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みんなのアイドル女神が俺の恋路を邪魔してくる件について!?  作者: おさんぽミルク
第2部 聖なる愚か者の行進

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第35話 バカは死んでも治らない

曲がって歪(ゆが)んで捻じれた道も、気合と度胸で殴って直す。


意思と覚悟で『無理』を蹴飛ばし、意地と根性で『道理』を笑う。


愛と友情で世界を変えて、掴んで見せるぜ『己の明日(あす)』を!

 倉庫に飛び込むなり、いきなり鹿目ちゃんが男に押し倒されていてビビった。


 ビビりすぎたので、つい勢い余って鹿目ちゃんに覆い被(かぶ)さっている男を蹴飛ばしてしまったが……大丈夫だろうか?


 まぁ身体も小刻みに痙攣しているし大丈夫だろう、うん!


 自分を無理やり納得させ、残りの男共の数を確認する。


 ひぃ、ふぅ、みぃ……3人か。




「ど、どうして? どうして、センパイがここに……?」

「ちょっと待ってな。すぐ終わらせてくるからよ」

「へっ?」




 呆けた声をあげる鹿目ちゃんの脇を通り過ぎるなり、3人の男のうちの1人が、怒声を上げながら突っ込んできた。




「ふざけんじゃねぇぞ、ゴラッ!?」

「ふざけてねぇよ」




 振り抜いた拳を紙一重で躱し、無防備になった右のレバーに左の中段回し蹴りを叩きこむ。


 そして痛みで顔が前に出て来たところを、右足の上段回し蹴りで蹴り飛ばす。


 地面に倒れ込む男と入れ替わるように、もう1人が拳を振り抜いてきた。


 それを鼻先寸前で躱し切り、左の下段蹴りを放つ。


 体勢が崩れたところで、再び右の上段回し蹴りを男の側頭部に叩きこむ。


 男が膝から崩れ落ちるのを確認し、最後に残った1人を睨みつけた。




「テメェで最後だ」

「うぐっ!? なんだコイツ!? マジ強(つ)ぇ……。お、おまえ、まさか本当に喧嘩狼か!?」




 俺に睨まれて体が強ばる男。


 その隙を縫うように、とっつぁんメガネが鹿目ちゃんのもとまで駆けだした。




「ま、窓花! だ、大丈夫だったか!?」

「う、うん。ワタシは大丈夫……。でも、どうして大神センパイが、ここに?」

「そんなのいいから、今は逃げるのが先だ!」

「ま、待ってダイちゃんっ!? ……こ、腰が抜けて立てないの」




 2人のやりとりを耳にしながら、1歩、また1歩と男との距離を詰める。


 その瞬間、男がツバを吐き散らしながら、脅すように俺に向かって叫んだ。




「お、おまえっ!? 俺らがクズ高だって分かって、手ぇ出してんのか!? こんなことして……2度とこの町を歩けると思うなよ!? 必ず俺らの仲間が、おまえに報復するからな!」

「やってみろや。俺は森高の大神士狼だ。テメェらがどこのどいつかなんざは知らねぇが、俺の友達(ダチ)に手を出す輩(やから)は、例え『神様』『仏様』でも許さねぇ」




 ドンッ! と男の土手(どて)っ腹(ぱら)に右足を蹴り込んでやる。


 激しく咳き込みながら、その場でうずくまる男の髪を掴んで持ち上げる。


 そのまま吐息がかかりそうなほど男に顔を近づけると、俺は念押しするように口をひらいた。




「いいか、よく聞けよ? もし今度、俺のダチに手ぇ出したら、その面で2度とこの町を歩けないようにしてやるからな。分かったか? 分かったなら返事は!?」

「わ、分かった……。もうコイツらには近づかねぇよ……。だ、だから、もう勘弁してくれ……ください……」




 言質を取ることが出来た俺は、男の髪の毛から手を離してやった。


 そんな光景を見て、とっつぁんメガネが「すげぇ……」と小さく声を漏らす。


 俺は転がっている男共の屍を無視して、鹿目ちゃんたちの方まで歩み寄ると、俺にビビっているとっつぁんメガネに向かって1つだけ忠告してやった。




「おい兄ちゃん。こういう奴らはな、1度でも美味しい思いをすると際限なく調子に乗るから、安易(あんい)に金なんか渡しちゃダメだぜ?」

「は、はい! き、肝に銘じておきますっ!」

「大神センパイ……どうして? どうして、助けに来てくれたんですか? わ、ワタシ、あんなに酷いことしたのに……」




 気がつくと、鹿目ちゃんはポロポロと涙を流していた。




「泣かないでくれよ鹿目ちゃん……」

「ごめんなさい、ごめんなさい……ワタシ、ワタシ……っ!」




 嗚咽(おえつ)混じりに何度も頭を下げる彼女に、俺は苦笑を浮かべてみせた。




「いいんだよ、別に。こういうことは慣れたもんだからさ」




 それに、と満面の笑みを浮かべて俺は彼女に言ってやった。




「惚れた女の好きな男くらい、守ってやるのが男ってもんだろ?」

「――ッ! あ、ありがとう……ございます……っ!」




 泣きじゃくる鹿目ちゃん。


 俺はその隣にいるとっつぁんメガネに、目線だけで語りかける。


 あとはおまえの役目だぜ?


 俺の意図を汲んだのか、とっつぁんメガネはコクンと小さく頷くと、鹿目ちゃんの震える肩をそっと抱きしめた。


 そんな2人を尻目に「じゃあな」と短く別れの言葉を告げ、倉庫を後にする。


 夏空の下、俺は俺の帰りを待っている仲間のもとへと歩き出す。


 愛しき人に背を向けて。


 今度こそ、本当にさようなら鹿目ちゃん。




 ……俺の大切だった人。

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