07 一度きりの人生は楽しむものなのだー
ようやく王都へと辿り着いた二人。
しかしイカス渓谷での件や、道中休憩を挟んだこともあり、既に日が傾きかけている。
「王都……名前なんだっけ?」
「ボミット。由来が分からないくらい古くからある地名で――」
――王都ボミット。
人口は100万人に迫ると思われる、ここステージ王国第一の都市だ。
街のほぼ中央に王城が建ち、その高さは雲を突くほど。もちろん王都のどこからでも王城を見ることができる。
一方で人の多さゆえに犯罪率が高く、特に東地区の外縁にあるスラム街は、あまりにも危険なために手がつけられなくなっているという難儀な一面を持つ。
今までの街よりも科学技術が進んでおり、電灯が存在することから電気という概念も備わっている。
「あ、これでスマホ充電できるかも! ふひひ……」
「すまほって、あの四角い奴だよね? なんなの?」
「んー………………電話ってこの世界にある?」
「王都ではお店に行けば使われているよ」
「おー! んじゃこれ持ち運びできる電話。他にも色々できるけど、多分説明できない」
「ははは。まあそこだけ分かれば充分かな」
「次私から質問。王様ってどんな人?」
「威厳があふれ出ているような方で……二人だけだから言っちゃうけど、顔からして物凄く怖い。それでも国民からの支持率は高いよ」
「ほぇー」
「けど謁見は明日ね。もう謁見時間過ぎてるから」
「アレとかあったから?」
「あったから」
頷いて納得するワタ。
一方キースは、本当にワタを国王に謁見させていいものか、ここに来て迷っている。
ワタの性格的に国王に失礼を働くのは目に見えているし、二度の襲撃と、そしてイカス渓谷での通信内容が引っかかっているのだ。
「ねえ。キースさんってどこ住み?」
「………………ん?」
「聞いてないのかよー。どこに住んでんのって聞いてんの」
「あーごめんごめん。俺は兵舎だよ。狭い部屋に四人、押し込まれるように生活してる」
「げぇー。私絶対無理。ひとりだけの静かな時間ないと嫌だもん」
「よぉーく分かるっ!」
物凄く実感のこもったキースの声に、ワタ大笑い。
「あはは! じゃー戻るのイヤだから上の空なんだ」
「まあ……そうかな。でも今日はワタちゃんのことがあるから外泊だよ」
「最後の自由を謳歌するんだね。かわいそうにかわいそうに」
「はっはっはっ……」
大笑いしながらも兵舎生活と、ついでにワタとの別れを実感し、ちょっとだけ寂しくなってしまうキース。
一方能天気女子中学生はそこまで考えていない。
宿屋に到着。
今までと比べてもかなり格が下がる、はっきり言って安宿だ。
唯一、入り口横の花壇は手入れが行き届いており、綺麗な花が咲いているので、マメな性格の主人だということは推測できる。
「悪いけど、今日はここね」
「いーよ。私だってキースさんのお財布が不憫だし」
「ははは……」
苦笑いのキース。事実、キースのお財布はかなり薄くなった。
今回は同室。
その理由だが、お金のこともあるが、なによりも犯罪に巻き込まれる危険を考慮してだ。
「王都なのにそんなに危険なの?」
「残念ながら。だから王都にいる間は俺から離れないようにね」
「ラジャー隊長!」
「なんだよそれ」
何故か敬礼するワタ。
ドアを開けて部屋を覗けば、想像以上に狭く、ベッドはなんと藁敷きだ。
年頃の女の子にこんな部屋しかあてがえないことに、少々心の痛むキース。
だが能天気女子中学生は一味違うのだ!
