表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日めくりカレンダー  作者: 流美
12月の日めくりカレンダー
279/294

クズと今カレと私の話

 私の元カレはとんでもなくクズで、私の今カレはとんでもなくお人好しだった。それは、びっくりして言葉を失ってしまうほど。


 身体でしか私を見ていなかったクズをフると、しばらくの間、何通ものメールを送られた。友達からやり直そうだとか、君の言う通りだったよとか、俺が悪かった、とか。

 でも絶対にクズと友達に戻るなんてしたくなかった私は、何の返信もしなかった。唯一した返信は「関わらないで」とだけ。


 それからもう3年も付き合いがなく、お互いに新しい恋人を作った頃。クズからの嫌がらせが始まった。

 最初は、私がクズの恋人だった時の出来事を友人に広められた。私の嫌がることだとか、私の好きだったことだとか。今更になって何故か広められたことに、計り知れない不快感を覚えた。

 次に今カレに対する、私の悪口だった。親友とまではいかずとも、今カレとクズとは友達関係であったから、私の悪いところを次々と告げ口された。幸い、今カレは聞く耳を持たず、すぐに収まった。


 そして、最後。今カレは私に、直接手を出してきた。学校の廊下ですれ違いざまに軽く小突かれ、訝しげに振り返った瞬間、全力でビンタをされた。一体何をされたのか、全く理解できなかった。

 そこは生憎、人通りの少ないところで、私も集団で行動するようなタチではない。誰かに助けを求める余裕もなく、呆然とクズの顔を見つめていた。すると今度は、お腹に拳を勢いよく入れられた。吐きそうになって堪える。


「何、すんの」

「俺のことフっといて幸せそうに恋人作ってんの、ムカつくんだよね」


 ニタニタと気持ちの悪い笑顔で、距離を置いた私に詰め寄ってくる。お腹の痛みと吐き気は即座には治らず、クズから離れられる力が出ない。訳の分からないことを言っているクズに対し、ようやく苛立ちを覚えた頃に、今度は脛をつま先で蹴られた。

 思わず脛を押さえてうずくまる。痛い、と言う声は形にならず、視界は涙でゆらゆらと揺れている。なんで、関わりをやめて3年以上経っているのに、こんな目に合わないといけないのか。


「俺の恋人は、全員クズで不幸だっていうのによ」


 私と別れてから、クズの恋人は新しく4人。勿論、付き合って数ヶ月で別れるの繰り返しだ。こんな奴の何がよくて付き合ってしまうのか。私にも彼女らにも問いただしたい。

 つか、そんなの関係ないって。私は私で、とっくに吹っ切れて新しい恋人作って、今幸せなのに。なんでこいつの不幸の犠牲にならなきゃいけないの、本当に。

 溢れかけた涙を拭って、立ち上がる。運良く先生が通り掛かればいいのにと願ったところで、当然そんなことは起きない。逃げないと、またやられる。どこからなら逃げられるか、思考を巡らせた時だった。


「沙耶!!」


 私の名前を呼ぶ声は、紛れもなく今カレの声で。それはすぐ側から……私を守るように、私の目の前に立った人間から発せられていた。


「俺の彼女に、何してんのお前」

「関係ねぇだろ、引っ込んでろ」

「俺の彼女だっつってんだろ! 関係あんだよ、手ぇ出してんじゃねぇ!!」


 どうやら私達の姿を遠目から見た友人が、今カレに伝えに行ってくれたらしい。ということは、すぐに先生も来るだろう。

 クズに向かって声を張り上げる彼の、背中が頼もしくて、かっこよくて。でも先生が来てしまうからと、腕を引っ張った。振り向いた今カレは、不安そうで、今にも泣きそうな顔を私に向けてきた。


「大丈夫か、沙耶。ごめん、すぐに来られなくて」

「大丈夫だよ。迷惑かけて、ごめんね」


 私とクズに向ける勢いの差に、思わず苦笑を零す。そんな私達が気に食わないのか、後ろからクズが、今カレの背中を思い切り殴ってきた。苦しそうな呻き声が漏れる。

 一拍おいてクズのほうを見、反撃しようと今カレが睨みつけた時。幸か不幸か、何人かの先生が駆けつけてきた。私達の雰囲気を察し、即座にクズとの間に先生が入ると、クズを指導室に。私達を保健室へ連れて行ってくれた。







 それからクズは当然、謹慎処分を受けた。今カレも謹慎処分を受けそうになったが、反撃はしていないし理由も理由なので、むしろ褒められることに。

 最終的に、それ以降クズとの関わりは完全に絶たれ、私と今カレがどんな関係になったかは…………またいつかのお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