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友達
「君があの子と一緒にいるの見ると、嫉妬しちゃう」
髪を後頭部で結ぶ友人は、伏せ目がちに彼女に呟いた。すると彼女は驚いたように目を見開き、嬉しそうに笑う。
「嫉妬とかするんだ。可愛い」
頰をハムスターのように膨らませ、そう言った彼女をじとっと見つめる友人。からかわれている風なのが気に食わないのか、もう、と小さく漏らした。
「うるさい、ばーか」
彼女から視線を逸らす。そんな友人を見て彼女は苦笑を浮かべ、後ろから体を包むように抱き締めた。
「私もね、嫉妬するよ。貴方が他の子と楽しそうに話しているとね」
静かに耳元で告げた。冗談でしょ、とでも言いたげな顔で、それでも彼女のことは振り払わない。女子同士のスキンシップで、ハグなどの密着は慣れていたから。
だから友人の目は笑っていた。
しかし彼女の目は笑っていなかった。
2人は友達だった。