「おあー! なんか異世界っぽい! 人生で一回はこーいうところで寝てみたかったんだー! ひゃっほーぃ!」
(……あれ? 何故か大喜びしてらっしゃる……)
「藁のベッドで藁生えるーわらわらー」
ご満悦のワタ。
一方部屋の入り口でその光景を呆然と眺めるキース。
そんなキースに気付き、ニヤニヤとした表情のワタ。
「んー? なぁーに? その顔ー!」
「あーいやいや。ワタちゃんくらいの年齢だと嫌がりそうなのになって」
「何事もレッツトライ。一度きりの人生は楽しむものなのだー」
きょとんとしつつ、ワタの能天気さの理由に納得してしまうキースだった。
夕飯はレストランで取ることに。
ワタは言い付けを守りキースにくっ付き、キースも一応は周囲を気にかけている。
日も落ちて街灯に明かりがつく。
それを見て、ワタは嬉しいような悲しいような気分。
「明るいってだけで、なーんか異世界感が半減だなぁ」
「ワタちゃんの世界では当たり前なんだっけ?」
「当たり前。車もだし、明かりもだし、電気も」
「それでいて魔獣がいないんだから、俺からしたら羨ましい限りだよ」
「……つまんないよ?」
「つまらないということにも価値があるんだよ」
頬が膨れるワタ。
だがこれは雰囲気を察してのことであり、言葉の意味は理解していない。
しばらく歩くとレストランを発見。
店内はレストランというよりも酒場に近い雰囲気。
「キースさん飲むの?」
「付き合い程度はね。だけど酔う前に止める」
「それがいいよ。うんうん」
妙に実感のこもっているワタの頷き。
注文をしてしばし。
ワタはパスタのような麺類で、キースはリゾットのようなもの。
「んむんむ。味はいけるよねー」
「そう?」
「……ウチさぁ、ママなんも作らないからずーっとコンビニ弁当。それに比べたらおいしいのなんの」
「ははは……」
雰囲気で笑うキース。当然ながらコンビニ弁当がナニモノか分かっていないのだ。
するとワタは追加注文。
「すみませーん、コーヒーフロートくださーい」
(お金がないって話、さっきしたはずなんだけどなぁ……)
落ち込むキース。
食事を終え、立ち上がるために後方へと椅子を出したところで、随分とベロンベロンに酔っ払った剣士風の女性が、ワタの椅子に難癖をつけてきた。
なんとなく察したワタは、穏便に済ませようと猫をかぶる。
「おぇ~いおまえぇ~わらしあしひっかけよ~としてんらろ~」
「いえいえ、違いますよー」
「んあ~? おまえぇ~……え~? カレシかよぉ~んにゃろめぇ~」
「いやぁ、えっと……」「ワタちゃん、ここは。ね?」
「あー、あははー。ごめんなさい。私たち用事があるんで、それじゃ」
「うぉお~ぃまてっつってんら~? っだぐぅ~ど~せわらしのけんがおれだのぉわらってんらろ~? わぁってんらぞ~!」
「あーいや、ちょっ……」
肩に手が来たので、思わず振りほどいて避けるワタ。
「んあぁあ~! ぼ~りょくだぁ~! ぼ~りょくはんたぁ~い!」
悪化した。
さすがにこれ以上はよろしくないので、キースが割って入る。
「まあまあお姉さん。随分飲んでらっしゃるみたいですからね、ここは落ち着いて」
「んだぁ~? カノジョまもっていいとこみせるってかぁ~? お~」
「いや、ですから」「おぁ~おまえぇ~お~こくへぇ~ぃじゃねぇ~ぃかぁ~ぃ! お~やるってかぁ~? わらしぁこれれもつよいんらぉ~」
と、腰につけた剣を引き抜こうとした女性。
すかさずキースが安全確保のために女性を一本背負い。
鎧を着ているためにドスーン! といい音を立てて倒れた女性。
これで大人しくなるだろうとキースもひと息。
「……んぉらぉ~!」「後ろ!」「うおっ!?」
