表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日めくりカレンダー  作者: 流美
11月の日めくりカレンダー
244/294

蝋燭

「ハッピバースデートゥーユー」


「ハッピバースデー、トゥーユー」


「ハッピバースデー、ディア××××」


「ハッピバースデー、トゥーユー」




「ハッピバースデートゥーユー」


「ハッピバースデー、トゥーユー」


「ハッピバースデー、ディア××××」


「ハッピバースデー……」




 頼りない蝋燭の火が、焦点の定まらない瞳に映り込んでいた。


 一定の声量と、一定の感情で同じフレーズを一心不乱に歌う。同時に枯れ枝のような手を叩きあわせ、全く曲と合っていないリズムを取っていた。


 もう時期、死んでしまうだろう。蝋燭の火が消える頃、一緒に命も消えてしまうのかもしれない。きっとそれも、一興だと思っている。


 人は、ここまで壊れるらしい。何の言葉も理解しなくなり、誰も視界に入らなくなる。自分の体の悲鳴は一切遮断され、蝋燭の火の向こうに見える幻想へ、崇拝するように縋っていた。


 壊してしまったのは誰か。それは紛れも無く、殺人犯。狂った性癖の殺人犯が、最愛の人を目の前で無残に殺さなければ、こんなことにはならなかった。死にゆく最愛の人の瞳と、目を合わせなければ、きっと。


 蝋燭の火だけが灯りとなる部屋の鍵を閉めた。正気であればまだしも、あの状態では、大人しく死ぬか部屋の中で最期にひと暴れして死ぬだろう。部屋から出られることは無い。


 自分がここに来ていた、という証拠を残さないように、さりげなく、かつ念入りに辺りを確認して、その場を去った。自分の手が赤黒く染まった日を思い出して、ググッと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