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限界
どれだけ涙を流しても、止まらない夜があった。
どれだけトイレで吐いても、食欲のない夜があった。
どれだけ耳を塞いでも、何かが煩い夜があった。
もう限界だと悟った。
体の異常を何ヶ月も誤魔化して生きてきた。心の異常を何年も誤魔化して生きてきた。
心も体も、延々とすれ違い、それを独りで抱えて我慢していた。いつか楽になれる筈だと。周りからの頑張れを受け止めて。
だけど、楽になれる方法は、死ぬことしかないと判明した。生きていたら、楽になんかなれない。
せめて「辛い」「助けて」と、誰かに叫べる人間だったら良かったのかもしれない。まだ生きていられたかもしれない。だが生憎、そんな人間とは真逆だった。
迫り来る電車の音を、遠い意識の外で聞きながら、誰かの視界から消える。生きていくのが、あまりにも辛すぎた。