さすがは剣士。伸びることなく、しかしヨロヨロの状態で立ち上がった。
周囲はもう退避済みであり、「こりゃ飯どころじゃないな」という呆れ声もチラホラ。
酔っ払い女性は立ち上がると、剣を抜いた。
――だが、周囲は一斉に大笑い。
そりゃそうだ。剣が根本からポッキリで、つばと柄しか残っていない。
「んぁ~んにゃろぉ~わらってんらめぇ~! らぁ~……うぅ~……うわぁあぁあぁあん!」
怒り一転泣き出す女性。
すると胸の筋肉だけでシャツを破けそうなほどの、物凄くガタイのいい店主が登場。
「まぁーたあんたか!! これで三回目!! もう勘弁ならねー!!」
「らっでぇ~らっでぇ~……うあぁあぁあ~」
「うっせ!! ったく。誰か憲兵に電話!」
「あのー、一応俺王国兵ですけど」
「だけど今あんたは客だ」
「いや、そうじゃなくて」「だとしてもだ! 大体こいつ、そこいらじゅうの酒場で泥酔しては店壊して、王都の酒場を出禁コンプリートしてる奴だぞ?」
「あぁー……」
その話に聞き覚えのあるキースは、素直に引いた。
一方ワタは、この世界の電話がどういうものなのかに興味が移っていた。
正解はマイクとスピーカーが別になっている、壁掛けの木製電話。
その横にはメモが張られており、電話番号が幾つか書いてある。ワタもそれを確認し、スマホで写真を――と思ったが充電されていないので残念でした。
しばらくして憲兵が三名到着。
女性は既に店主とキースが縛り上げ、しかも気持ち良さそうに寝ており、そのまま担がれお持ち帰りされました。
「……よかったんですか?」
「知るか。はぁ……」
大きくため息をつき、店主は一発大きく手を叩いた。
「お客さん方、どうもお騒がせいました。今ある伝票は半額にしますから、どうかご勘弁を」
(半額!)と心の中で喜ぶキースは、帰りの道中、ワタにそれを指摘されるとは思っていなかった――。
「でも半額だよ?」
「んもー! そういうところがモテない原因!」
「ははは……言い返せません」
ふと、キースの好みが気になったワタ。ちょっと企む。
「そういえばさっきの人、結構美人だったよね」
「んー……そういえば。すらっとした長身で顔も美人だったね」
「声も綺麗だったし?」
「確かに。なんかオペラでお姫様役なんて似合いそうだった」
(おっ?)
「……だけどあの酒癖じゃなぁ。ははは」
(脈なし決定!)と確信するワタ。
結局キースの女性の好みは不明なまま。
部屋に戻り藁のベッドに腰掛けひと息。
するとワタに、ちょっとした疑問が浮かんだ。
「ねえキースさん。あの人ってどうなるの?」
「酔ってた女性剣士? ……死刑かな」
「あはは。またそういう冗談をー」
「真面目な話だよ」
「……えっマジなの!?」
本気で驚くワタ。
「この国は飲酒による迷惑行為にはかなり厳しいんだよ。一回通報で懲役数年、二回で十年以上、三回で死刑。でも酒場だって死刑人を出したくはないから、普通は通報する前に出入り禁止にする。だけどさすがにあそこまで悪名轟いていれば、これが一回目の通報だとしても死刑は確実だよ」
「げー。……だからキースさん、あんまりお酒飲まないんだ」
「それとは別。泥酔するほど飲むような人は、そもそも酒場では飲まずに自宅で飲むからね。通報されないように」
「あー」
世知辛いなーと、未成年ながらにそう思うワタなのであった。
―――――
一方その頃。
「……ぬわぁっと!? また貴様か」
「報告がございます」
「何だ?」
「例の能力者ですが、王都に到着したことが確認されました」
「……明日には我が下へとやってくるであろう。後はうまくやれ」
「承知致しました」
