第152話:(なんとか)パーティー結成!
どうやら少しだけ思い違いをしていたようだ。
もう少し安全に配慮している物とばかり思っていたが、やる時はやるようだな。
それとも、危ない様に見えてしっかりと安全に考慮しているのだろうか?
(そこんとこどうなんだ?)
『配置されている魔物は三種類で、事故でもない限りヒノ木の棒でも倒せる位だろうね』
成る程。経験値一のスライム位しか出て来ないって事か。
それはそれで慢心しそうだが、俺が意見する事でもないだろう。
「あくまでもオリエンテーションが目的なので危険性は低いですが、森やダンジョンがどれだけ危険なのかを体験してもらいます」
将来的な事故を減らすために、今の内に危機感を持たせるって事か。
無断でダンジョンやら森に入って、そのまま死んでしまうなんて事も起こりそうだし、前もって体験させておくのは良い手だ。
「他に質問は? ……なさそうですね。今から十分以内にパーティーを組んで下さい。組めなかった際は、此方で決めます」
ハロルドはそこで言葉を区切り、後ろに下がる。
さて、どうしたものか……。
「なあ、どうする?」
「お任せします。私は見ての通り、裏方側の人間ですので。それに、平民でもありますからね」
「それって嫌味か?」
「事実を述べているだけです。それと、選ぶのはなるべく体力がありそうな方をお願いします」
あまり人と話すのは好きでは無いので、任せられる奴が居るなら、任せてしまいたい。
頭を掻きながらシャナトリアは溜息をつき、ふらふらとCクラスの方に歩き出す。
この中には間違いなく、森の中を一日歩くだけの体力を見につけていない奴が居るだろう。
尻拭いとか面倒なので、普通に行って普通に帰って来たい。
「あー、なあ良かったら俺達と組まないか?」
「あー……いや、止めておく。Aクラスでも何の装備もしていない奴と行くのはな……」
シャナトリアは適当に目に付いた奴に話し掛けるが、断られてしまった。
最初の反応は悪くなかったが、俺を見てからそそくさと去っていった。
ふむ。そう見られるか……。
杖位は持って来た方が良かっただろうか?
それともこの場でレイティブアークを召喚でもしてやろうかな?
「……せめて武器を借りて来ないか?」
「正直邪魔なだけなので、持ちたくはないですね。この程度で組まないならば、その程度の人間という事です」
「それを言ったらおしまいな気がするんだが……可愛い面してんのに、何であんなに強いんだよ……」
「それなりの訓練を積んでいますので、それよりも、次です」
再びやれやれとシャナトリアは溜息をつき、違う組に声をかける。
ふと思ったが、武器を作りだす魔法があるので、見た目で判断するのは間違いではないだろうか?
それなりに難しい魔法だが、既に使える生徒もいるはずだ。
情報に精通していれば、俺がAクラスでトップだと分かるはずだが……やはりその程度のクラスということか。
「ふーん……良いわ。組んであげます」
「おし、それじゃあ宜しく頼むな!」
四組目でやっと組むことができ、シャナトリアは喜びの声を上げる。
相手は少し気の強そうな少女と、体躯は悪くない……てか大きいが、気弱そうな少年か。
まあ問題無いだろう。
「俺はシャナトリア。こっちはハルナな。今日は宜しく」
「ええ宜しく。私はキアラ。こっちの大きいのはヴィットリオよ」
とりあえず頭を下げて挨拶をしておく。
ヴィットリオの方はおそらく平民だろう。
体躯は良いが、筋肉の付き方が良いとは言えない。
ボンボンなら太っているだろうし、やる気のある貴族ならばもっとガッチリとしていないとおかしい。
キアラの方は……どうやら教会の関係者みたいだな。
エメリナと同じく、十字架のネックレスを首に掛けている。
髪の色を見るに光属性の魔法が使えそうだが、流石にアントワネットやマフティーよりは下だろう。
まさか神本人が偽って学園に居るなんて事はないだろうし、居たらシルヴィーが気付くだろう。
「装備的に、前衛二の後衛二って感じか」
「私はどちらも出来るけど、その方が念のため良さそうね。一応私は回復も出来るから、何かあったら言ってちょうだい」
サクッと作戦も決まり、これで一先ず安心である。
軽く回りを見ると、四人組になれていない生徒達の方が多く、俺達のように声を掛けている生徒は殆どいない。
これがSクラスやBクラス。或いはもっと下のクラスならば、もう少し纏まりがあるだろうが、まあこんなものか。
「時間になりました。組めた生徒達は私より左に。組めていない生徒は私より右に集まって下さい」
時間になり、ハロルドが生徒達に指示を出す。
四人組になれたのは、俺達を合わせて五組だけか。
六十人中二十人と考えれば、まあ及第点か?
