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「娘が、行方不明なんです」
「ごめんなさい」
私は今日、もう100回は繰り返したであろう言葉を、また溢した。誰に対してか、何に対してか、私は幾度となく、繰り返した。
「ごめんなさい」
震えていた声は落ち着いた。液体という液体で、ぐちゃぐちゃに濡れていた顔も、落ち着いた。視界も声も、霞んではいたけれど、最初に言葉を溢した時よりは、何倍も落ち着いていた。
「ごめんなさい」
こんな筈じゃなかったんです、と心の中で唱える。何がこんな筈じゃなかったんだろう、と頭の中で考える。何も分からない心の中と、何も知らない頭の中。
「ごめんなさい」
私の目の前には、人形が仰向けに寝ていた。部屋は薄暗い。霞んだ視界のせいもあり、人形の詳細は見られない。
「ごめんなさい」
あぁ、警察に、電話しないと。
人形=娘 です
理由や方法はご想像にお任せします
サブタイトルの台詞は、ラストに来るものと思って読んでいただけたらと思います。
行方不明=目の前の娘を認識できていない精神状態




