05 コントじゃないんだから
夜。
どうにかこうにか泣き止んだワタを部屋のベッドまで送り、帰ろうとするキース。
しかし動けない。
「……いや、ワタちゃん。さすがに俺は19歳の男だからさ、それは勘弁してもらいたいな」
「むー……」
頬を膨らませつつ、布団から伸びたワタの手はキースの袖を離さない。
「そんなことしてると、襲っちゃうよ? なんちゃって」
「むー!」
ひょうひょうと話すキースに余計に頬が膨れたワタだが、しかし手は離した。
キースはそのことに、心の奥底でちょっとだけ残念がっている。
「それじゃあ」「待って。私が聞いてない。何であそこにいなかったの?」
「……その目は逃げられそうにないね」
睨むワタに、身の危険を感じるキース。
もちろん冗談半分。ワタがこれ以上何かをするということはないと分かっている。
「直前の記憶が曖昧だから漠然とした言い方で申し訳ないんだけど、めまいがしたと思ったらあそこにいた。それで、いきなりニツバ様の魔車のハンドルを握っているんだもの。何が起こったのか理解できなかったから、まずは車を返さないと、と思って屋敷まで車を走らせた。でも途中でワタちゃんに似た子を見かけて、あそこでワタちゃんと待ち合わせていたんだと思い出し、急いで引き返したというわけ」
「……わかった。寝る」
「俺の部屋は左隣だし、何かあればメイドさんが駆けつけてくれる。安心して寝ていいよ」
「うん」
無愛想な声を出しつつ、寝返りをうって顔を隠すワタ。
キースはこちらを見ていないワタにも笑顔を見せ、部屋を後にした。
そのキースの部屋には領主が待っていた。
「お待たせいたしました」
「やはり、かなり堪えたのだろうね。……君も」
「ははは……」
領主の鋭い指摘に、キースは空笑いで返すしかない。
「それで、彼女は話してくれたかね?」
「はい。418番倉庫の地下には、『418番のネズミ』という犯罪組織があったようです。それを彼女は”いなかった”と想像した」
「……元から存在していなかった。なので依頼内容そのものが消滅してしまったと」
「はい。ワタちゃんの話では、目の前に立っていた組織の構成員が一瞬で消滅。さらに418番倉庫そのものがなくなっており、地下への入り口も消滅していたとのことです」
「ふむ。ならば明日、人を向かわせることにしよう」
「しかし、世界を改変してしまうほどの能力か……」
「彼女は明確に恐怖を抱いています。あの精神状態で動かすのは良くないでしょうから、当分はご厄介になるかと」
「それは構わない。こちらとしても賑やかなほうが良いからね。だが問題は、彼女がそれに慣れてしまうことだ。彼女は異世界からの訪問者であり、そこに何かしらの理由があるはず。これほどの能力を持っているのであれば、尚のことだ」
「でしょうね。何者かに召喚されたと考えるのが一番納得できますけど、それが何者かによっては、国家はおろか世界を揺るがしかねません」
「……世界を壊しかねない、だな。まずは明日、418番倉庫と『ネズミ』の捜索だ。もしも組織だけが消滅し、人は別の形で生きているのであれば、それは彼女にとって朗報になる」
「まずは明日、ですね」
ため息の出る大人二人。
翌日。大人二人はリビングで作戦会議。
「おっはよーございまぁーす!」
昨日の事件が嘘のように明るく挨拶してきたワタに、二人とも目が点。
男二人で顔を見合わせ、二人同時に振り向いて「おはようございます」と挨拶。
「なぁーに? その目」
「いやぁ……無理、してない?」
「してないよ。ただ、あーいうのって私のキャラじゃないんだよねー。無理してるったら昨日のアレのほうが無理してたっていうか、そんな感じ」
微妙な言い回しと、心の内を顔に出さない様子に、逆に不安が募る二人。
「……それでさ、昨日のアレは失敗じゃん。それで車はもらえないかなって。だから、もう一回チャンスください」
「もう一回って……まさか、また犯罪組織を潰すってこと!?」
「うん。だって一回失敗した程度で凹んでたら私じゃないんだもん」
あの状態を長く見てしまったキースには、この申し出は到底了承のできるものではない。
