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おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ~息吹戸瑠璃が遺したもの~  作者: 森羅秋
第三章 アンデッド霊園屯あふれそう
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第91話 ゾンビ退治は道連れで

 なんで先に用件を言わないんだ。と、心の中で息吹戸《いぶきど》は呟く。

 脱力を隠すように両腕を胸の前で組んで、半眼で祠堂《しどう》を見つめる。


「あー。祠堂《しどう》さん。私、今から霊園でゾンビ退治するので、要件をサクサク言ってもらえると有り難いんだけど?」


「霊園に発生しているアンデッド、倒してもすぐ数が戻るらしいな」


 祠堂《しどう》は霊園を見つめながらそう聞き返した。

 霊園の事件の探りに来ただけか。と息吹戸《いぶきど》は納得した。


「そうみたい。私はこの事件に関わるの今からだから。詳しいことは知らないけど」


 「そうなのか?」と意外そうに言われたので、「そうです」と頷いた。


「ところで、津賀留《つがる》はどうした。一緒じゃないのか?」


 頷くと、祠堂《しどう》は珍しい者を見たように目を丸くさせた。

 彼の反応から推測するに、『息吹戸《いぶきど》』は事件の際には必ず津賀留《つがる》を連れてきていたようだ。

 それが普通のコンビなのかもしれないが、息吹戸《いぶきど》は一緒に行動する事にまだ慣れない。


「津賀留《つがる》ちゃん、少し前まで東護《とうご》さんと現場で動いてたから」


「怪我でもしたのか?」


 と、祠堂《しどう》が話の途中で聞いてきた。ジャケットの襟を触っている。なだめ行動だ。恋愛感情はないにしても、津賀留《つがる》を大事に想っているのだろう。血の繋がらない兄妹みたいで微笑ましいな。と、息吹戸《いぶきど》の口元が緩んだ。


「いやいや。無傷で元気だよ。シャワー浴びてるだけ」


 「そうか」とホッとした祠堂《しどう》。


「やっとゾンビ退治の機会を得たんだから、一人で堪能したくて置いてきちゃった」


 息吹戸《いぶきど》は悪戯っぽい笑みを浮かべ、するっと、腰にかけてあった鉈を抜く。刀身がキラキラ輝いている。斬れ味が良いと、鉈がアピールしているようだ。


「前回のビルでは素手だからゾンビスルーしたけど、今回は武器あるし。ノーマルゾンビなら、楽しく無双討伐出来そう。ふふふ」


「……」


 刃物を眺めながらニヤニヤする姿をみて、祠堂《しどう》はドン引きするが、気を取り直し、軽く咳払いをした。


「あと一日で解決できない場合は、俺を含めてアメミット数人、霊園に関与する事になった」


「ああ、なるほど。祠堂《しどう》さんも関与する側になるからここに下見しに来たんだ。だとしたら、北部に行ったほうがいいよ。東護《とうご》さんいるからあっちの方が詳しく話を聞けると思う」


 祠堂《しどう》は凄く嫌そうな表情になった。

 東護《とうご》が……。と、小さく呟き、「遠慮する」と声を大にして拒否した。

 二人の関係は水と油。犬猿の仲だと如実に語っている。

 

 息吹戸《いぶきど》は内心ほくそ笑んだ。


(妄想が捗るわ)


 BLネタとして心のタンスに仕舞いこむと、息吹戸《いぶきど》は「さてと」と霊園へ歩きだした。

 これ以上の会話は必要ない。

 10分ほど時間をロスしたが、戦場の局面はそんなに動いてないだろう。


「あ、そうだ」


 もっと楽しくなる事を思いついた。

 霊園に向かう足どりのまま、くるりと祠堂《しどう》に振り返る。悪戯を思いついたような良からぬ光を目に宿しつつ、息吹戸《いぶきど》は提案をした。


「祠堂《しどう》さんもついでにゾンビ狩ってく?」


「はあ?」


 なんで俺が? と、言わんばかりの声を上げたので、


「次に会う時は勝負って言ってたでしょ? ゾンビ。どっちが多く倒せるか競争って、どう?」


 息吹戸《いぶきど》は挑発的に笑うと、祠堂《しどう》は凶悪に笑う。


「乗った! 準備するから待ってろ」


 即答した彼はすぐにバイク用のジャケットとズボンを脱ぐ。

 灰色と黒いスウェットシャツと黒いスキニーデニムを着ている。靴はバイク用のブーツだ。

 

(あっれー? 私服姿? もしかして休暇だったのかな)


 首を傾げながら眺める。


 祠堂《しどう》は腰にタクティカルベルトをつける。収納ポーチが六個にハンドガンホルダーがあるタイプだ。

 ショルダーホルスター(肩紐にかけて脇に装着)に小型拳銃を、サイホルスター(ベルトからつりさげ太ももに装着)に大型ナイフを装着する。護符を収納ポーチに入れると戦闘準備を終えたようだ。

 これでジャケットを羽織れば腰回りが見えない。

 

(初めて会った時にはもう少し色々つけていたのかも。いやぁそれにしても)


 息吹戸《いぶきど》はうっすら笑っているのを気づかれないように、口元に手を添える。


(ちょろいちょろい。人手確保出来たわ。予想外のこともあるかもしれないから、知識豊富な人がいる方がいい。それに対戦相手が居たほうが断然討伐作業が捗るからねぇ)


 それに、心なしか祠堂《しどう》は機嫌が良いようだ。口角が少し上がっているし、浮かれた雰囲気が伝わってくる。


(ヤル気満々みたいだし、祠堂さんもゾンビ退治好きなのかもね! 流石ゾンビ、皆に人気だなぁ)


 うんうん、と一人で納得して頷いたところで、祠堂《しどう》がこっち歩み寄ってきた。


「準備出来たぞ。お前は……いつも軽装だな」


 息吹戸《いぶきど》は自身を見直す。Yシャツとベストにスラックスとスニーカー。カミナシジャケット羽織って、腰にポーチと鉈だ。


「何を装備すればいいか分かんないからね。誰も教えてくれないし。津賀留《つがる》ちゃんも私の装備はよくわからないって言ってた。この体の機動性を生かすのであれば、あまり重い物は持たないほうがいいかなって思う。なので、私が現在持っているのは傷薬と包帯と炎護符ってとこかな」


 正直に答えたら祠堂《しどう》に変な顔をされた。

 彼の装備の量を考えれば、確かに少なすぎるから当然か。と思い直した。


「祠堂《しどう》さんも銃を使うの? っていうか、この世界は和魂《にぎみたま》や護符や呪術とかの神通力使えるのに、銃も活躍するんだね」


「なに言ってんだ。普通に戦闘で使うだろ。弾に術式刻めるから効果は応用が効く。それに和魂《にぎみたま》の術を封じ込まれることもある。その時はこれが突破口になるし。そもそも、物理しか効かない相手もいるだろうが」


 なんだかピンとこなくて、ふぅん。と息吹戸《いぶきど》が生返事をすると


「いつも和魂《にぎみたま》と体術でなんとかなる奴にはわかんねぇよ」と毒づかれた。


読んで頂き有難うございました。

更新は日曜日と水曜日の週二回です。

面白かったらまた読みに来てください。

物語が好みでしたら、何か反応して頂けると励みになります。

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