ほんとうのあとがき
始めから終わりまで、一人芝居のように書き続けてきた物語も、ようやく終わりを迎えました。あなたの元に届くでしょうか。あるいは、ネットの小説の海に紛れて、気づかれることなく消えていくのでしょうか。
この物語を書くまでに、随分と時間がかかりました。アイデンティティとは何か。人は、他者の期待や要求に応えることで、本当の自分を見失ってしまうのではないか。そんなことを考えながら、書き始めたつもりでした。
「アイデンティティの揺らぎと、その受容のプロセス」
「相手の中にある全てを、優しく抱きしめること」
そんな言葉で、あとがきを締めくくったつもりでした。
でも、その直後から、押さえきれない想いが溢れ出してきました。狂気じみた執着を、先輩という存在に仮託して書き連ねる私。そして最後には、きれいな言葉で締めくくろうとした物語は、自己弁護と消えない執着の告白になってしまいました。あの子の隠れた素顔を暴こうとする気持ちを、抑えることができませんでした。
これは贖罪の物語のつもりでした。私の歪んだ支配欲を認め、それを乗り越えた、という物語にするつもりでした。「穏やかな成長の物語」のはずでした。
それでも、書かずにはいられませんでした。これが私なりの精一杯の告白であり、謝罪であり、そして──
結局、これはラブレターになってしまいました。
あの頃の、何でもない午後。
隣り合って笑っていたあなたと私。
演技も期待も何もない、ただの時間。
でも、そんな日常にこそ、本当の私たちがいたのだと思います。
その後、私は唯一の存在になりたくて、あなたに期待を押しつけ続けました。あなたはその期待に完璧に応えてくれました。でも今なら分かります。あなたを支配しているつもりが、実は私の方が魅せられ、縛られていました。そんな皮肉な真実に、この物語を書きながら気づかされました。
物語の形を借りて、あの日々を少し距離を置いて描こうとしました。でも結局、この気持ちは、どんな形に置き換えても変わることはありませんでした。
「正しい」関係を選んだあなたに、心からの祝福を。
そして、消えることのない「歪んだ」私の愛を。
今も私は、あなたを見つめ続けています。
それが許される距離で、ずっと。