立ち上がり詰め寄ろうとしたキース。だがすぐに領主が割って入った。
「……分かった。もう一度だ」「ニツバ様!」
「キース君。彼女はもう覚悟を決めているよ。君はどうする?」
しばし固まった後、ため息をひとつ、渋い表情になり無言でその場を去るキース。
領主は首を横に振り、ワタはよく分かっていない。
「私なんかまずかったかな?」
「まずかったというか……彼は戸惑っているんだよ。ワタちゃんがこんなにも早く、かつ自分自身の手で立ち直ったことにね」
「んー、だってラノベだとどうにかなるもん」
「ならなかったら?」
「なるよ」
あっさりと、それが当たり前とでも言いたげなワタの表情に、領主お手上げ。
だがワタもただ能天気に”ラノベならば、異世界ならば”と考え、甘受しているわけではない。
「私がどうにかなるって言うんだから、どうにかなるの。だって、私がどうにかするから」
「……ははは、これは一本取られた。そこまで覚悟が決まっているとは思ってもみなかったのでね、お詫びするよ」
「ふっふーん! 私を甘く見ていると火傷するのだ!」
どうだと言わんばかりの表情。
「失礼ついでにひとつ聞きたいのだが、その覚悟、どうやって一晩で?」
「秘密」
「どうして」「も!」
頬を膨らませたワタに、領主は苦笑い。これ以上聞き出すことを諦めた。
しばらくして、ワタからキースの部屋へと出向いた。
能天気女子中学生もノックくらいは知っている。
「……どうぞ」
「うぇーい」
低い声でふざけながら入ってきたワタを思わず睨むキース。
だが能天気女子中学生、めげない。
「うぇーい? うぇいうぇいうぇーい」
「……ははは。何だよ、それ」
「うぇーい。今日最初の笑顔げっちゅ」
「苦笑いだよ?」
「それでも笑顔だうぇーい」
結局はワタのへんてこりんなポーズと能天気な笑顔につられ、キースも笑顔になる。
軽く息を吸って、笑顔のまま少しだけ真剣な雰囲気を醸し出すワタ。
「私軽いしアホだけど、キースさんの言いたいこと、分かってるつもりだよ。だから言っておくね」
しゃんと姿勢を正し、頭を下げるワタ。
「ご迷惑をおかけしています。それとありがとうございます。ついでに頼りにしていまーす」
「ついでなのか。ははは」
しかしワタの言いたいことも、キースに充分以上に伝わった。
「領主さんには言わなかったけど、私は二人が心配してくれるのが嬉しかったから、心配させないようにって考えた。それで、凹んだままだとずっと心配させちゃうから、前を向くことにしました。あ、でも今は前を向いてるだけ。そこからどうしたらいいのかっての、考えても結局わかんなかったから」
「……ワタちゃんは単なる能天気でアホな子かと思ってたけど「ひどっ!」ははは。だけど、強いんだね」
「とーぜんっ! なんたって異世界から来たチート能力者だもん」
「卑怯、ねぇ……」
若干含みのある言葉を残すキースだが、ワタはその意味が分かっていない――というか聞いていない。
しかしキースも随分と慣れて、それがまたワタらしいのだと割り切っている。
二人は揃って領主の下へ。
キースから改めてワタに対する報告を受けると、領主もようやくほっとひと安心。
領主はワタの言葉を疑っていたわけではないのだが、ワタの年齢と性格が引っかかっていたのだ。
「それじゃー次。魔車ちょーだい」
「では依頼を完遂した時の報酬にしよう」
ワタと領主も、もう一度この流れをするべきだと考えていた。
いや、ワタの場合はフラグの再構築程度の考えなのだが。
「さて依頼内容だが、最近になり『エデンズエンジェル』と名乗る連中が、北東の街外れにある廃教会を占拠し根城としている。この新興犯罪グループを壊滅させてくれ」
「……ニツバ様、そいつらってもしかして……」
「さすがに王国兵には話が行っているか。連中はいわゆる殺し屋集団だ」
「げっ! あのー、それを私にどうにかしろって、ちょっと危険すぎない?」
「まあ、そう言うと思ったよ。連中はルーキーの集まりでね、はっきり言って弱い。とはいえ危険なのには変わりないので、この依頼はキース君も同行してくれたまえ。これは命令だ」
命令と言われてしまってはワタも無理強いはできず、また内容も内容なのでキースの同行を許可した。
