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みんな、こわい

 「我らの優秀な戦士ダブリストよ、お前の仇はこの俺が奴の首を頂戴することで討ってやる。グラメニア様。このハンドレッドアイザーに出撃の許可を。」

 百の目を持つおっぱい魔人、ハンドレッドアイザーは立て膝をつきながらグラメニアに出撃の許可を願う。

 「いいだろう。奴らとてダブリストを打ち倒したことで気が緩んでいるだろう。友の仇、その手で討つがよい。」

 「はっ!智将ハンドレッドアイザー、行きます!」

 グラメニアからの許可を得て、ハンドレッドアイザーは神殿から出て行く。


 その頃、磨那の目の前には煌めく透明と深い漆黒、二つのフラットストーンが置かれていた。

 「奏さん、この二つのフラットストーンは?」

 「それはこの前とは別の発掘隊に発掘してもらったフラットストーンだ。どうやら透明なフラットストーンはダルクダイヤ、漆黒のフラットストーンはムネナシオニキスというものらしい。解析班が調べたところ、闇のフラットストーン、ムネナシオニキスは地火風水、そして光のフラットストーンを使いこなした時、初めて力を使えるようになるらしい。」

 「わかりました。まずは光の超人からですね。」

 奏の説明を受けて磨那はダルクダイヤを手に取り念じる。

 「あなたは、だあれ?」

 磨那が念じると二十歳手前の女子が現れる。

 「私は板野磨那。貧乳超人に選ばれてムネトピア帝国と戦っています。あなたは?」

 「私はジャンヌ。」

 磨那の自己紹介を聞き、ジャンヌはか細い声で名前を言う。

 「ジャンヌさん、私達に力を貸してください。みんなの平和を取り戻す為に、あなたの力が必要です。」

 磨那はジャンヌに頼む。しかし、

 「いやだ!みんな、こわい!」

 ジャンヌは年相応とは思えない言い方をし、怯えた表情を見せながら実体化を解いてしまう。

 「ジャンヌさん、待ってください!」

 磨那は呼び止めようとするが、一足遅かった。

 「磨那氏よ、一度自室に戻るとよい。少々話したいこともある。奏氏よ、磨那氏を借りるぞ。」

 「わかりました。ダルクダイヤについては佳織の持つ古文書を基に更なる解析を行わせてもらいます。」

 ネデスは奏からの許可を得て磨那を自室に向かわせる。

 「かつて火刑に処された光の超人、やはりと言うべきか、ジャンヌ・ダルクであったか。」

 ネデスは重たい口を開けて言う。

 「ネデスさん、どうしたんですか?」

 「磨那氏よ、ジャンヌ・ダルクのことについて、どれ程知っておる?」

 「えっ、確かフランスの救国の英雄として人々を導いたけど、最後は魔女の烙印を押されて火あぶりにされたって…」

 「やはり現代ではその程度しか教えていないか。」

 「どういうことですか?」

 「そもそも必要な過程がごっそり抜け落ちているということだ。ナイチンゲールのゲイルエメラルドは原初のフラットストーンではあるが、初めてフラットストーンに選ばれた貧乳超人は私だ。この国でいうところの平安時代には既に貧乳超人としてフラットストーンに宿っていた。故にナイチンゲール達よりはるか昔から歴史を静観し続けていたが、彼女の最後は悲惨なものであった。」

 ネデスは話を始める。

 「ジャンヌ氏は女性で在りながら神の声を聴いたことで軍のシンボルとしてオルレアンの軍に入隊した。彼女の指揮系統はとても優秀だった。この頃から一部の大人達は彼女の存在を悪用していた。誇り高き救国の戦乙女として。彼女が前線に立って指揮をした部隊はたちまち華やかな勝利を納めていった。」

 「そうですよね。」

 「だが、そのように人を道具としか思わぬ者共が、真っ当な扱いをすることなどあるはずもなく、敵に捕虜として捕らえられた彼女に上層部は全ての罪を擦り付け、魔女の烙印を押そうとした。あれは悪辣だった。彼女の魔女裁判には書類の偽造が行われ、弁護士をつけることも許されず、親英派の裁判官のみで彼女を魔女に仕立てようとした。」

