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役割
どうして、と目の前で泣き崩れている君は叫んだ。僕はごめん、とも、許してくれ、とも言えなかった。
服が汚れることも気にせずに、涙で顔を歪める君の姿は、心底美しいと感じる。無論、どんな姿でも美しいことに変わりはないのだが。
「どうして、貴方はっ……いつもそうなの……!」
どうして、と問われても。僕には僕の感性があるのは当たり前のことだ。それだけだと思うのだが、君は中々理解してくれない。
女性というのは、こんなにもやっかいな生き物なのかと、何度もうんざりした。しかし君だから、永遠に美しいと感じていられる。
「私は……貴方のことなんて、大嫌いよっ!!」
苦しそうだ。そうやって無理矢理言葉を取り繕い、僕にぶつける君は、とても辛そうだ。
そこまでする必要はあるのだろうか。複雑なものである。
「なのに……なのになんで、貴方はこんな私を……美しいと言って愛してくれるの……」
僕の彼女は、情緒不安定で困ったものだ。夜になると毎日僕を嫌い始める。だけどそんな君だって、僕は愛し続けているよ。
「僕には、君を幸せにする役割があるから」




