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行為
その行為の何が駄目なのかも知らない時期。私は叔父に性器を弄られていた。
その行為はどういうことをするのか知った時期。私は父親に気持ち悪い笑顔で性器を弄られていた。
そして行為の意味を知り、大好きな彼ができた時期。私は彼と、その行為をすることはできなかった。
誰よりも大切な彼。誰よりも愛している彼。だからこそ、私だってその行為をしたかった。彼になら、身体を預けても良いと思った。
なのに。いざしようとすると、身体が反応しなくなる。心が彼を拒んでしまう。今までのことが、はっきりと脳裏に浮かんできて、この行為がとてつもなく汚いものに思えてしまう。
――そして、私は彼に別れを告げた。彼が私の為に、我慢してくれた。でも、私はそんな彼を許せなかった。彼を許せない私自身も、許せなかった。耐えきれなかった。
彼に、経緯は伝えていない。ただ、ごめんなさいと、ありがとうを伝えた。もう二度と、私に恋人はできることはないだろう。
私は恋人が作れないと察すると共に、叔父や父親に対して深い恨みを持った。彼が最初で最後の恋人になったというわけだ。




