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Boondock Saints Dohagga

後にリリスの判別手段となる手配書を作成可能とした一つの出来事をここで上げよう。

リリスという存在が神の掲示によって世に知らしめられてから、

およそ100年ほどすぎた頃。

ある国の処刑人ドハッガーは法律という裁きの名のもとに、

命令されるがままに多くの人間を処刑してきた。

それが彼の仕事であり生活基盤であったからだ。

彼は罪人の首を大斧で切り落とす斬首刑の役人だ。

ここ数年、似たような容姿の少女達が集められると、まとめて公開斬首刑にしてきた。

リリスを探すのには口頭で広がった容姿の特徴だけが頼りなのである。

この国では怪しきは全て罰せよとしている。

その為どこか一部でも似ているなら処刑する事に決められていた。

反発は即死罪。

徹底した決まり事であった。

その日も彼は少女達の怨念を断ち切るように斧を振り下ろしていた。

だが、一人の少女を見たとき、彼に緊張が走った。

確かに自分は一度この娘を殺している。

それは直感的なものだった。

確たる証拠も記憶も無い。

ただそう思えるだけであった。

彼は何百もの同じような顔の少女を処刑してきた。

どの娘も泣き叫び許しを願ってきた。

それがたまたま罪悪感とともにこの奇妙な感覚になっただけだ。

そう自分を誤魔化しいつものように少女の首を切り落とした。

その日にその感が取れることは無かったが、日を追うごとに徐々に薄れていった。

そして二年たったある日。

いつものように斬首台に、数人の少女達が連れてこられた。

何気なく少女達を見たときドハッガーは凍りついた。

と同時に脂汗がだらだらと体中から噴き上げて来た。

そこに三度目になるだろう少女の姿を確認したのだ。

二年かけて薄らいだあの奇妙な感覚が鎌首を擡げて自分の中で大きくなってゆく。

それは体中の器官に命令を出す・・・とても危険なのだと。

そしてその感覚が頂点に達したとき、ドハッガーは頭の中が真っ白になった。

次に気が付いたときには手にもった斬首用の斧で一人の少女をずたずたに切り裂いていた。

無意識に体を支配した、その奇妙な感覚とは恐怖という名の本能だった。

かくしてドハッガーより事情を聞いた国の宰相たちは、すぐさまその娘の顔を似顔絵にし、世界中に配ったのだった。

こうしてリリスの存在は確定し、世界中で誤認されて殺される少女は皆無となっていった。

蛇足であるが、ドハッガーはこの日を堺に処刑人を辞職している。

以来、毎日教会で祈りをささげていたという。

自分に与えられた運命を呪っているのか、それとも懺悔しているのかそれは誰にもわからなかったという。

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