撃と同時に指を鳴らす──。


瞬間、平埜の風の斬撃は消え、あろうことか平埜自身が雷に痺れ、焦げていた。


「……は??」


膝をつきながら、平埜は驚愕の声を漏らす。


「私のさっきの一撃は、別に“攻撃自体”が本命じゃない」


吼雷・神功(こうらい  しんこう)──来雷返復(らいらいへんぷく)


「相手の魔力使用タイミングに合わせることで、その魔力すべてを“雷”に変換して襲わせる」


「んな、反則やろ……」


『──平埜 慶介、戦闘不能。勝者:南條 茜です!』


『五校杯は一人当たり二試合までのため、次の対戦は――』


(場内はどよめきと歓声に包まれたまま、次のアナウンスを待つ)


《吼雷・神功──来雷返復》は、相手の魔力を利用するカウンター魔法である。

《吼雷・神功》の基本技は純粋な“攻撃技”だが、これは魔法と闘気を織り交ぜた数少ない絡め手だ。


来雷返復は**《吼雷・神功》の発動中であること**が条件。

その間に陣の展開をする技術がない南條は、事前に肉体に陣を刻んでおき、魔力を流すだけで瞬時に発動できるようにしている。


※特殊な“魔力液”の一種で陣を描いており、普段は透明で見えないが、使用する瞬間に光り輝く。

また、陣を消すためにも専用の液が必要で、描くのも消すのもそれなりにお金がかかる。



〈闘気に関して〉

•闘気は魔力から練り上げ、補填することが可能。

•闘気は魔力よりも質の高いエネルギーだが、変換性が低く魔法には扱いづらい。

•基本的には後天的に習得するものであり、その習得の過程で常時保有できる量も増える。

•よって、個人の魔力量と闘気量は別で存在する。


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