「さてどのような能力か、見ものだ……」
―――――
翌日。
ようやく、ステージ国王との謁見である。
が、その前に。
「うわっ……」
キースの目の前には、下着姿で熟睡している能天気女子中学生。
思わず顔を手で隠し、一旦退室。
しかしそのままにするわけにもいかず、さてどうしたものかと本気で困るキース。
しばらーく悩んでいると、部屋のドアが開いた。
自力で起きて、服を着たワタが出てきたのだ。
出てきたとは言っても、半分寝ているような状態。
「おはおー……」
「おはよう。ワタちゃんさ、下着姿で寝るの、やめない?」
「……見たんだ」
「い、いやー……そのー……不可抗力って奴?」
「見たんだぁー。うら若きJCの下着姿、見たんだぁー」
ニヤニヤしながら詰め寄るワタに、立つ瀬のないキース。
(もういっそ、あれも言っちゃおうかな)となにやら覚悟した様子。
「えーと……ワタちゃん、実は……ね。最初に出会った時……俺がさ、片膝ついて格好付けた時に、さ……」
「うん」
「……パンツ見ちゃった」
14歳の女子でも、本気の拳はすっごく痛いと、身に染みたキースであった――。
車内には重苦しい空気だけが流れる。
「……チッ」とワタが舌打ちをすれば、キースは車が揺れるほど動揺。
そんなこんなありながらも、王城に到着。
城の中心から見て南西に魔車専用の駐車場があるので、そこに車を置く。
下車したワタは、しげしげと城を見上げる。
「ほぇー」
「さっそく鳴いた。初めて見た人は大抵が首を痛める城として有名だよ」
「あー……あっ、ゴキッて言った」
「ははは……」
――ステージ王城は、それはそれは高くそびえ立つ。
外観は何本も建つ巨大な塔が特徴であり、一番高い塔の先端は雲の中である。
もちろんこんなものを普通の技術で作るのは不可能なので、この城自体が巨大なアーティファクトとして魔力を帯びており、上部には重量軽減の魔力が込められている。。
塔のほとんどはただの飾りであり、一応はしごで登れるが、上った所で寒いし空気が薄いし高すぎて下が見えないしで、はっきり言って威圧以外には何の価値もない。
ちなみに塔を使った行事もあり、昔は登り切ることで国政を占っていた。しかし困難な挑戦に過激さを求めた結果、いつしか裸で登ることになり達成者が出なくなり、国政を占うという本来の趣旨を失った。
現在でも行事は存在するが、挑戦者が一人も出ないので、死刑囚に減刑と引き換えで登らせている――。
「……本当に何の価値もない!」
「でしょ?」
ということで城内へ。
当然ながらキースは王国兵、そしてワタはそれに従う者なので顔パスである。
城内は外観からも想像できるとおり、物凄く屋根が高い。エントランス部分は特に高く、普通の建物ならば五階分ほどを吹き抜けにしたような高さ。
赤い絨毯とさまざまな調度品、巨大なシャンデリアにステンドグラス。それは見事なほどのキラキラの洪水である。
そんなキラキラにまみれ、息をするのも忘れている能天気女子中学生がひとり。
「わぁ……ゲームの中みたい……」
「ワタちゃんの世界にはないんだね」
「お城はあるけど、こういうのじゃなかったり、海外にあるから一生見られなかったり。だから女の子の憧れ!」
周囲のキラキラに負けず劣らず目を輝かせるワタに、キースも笑顔だ。
「キースさんから笑顔が消えた」
「誰のせいだと……ともかく、ここから先は馴れ馴れしい言動はダメ」
そりゃそうだ。なにせ現在二人は謁見の間を目前としている。
「いい? ワタちゃんは片ひざついて頭下げていればいい。後は俺が全部話すからね」
「あははーだいじょーぶだいじょーぶ」
(これ大丈夫じゃない奴だ!)