 「酷い…」

 「そんなものはまだ序の口だ。彼女は今後男装をしないことを条件にその場はなんとか逃れることが出来たが、彼女は投獄され、その際に教会側が用意した男を利用して彼女の女性用衣類を全て盗み出して暴行を働こうとした。彼女は逃げる際に唯一近くに在った男性用衣類を着てその場をやり過ごしたが、それこそが教会側の狙いだった。逃げる為とはいえ、男装をしたと言い張り、彼女が誓いの言葉に背いた魔女と断言した。」

 「ただのマッチポンプじゃない!」

 「その通りだ。しかも、彼女は魔女裁判の通例通り、男達の慰み者にされた。かつて自分が救いたいと思った者達の手によって。」

 ネデスの言葉に重みが増す。

 「そして彼女は大衆の前で火刑に処された。彼女の懺悔に多くの者は涙を流したが、それでも一定数は彼女を嘲笑していた。まあ、彼女の死がある男の人生を狂わせてしまうという後日談もあるが。」

 「マリーさん、同じフランス生まれのマリーさんに聞きたいのですが、本当に教会の人達はそんな非道な行いをしたのでしょうか。」

 磨那はマリーに質問する。

 「私も、当時を生きていたわけではないので何とも言えませんが、彼らの性質を考えれば、やってもおかしくはありません。」

 磨那の質問にマリーは目を伏せながら答える。

 「それで、ジャンヌさんの火刑が原因で人生を狂わせられた男性というのは?」

 「彼女が軍に入隊したときから傍で使えていた軍師、ジル・ド・レェ。青髭公とも呼ばれているな。彼はジャンヌ氏が魔女として処刑された後に、ジャンヌ氏への妄執からか、ジャンヌ氏への崇拝を続け、ついには悪魔信仰者サタニストへと堕ちてしまった。」

 「もしかして、それが原因でジャンヌさんは?」

 「うむ、人間不信からくる年齢退行がおきていると思われる。」

 「そうなりますと、私達では対処ができませんわね。」

 「僕としても、これ以上彼女の傷を抉らない方がいいと思います。」

 ネデスの言葉を聞き、マリーとテッパンはジャンヌのことをそっとしておくように促そうとする。

 「でも、それで本当にいいのでしょうか?」

 磨那はそれに反論する。

 「磨那氏、人には誰だって抉られたくない心の傷がある。磨那氏とて、日本がムネトピア帝国に支配される前は会社で散々な目に遭ってきただろう。磨那氏の場合はまだ人によっては耐えられるかもしれぬ。だがジャンヌ氏の場合はそうはいかないだろう。彼女は信じていたものに利用されるだけ利用され、そんな輩の快楽の為に全ての罪を擦り付けられ、見せしめと言わんばかりの悲惨な最後を遂げ、自身を信じていた者の未来まで歪めてしまった。とても、若者に耐えられるものでは無い。」

 「だとしても、ジャンヌさんは光のフラットストーンに選ばれて、貧乳超人になりました。きっと、正義に対する想いはまだ、消えていないと思います。ですから、ジャンヌさんにとって大切な何かが見つかれば、もしかしたらジャンヌさんも力を貸してくれるかもしれません。あんな助けてほしそうな人を目の前にして諦めることなんて、私には出来ません。」

