憧れ
昔から私は、何にでも憧れる性格だった。
人に何かを教えたくて先生に憧れ、本にただ触れていたくて図書館員に憧れ、楽しそうだからダンスに憧れていた。
どれもこれも、きっかけは単純。物を教えるのが得意だったから、とか、上手に思い切り踊ってみたいから、とか。
小学生の作文みたいな、ちっぽけで単純な理由ばかり。それでも、何度も何度も様々なことに憧れて、何にも挑戦せずに成長している。
挑戦してみたら、才能があったかもしれない。可能性はいくらでもある。少し努力すれば一気に上達する可能性。無論、どれだけ努力しても意味がないものもあるだろうけど。
それでも挑戦しなかったのは、結局私に才能は無いと、分かっていたから。
だから何にも挑戦しなかった。憧れているだけで良かった。できないと知っていながらやるよりは、夢を見ているほうが何倍も良い。
そうして生きてきた。今更、何かに挑戦しようとは、思わなかった。ずっとこのままで生きていようと諦めていた。
なのに私、憧れてしまった。 君の隣に、私がいること。夢を見ているくらいじゃ足りないくらい、強く憧れてしまった。
そのせいで私は、人生で初めて、憧れへの挑戦をすることになった。
「好きです」