ハロルドとCクラスの担任が残りの生徒達を四人組にしていき、出発の準備が整う。
「それでは出発します。道中は遅れなければ何をしても、何を話していても構いません」
言っていることは昨日のと似ているが、これは罠だろう。
俺達はこの後、自分達だけで森から帰ってくる必要がある。
その準備を行きの間にしておけと、遠回しに言っているのだ。
流石に紙やペンを持ってくる奴はいないだろうが、もしもあれば大きなアドバンテージとなっていただろう。
比較的ゆっくりとしたスペースで歩きだし、森の中へと入っていく。
「あまり整っていないな……」
「舗装されている道では、簡単に帰ることが出来るので、迷いやすい道を選んでいるのでしょう」
「獣道よりはマシだけど……ヴィットリオ」
「はい」
体格の良いヴィットリオが俺達の前へと出て、草木をどけるようにしながら歩く。
位置的に前を歩いている生徒達によって多少マシではあったが、ヴィットリオのおかげで更に歩きやすくなる。
……まあ、魔法を使えばそんな事をしなくても良いのだが。
使っても良いのだが、それをするとこの遠足がただの散歩になりかねない。
俺一人ならばともかく、他人が居る中で楽をするのは人として駄目だろう。
色々とやって来た自覚はあるが、故意に子供の成長を妨げるのは、大人として憚られる。
無論時と場合によるが。
「体格が良いだけあってスゲーな。ありがとな」
「ぼ、僕にはこれ位しか取り柄が無いから……」
「身体が大きいってのは十分才能の一つさ。まあ、才能の塊みたいな奴もいるんだがな……」
「なにか?」
「いや、別に」
シャナトリアが変な目を向けてくるので、空いている口にクッキーを放り投げる。
するとシャナトリアは噎せてから睨んできたが、口の中に何が入ったのか理解したのか、咀嚼の速度を上げた。
「ん。美味いけど、急に投げるんじゃねーよ!」
「美味しいなら良かったです」
「賑やかね……さっきのクッキーだけど、私も貰えたりする?」
「どうぞ。蜂蜜を使っているので、アレルギーがあるなら注意してください」
「それを俺にも言えよ!」
キアラとついでにヴィットリオにもクッキーを渡す。
仮にアレルギー反応が出たとしても、免疫ならどうにか出来るので問題ない。
どこかの誰かも言っていたが、死んでいなければ大抵魔法でどうにかなる。
……まあ汚染魔力の様に、根底から変えられてしまってはどうしようもないけどな。
「このクッキー……本当に美味しいわ。こんなに味わい深い蜂蜜なんて……どこで売ってるの?」
「知り合いのエルフの方から頂いた物なので、産地までは分かりません。おそらく非売品かと」
キアラは残念そうにするが、やはりエルフは便利だな。
とりあえずエルフから貰ったと言っておけば、皆が納得してくれるだろうし、リリアやニーアさんが居るので、言い訳もお手の物だ。
更に言えば、リリアならば呼び寄せる事も出来るし。
蜂蜜クッキーはしっとりとしているので、食べ歩きには普通のクッキーより向いている。
パサパサの奴だと水分を持って行かれるからな。
旅をするとなれば賞味期限の関係で乾燥しているものでなければ駄目だが、この程度の遠足なら大丈夫だ。
「しかし、森と言ってもただ歩くだけってのもなー」
「……」
何も気にして無さそうに歩くシャナトリアを見て、キアラがジト目をする。
これは、この遠足の意味にちゃんと気付いているのかな?
「キアラさんは、ハロルド先生が言っていた事に気付いているのですか?」
「勿論よ。逆に気付いていない人が居るとは思わなかったわ」
そんなキアラの物言いに対して、シャナトリアとヴィットリオは何の事だと言う様に首を傾げる。
まあ、こんなものだろうな。子供なんて。