 「そうは言えど、何がトリガーとなっているのか解らぬ以上、不必要な詮索はかえって溝を深めるばかりだ。」

 磨那とネデスが話していると、

 〝磨那さん、ここから北西の位置におっぱい魔人が現れた。対応を頼む。〟

 奏から連絡が入る。

 「行こうみんな。ジャンヌさんにきてもらおう。もしかしたら救国の英雄として戦っていた時のことを思い出すかも。」

 磨那は指令室からダルクダイヤを持って行きウィンドレイダーで現地に向かう。


 「目標地点はここだな。やれ、黒服兵!」

 ハンドレッドアイザーは黒服兵を放ち、黒服兵達はレールガンを乱射して建物を破壊してゆく。

 「そこだな!消え去れ、人類の負の遺産、貧乳よ!」

 ハンドレッドアイザーは瓦礫に隠れる女性を見つけると巨大な戦斧を振り上げる。

 「誰か助けて!」

 女性は叫ぶ。

 「待ちなさい!」

 そこに磨那が現れ、ウィンドレイダーでハンドレッドアイザーを撥ね飛ばす。

 「来たか、貧乳超人ナイチチゲイル!このハンドレッドアイザーが我が戦友、ダブリストの仇を討たせてもらう!」

 ハンドレッドアイザーはすぐに立ち上がり姿勢を整える。

 「磨那、相手は私を御所望みたい。」

 「そうだね。行くよゲイル。エメラルド・ラピッド!」

磨那はナイチチゲイルに変身する。

 「癒しの疾風、ナイチチゲイル!来て、ラピッドスティンガー!」

 ナイチチゲイルはラピッドスティンガーを召喚し、ハンドレッドアイザーの目を突こうとするがハンドレッドアイザーは巨大な戦斧で攻撃を防ぐ。

 「くっ守りが堅い!」

 「だったら磨那、マリーさんに交代しよう。マリーさん、お願いします!」

 「解りましたわ。」

 ゲイルはマリーとの交代を提案し、マリーは了承する。

 「ガーネット・アンガー!」

 ナイチチゲイルはマリー・パットガネーヨに変身する。

 「怒れる力の火、マリー・パットガネーヨ!」

 マリー・パットガネーヨは名乗り、そのままハンドレッドアイザーの戦斧を破壊しようとするが、ハンドレッドアイザーはマリー・パットガネーヨの背後に回り続けて攻撃を回避し続ける。

 「私の動きが読まれている!」

 マリー・パットガネーヨは警戒する。

 「今更気が付いたか!俺についている百の目は百の方向にある全ての物を見続けることが出来る!本当は肉付きのいいおっぱいをみたいし、見た目が貧相な貧乳なんて見たくは無いが、これも勝つためだ!お前の戦いはギガンテックハンドと戦った初戦からずっと観させてもらった!お前の戦闘パターンは全て俺の目で覚えさせてもらっている!負けるものか!」

 ハンドレッドアイザーは戦斧を振り上げる。

 「今ね!」

 マリー・パットガネーヨは無防備になっているハンドレッドアイザーの腹部を殴ろうとするが、

 「こんな罠に、やはり引っかかるか!」

 ハンドレッドアイザーは左脚で回し蹴りを放ち、マリー・パットガネーヨの拳を打ち落とす。そして、怯んだマリー・パットガネーヨに振り上げた戦斧を叩きつけようとするが、

 「そこだ!」

 マリー・パットガネーヨは戦斧の柄を拳で折り、ハンドレッドアイザーの戦斧を破壊する。

 「武器は破壊した!これで…」

 マリー・パットガネーヨは蹴りを放つが、ハンドレッドアイザーは素早く避ける。

 「武器を破壊したから何だって?」

 ハンドレッドアイザーはマリー・パットガネーヨに近づいて素早く殴ると、再び距離を離す。

 「一撃が重くて素早い!?」

 マリー・パットガネーヨはふらつきながら立ち上がる。

 「悪いな。本当の俺はスピードファイターだ。俺の動きが鈍かったのは武器を持っていたからだ。武器を捨てた今、俺に敵うと思うな!」

 ハンドレッドアイザーは素早い動きでマリー・パットガネーヨを追い詰める。

 「マリー王妃、ここは僕との交代を。あの攻撃なら僕のテッパンセンで受けきれます。」

 「解りましたわ。磨那さん、テッパンさんと交代します。」

 「はい!トパーズ・リフレクト!」

 マリー・パットガネーヨは与謝野テッパンに変身する。

 「詩が紡ぐ鉄壁、与謝野テッパン!」

 与謝野テッパンはテッパンセンを構えて守りを固める。

 「その姿は我が戦友のダブリストを奪った忌々しい姿!」

 ハンドレッドアイザーの動きは更に苛烈さを増し、与謝野テッパンは詩を作る時間すら与えられない。

 「知っているぞ!その力は作った詩の通りに俺達を葬る技!だが、その詩を作れなければ意味は無い!」

 与謝野テッパンはその場から動けずにいた。

 「ジャンヌさん、力を貸してください!今の私達には、ジャンヌさんが必要なんです!」

 与謝野テッパンは呼びかける。

 「いやだ、もう痛いのも、ひどいことをされるのも嫌!怖いことなんてしたくない!」

 ジャンヌは拒絶を繰り返す。

 「ほう、光の力に見捨てられたみたいだな!」

 ハンドレッドアイザーの連続攻撃に遂にテッパンセンにへこみがうまれる。

 「どうした!鉄壁とか言いつつその程度か!」

 ハンドレッドアイザーの攻撃を前に、与謝野テッパンは防御を行うことしか出来ずにいた。

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