「一応聞きたいんだけど、何でそれを選んだの?」
「ニツバの街にとって、今一番目障りな存在だからだよ。私は領主だからね、我が領地を荒らすものには容赦をしない。……さすがに記憶ごと組織を消滅させるのは勘弁してほしいものだがね」
「いやな言い方ー。私だって少しは考えたんだから」
「ならばお手並み拝見」
結局は領主の手の上なのだが、頬を膨らませているワタがそれに気付くことはなく、一方のキースはニヤニヤを押さえるのに必死だった。
移動中、キースは今まではあえて聞かなかった、ワタの家族や私生活を聞き出していた。
これはキースの中で、もう少しワタに踏み込んでみようという気持ちの現れ。
同時にワタもキースのことを聞くのだが、こちらはなんとなくはぐらかされている。
なので現在ワタの頬は、怒ったフグのようにパンパンである。
「むーっ!」
「言っちゃ悪いけど、俺は上に報告する義務があるけど、ワタちゃんは個人的でしょ? 立場の違いがあるんだよ」
「じゃーこれだけ聞かせて。領主さんとキースさんって知り合いなんでしょ? なんで?」
「何でと言われても、家同士の付き合いとしか」
「じゃー家同士の付き合いって?」
「結局食い下がるんだね。……この国には大きな領家が三つ、つまり御三家ってのがある。マーリンガム家、セルウィン家、カーライル家の三つがそれね。そして俺がマーリンガム家で、領主様がセルウィン家。だから知り合いなんだよ」
「……ご近所付き合いだ」
「ははは、そんな感じだよ」
実際は全然違うのだが、詮索されたくないので話を終わらせたキース。
一方ワタは次の質問の機会をうかがう。
んが、その機会もなく廃教会の付近へ。
「アルコール教だけなのに廃教会ってあるんだ」
「どこの酒飲み宗教か知らないけど、ニツバは元々さらに大きな街だったからね。7番と11番魔王の襲撃で小さくなったんだよ」
「……そういえばこの世界って、魔王が12人いるんだった」
「そう。でもこの国に関わるのはそのうちの二人、セブンアイとスリーエフだけだよ」
(なんだろう、すごーく知ってる名前の気がする……)
思わず真顔になるワタと、その表情をこの先のことで緊張していると勘違いするキース。
魔車を降り、二人で廃教会へ。
教会の入り口には一人見張りが立っており、さっそくワタとキースを確認、指笛を吹いた。
「その服装、王国兵だな?」
「いかにも。すまないが慈悲はかけないよ」
「一人で何が……それもなのか?」
「それってゆーな! ちゃんと名前で呼ばないと消すぞ!」
苦笑いのキース。
一方見張りの指笛で、周囲にはぞろぞろとアレな方々が20人近くも集結。
拳にナイフに剣に槍、斧や弓矢までバリエーション豊かである。
「……これで全員かい?」
「ケッ! 二人に対して全員もいらねーよ!」
「ナメてくれるねぇ。……ワタちゃん、昨日の連中、この中にいる?」
「んー……多分いない。っていうかボス以外顔覚えてない」
「ははは……」
「何余裕ぶってやがる! てめーら行くぞ!」
「ワタちゃん、俺がいいって言うまでしゃがんで」
「おっけー」
戦闘が開始された。
まずはキースの背後から剣士が一人。しかしキースは弓を構えず相手を見ることすらせず、これを回し蹴り一発で沈めた。
「なっ!?」
「君たちは誰を信奉している? おっと、犯罪者には神も力を貸さないんだったね」
「チキショー、全員で行くぞ!」
と命令を飛ばした奴の額には、既に弓矢が刺さっている。
「何なんだこいつは!?」
「勘違いされちゃ困るんだけど、俺ね、これでも下っ端なんだよ。つまり俺よりも強い連中がゴロゴロいる。それが、栄誉あるステージ王国兵なんだよ」
遠くの敵は狙撃され、近くに寄れば体術で捻じ伏せられる。
「おー、すげー。私の出番ないー」
「あったら困るよ」
攻撃しつつも喋る余裕すら見せるキース。
見る見る敵は減り、既に3人だけ。後ろに一人、前に二人。
「……ワタちゃん。あとは譲るよ」
「えっ!?」
「大丈夫。殺し損ねたら俺が後始末するから」
にっこり笑顔のキースに、ワタは血の気が引いた。
しかしその隙を突き、背後の一人がワタに斧を振り下ろす!
