一話
私、カレン・フォン・オーランシュはたった今、前世の記憶を思い出しちゃったみたいです。いや、マジですって。現に木村加恋だった時の性格にかわってしまい、ただいまオーランシュ家は大混乱のさなかです。私付の侍女にお礼をいっただけで気味悪がられます。・・・自業自得ですねすみません。
さてさて前世では私、木村加恋は女子高校生でした。
死んだ原因は正月の餅です。そうです、お雑煮にはいっているあのお餅です。お餅を侮ってはいけません。あれは私が知る食べ物の中で一番殺傷能力が強いんですよ!実際私死にましたし。
神様は私に同情して、異世界転生をさせてくれたみたいです。うん。正直そんな同情いりませんでしたけどね!!
最初は私も喜びました。死にたかったわけではなかったので。それに、美人っていいな~とか公爵家の一人娘とか嬉しすぎる!とか思ってました。
実際先程言った通り、今の私は美人です。自慢ではなく。まあ7歳ですけど。きめ細やかな白い肌に、艶やかな銀髪。ちょっとつり目できつそうの感じではあるものの、ぱっちりとした二重に長いまつ毛、小ぶりな鼻など、全部品が見事にきちんと整っています。
それに、私が生まれたオーランシュ公爵家はこの国一番の名門中の名門。領地にはたくさんの商人が店を並べており、王都に次ぐ街だといわれています。そんなオーランシュ公爵家は社交界でもまさに注目の的、なのです。
私もそれは純粋に嬉しいですが、さすがに自分の運命に気付いた時のあの衝撃は一生忘れないと思います。もうすでに一度人生終わってますけどね!
なんと、私は悪役令嬢なるものになってしまった様子。それも前世に必死でやり続けた乙女ゲームの、ラスボスに、です。それは確か「魔法の王国~運命の恋と真実の愛~」という題だったはず!
ある王国にわけあって転入してきたユリアは生徒会役員に選ばれる。そこには五人の魅力的な異性がおり、持ち前の明るさと優しさで、攻略対象の心の傷を癒し・・・以下略。全ルートで苛め抜いた私は最終的に死ぬor国外追放&花街で売られて客をとる、らしいです。冗談じゃない。おのれヒロイン許すまじ。実際私としてはカレンの気持ちもわかります。大体常識ですよ、普通婚約者いるやつに媚びうったらいけないのは。婚約者がどこの誰とも知れない女と公衆の面前でいちゃいちゃラブラブしてたら私は軽く半殺しにしますね。でも・・・だからって悪役にしなくていいじゃん神様!
とにかく、異世界にとばされた私は神様を恨もうと思います。