戦慄するキース。
作戦変更。先にキースが入り用件を伝えてから、ワタに入ってもらうことにした。
しばらく扉の前で待つワタ。
(王様の前だもんね。……やっべ、緊張してきた)
意識をすればするほど落ち着かなくなるワタ。
その時が来た。
少しだけ開かれた扉から、近衛兵に手招きされたワタ。
緊張しながらも謁見の間への扉をくぐる。
青い絨毯が真っ直ぐに伸び、左手は大きな窓で、そこからは暖かな日差しが床を照らしている。
絨毯の先には三段ほど高くなった台座に、金色の装飾が施されている玉座。
そこに座る男性は、肘掛に手をつきアゴを乗せ、暇そうに窓の外を眺めつつあくび。
年齢は50代以上。少し白髪の混じった、いわゆるロマンスグレーの髪と、あごひげ。礼服を身にまとい、左手の傍らには長い剣が立てかけられている。
キースは振り返りワタを確認、笑顔を見せて頷き、横へ来るようにと目で合図。
柄にもなく緊張し、ロボットのようにカクカクな足取りでキースの横へ。
「ワタちゃん」「分かってる」
再度笑顔をワタに見せ、緊張を解こうとするキース。
二人が揃って片ひざをつき、改めてキースが王様へ報告。
「国王様。この少女が、先ほど申し上げました者です」
「御前崎私と申します。このたびは国王様にハイエツたまわりまして、まことにキョーシクシゴクです」
全て自分で言うつもりだったキースは、片言になりながらもしっかりと挨拶の出来たワタにびっくり。
王様はようやく姿勢を変え、ワタをのんびりと睨む。
「話は聞いた。貴様には特異な能力があるとのことだが、間違いないか?」
「……はい」
「ふむ。良ければここで見せてはもらえないか?」
目線で助け舟をキースに要求するワタ。
するとキースは自分の指を軽く噛み血を出して、その指をワタへと向けた。
その理由と、キースが王様にどう説明したのかを察したワタは、両手を向けてその傷を治癒。
「……なるほど。確かに類稀な治癒能力を有しているようだ。そして、能力を自由に追加できるとも聞いたが?」
「国王様。それは」「貴様には聞いていない」「……失礼致しました」
ワタの頭の中では、占いババアの言葉が何度も巡っている。
そしてワタ自身、ニツバでの件で自分の能力の強さに、未だに恐怖心を持っている。
「……それは……その、条件があるんです。どうしても必要な時にしか、そのー……」
はぐらかしたワタ。そのことにキースも少しほっとした。
「なるほど。確かにいつ何時でも使い放題など神にも等しい能力を、ましてや……」
(こんな小娘が、とは言わないべきだな)
王様なので、気は利きます。
「……なれば、ひとつ試させてもらおうか」
「国王様」「貴様は黙れ」「しかし」「その首刎ねるぞ?」
静かに、だが本気で殺意を見せる王様。
一兵卒であるキースは何も言えない。
「どうだ? 乗るか?」
「……命令、ですか?」
「さてどうしよう。……そういえば、貴様とその兵士は随分と仲が良いと見えるな」
(イヤだって言ったら、キースさん殺される……。そっちのほうがイヤだ)
「……分かりました」
「物分りが良いな。では……おぉそうだ。丁度東地区に目障りな新興宗教団体がある。潰せ」
「潰せって……」
「皆殺しという意味だ」
顔の青くなるワタ。キースも苦虫を噛み潰す。
「しかし少女一人では能力を見定める以前の問題か。……貴様、国王命令だ。今後はその少女と行動を共にしろ。以上。では下がれ」
謁見終了後、二人は城内を見て回ることもせず、車へと直行。
無言で乗り込みエンジンを掛ける。
「……チッ!」
「うん!」
二人ともが、行き場のない怒りを抱えている。
なので大人であるキースが、話を変えた。
「いやぁしかし、ワタちゃんがしっかり国王に挨拶できたのは意外だったよ」
「それもラノベから。でもあんなオーボーな王様、信じらんない!」
「まぁまぁ。……後で正式に辞令が出ると思うけど、これで俺は国王公認のワタちゃんの仲間ってことだ」
「それは……正直嬉しい。でも! あんな王様の命令ってのがムカツク!!」
「はっはっはっ! 俺もだ!」
こうして城を後にした二人は、一旦宿屋へと戻った。
部屋に戻り藁のベッドに腰掛けた二人。
目下の問題はとても身近なものであった。
「っていうか、お金どうするの?」
「本当、どうしよう……」
「……私にいい考えがある」
「失敗の予感しかしないんですけど?」
「ふっふっふっ……」
不敵に笑うワタから出されたアイディア、それは――。
「兵団のツケにする!?」
「ヒツヨーケーヒってやつ」
「……後で怒られるぞー、俺」
「んじゃニツバの領主さんのツケ」
「あー、そっちのほうが俺は痛くない……けど、怒られるのは同じだぁ……」
ため息ばかりが漏れるキースは、能天気なワタを羨ましく思うのでありました。