「きゃあっ!」《飛んでけ!》
「おらああああぁぁぁーーー………」
斧を振り下ろす最中に、本当に空高く飛んでいき、見えなくなった。
「……あの人どうなるんだろ?」
「間違いなく落ちてくるだろうね。……ここに」
「それはいやああっ!!」
《さっきの人は、落ちてる最中に鳥に捕まって、連れて行かれる》
「……あ」「あ」「あー……」
ワタ以外の三人が、呆気にとられつつ空を見上げていると、落ちてきた彼を巨大な鳥……というよりも翼の生えたトカゲが空中でナイスキャッチし、そのまま何処かへ。
「ありゃ、ワイバーンだな……」「あいつ死んだな……」
戦闘中ということを忘れている殺し屋二人。
「……んじゃ、そこの二人もどっか行ってもらう」
「え……あっ! ま、待った待った! 頼む殺さないでくれ!」「オレもだ! 死にたくねぇ! 頼む!」
「っていうことだけど、俺はワタちゃんに任せるよ」
「それじゃーねー……」
ワタの判断は賢明だった。二人を逃げられないように縛り上げ、あとは領主に任せたのだ。
意外とも言えるほどの冷静な判断に、キースも驚いていた。
しかしまだ終わってはいない。二人は廃教会の内部へ。
警戒し扉に耳をつけ、内部を探るキース。
一方能天気女子中学生はあっさりと扉を開けた。
「ワタちゃんッ!」
いきなりだったが、キースがギリギリでワタを押し倒し、中からの弓矢での狙撃を防いだ。
「ワタちゃん! いくらなんでも迂闊すぎる!」
「えー大丈夫だよ? 《こっちを狙った弓矢がその場に落ちる》っていう創造してあるから」
「それでもだ!」
「……ごめんなさい」
物凄い剣幕のキースに、ワタもさすがに反省。
ちなみにワタを狙った弓矢は、能力どおり、全ての矢が飛ばずにその場に落下していた。
教会の中にはまだ数名。こちらは入り口の左右に分かれて様子を探っている。
「完全に篭城の構えか。さてどうしようかな……」
「……ねえ、試してみたいことがある」
顔の向きは変えず、横目でちらっとワタを睨むキース。
「危ないこと?」
「危ないこと。だけど能力でどうにかできるはず。それを試してみたい」
「まずは説明を」
「うん。教会を壊す」
「危ないね」
「あはは。それでね、中にいる人は無傷っていう、ありえないことをしてみたいの」
「難しいだろうね」
「うん。でもね、さっき人を飛ばした時に分かったんだ。『ネズミ』がいなくなったのは、私が条件をしっかり考えなかったせいだって。だから今度は、詳しく条件を考える」
じっくり考えるキース。ワタはキースから目線を外さない。
このままでは埒が明かないのは間違いなく、またキースとしては、中にいる連中の命は惜しくはない。
問題はそれをワタにさせることだ。
「……人が死ぬよ? それも何人も」
「そうならないように頑張る」
「これからも人が死ぬ。ワタちゃんが殺すことになる」
「……キースさんは、人の命ってどう思ってるの? 軽い? 重い?」
「軽い。即答できる。ここはそういう世界だし、俺はそういう場所で働いている」
またちらっとワタを見たキース。ワタの瞳は、とても強い意志を宿していた。
(覚悟ができていないのは、俺だったか)
ワタは昨日の件があり、既に自分が他人の命を握ることを覚悟していた。能天気なアホの子ゆえに、迷うことなくその覚悟を受け入れていたのだ。
キースも覚悟した。そして頷いた。ワタも頷いた。
《廃教会が崩れるけど、みんなガレキに当たらないで、みんな無傷で済む》
唐突に廃教会の錆び付いた鐘が鳴り響き落下。
まるでそれが合図であったかのように、まずは塔が崩れ落ちた。その塔は教会の屋根を突き破り、強烈な風と砂埃が発生。
爆風は脆くなった廃教会の壁を容易く打ち抜き、石のレンガブロックはバラバラに砕けた。
「うおっ!?」という声と共に、キースの頭上にも教会の壁が倒れてきた。
砂埃が落ち着き視界が確保されると、ワタは目の前の光景に、膝から崩れた。
「……また……失敗した……」
今度はキースまでもを巻き添えにした。そう思ったワタは放心状態で、涙が頬を伝う。
「……んうぇほっ、ごほっごほっ……ぅあー……俺、生きてる? すげーっほげほっ……」
放心状態のワタは、声の方に顔だけを向けた。
そこにはただでさえ薄灰色の髪が、瓦礫のほこりでさらに真っ白ボサボサになったキースの姿。
さらに教会内部からも複数の咳き込む音。
「……あれ?」
「あれ? じゃないよ。ふぅ……待ってて。後は俺がやる」
ちょっと足元がふらつきながら、袖を口に当て咳き込みながら篭城犯へと迫るキース。
一方ワタは、キースのいた場所を見て、キースが何故助かったのかを悟った。
そこが丁度、窓の位置だったのだ。
「……あはは。コントじゃないんだから。……よかった……」
元気の出ない様子で笑うワタ。
一方キースは篭城犯の頭を蹴りつけ失神させながら、持参したり落ちていた縄で確保。篭城犯は5人だった。
安全の確保を確認した後、キースはワタを呼んだ。
「みんな怪我……してる……」
「いや、これは俺が蹴って失神させた時のだから、みんな無傷だったよ。ですよね? みなさん?」
必死に頷く『エデンズエンジェル』の諸君。
ワタはその中に、見覚えのある人物を見つけた。
「あっ! 『ネズミ』のボスさん!」
「……何のことか知らねぇが、俺はネズミじゃねぇしボスでもねぇよ」
「そう? んー……《金縁のサングラス》これかけて」
「なんだ!? マジシャンか!?」
「いいから! じゃないと首飛ばすよ!」
「分かった分かった!」
どちらにしろ手が出ないので、代わりにキースがサングラスをかけさせた。
「うん! 間違いない! あぁー……よかった! 本当によかった! ボスさん、ありがとう!」
「あぇ!? あー、なんか分かんねぇけど、どういたしまして」
『418番のネズミ』に所属していた人は『消えてなどいなかった』という事実が分かり、バッチリ機嫌の直ったワタ。
キースもそれを見て、改めて安心している。
こうして新興犯罪グループ『エデンズエンジェル』は壊滅。
ワタとキースの活躍で捕まった合計7人は、後日王都にて裁判にかけられることとなった。
その立役者である二人は、領主屋敷へとドライブ中である。
「正直、壁が崩れてきた時は死んだと思ったよ」
「ごめんなさい。力の使い方はなんとなく理解したけど、でも私には大きすぎるなって思った」
「ははは、そんなの誰にだって大きすぎるって。なにせ世界を改変してしまう、文字通り神のような能力だよ? ……俺だったら一度目の失敗でもう立ち直れなくなっていたかも。それを思うと、その能力はワタちゃんだからこそなんだと思う」
「えへへー」
領主屋敷に到着した二人は、これを領主に報告。
報告を聞く領主は、驚き通しである。
「本当にそれほどの崩落があったのに、皆無傷で済んだとは」
「そこにいた私自身ですら半信半疑ですよ。なんたって窓で命拾いですからね。他の連中も一歩違えば潰されていたのに、傷一つないんですから」
「ふむ。ワタちゃんはどうだい?」
「想像したとおりになってすげーって思う。けど心臓によくないなって。あはは」
ワタの笑顔に、ほっとする大人二人。
「ワタちゃん、キース君。その魔車の鍵は君たちのものだ。報酬だからね」
「やったっ!」「ありがとうございます」
「いえーい」とワタが手を出したので、キースも乗ってハイタッチ。
ワタもキースも、そして領主も笑顔だ。
「さて今からイカスに向かうと、あちらに着く頃には夜だ。どうするのだ?」
キースはワタに意見を求める視線を送った。
「ここから王都までどれくらい?」
その質問に答えたのはキースではなく領主。
「魔車で一日半だね。参考までに、私は朝に出てイカス村で一泊する。イカス渓谷から王都までは大きな宿泊施設がないので、イカス村からは日が昇る前に出発する。そうすれば王都にはお昼ごろには到着できるよ」
領主の説明に、行程の長さを憂うワタ。
「まだお昼だけど……あ、お昼ご飯。それとシャワー貸して。服も制服に戻したい」
「ああ、構わないよ」
「えへへ。それで、ご飯食べたら出発したいな。少しでも早く着きたい」
ワタの視線はキースへ。キースは頷くのみ。
「よし、それでは用意させよう」
「ごっはんーごっはんー」
鼻歌交じりのワタに、笑顔の絶えないキースと領主だった。
週一ペースと言ったな。あれは嘘だ。
というのも半分嘘で、次回から本当に週一ペースになります。
だって、あのままだったら後味悪いでしょ?




