まったく、その通り
「?」
わたしはわたしでしかない。言葉遣いどころかマナーも微妙で、外見だって微妙。
何もかも、お姉様とは比較にならないお姉様どころか、社交界に出たばかりのデビュタントにも劣っている。
使用人には侮られ、貴族にはお父様やお母様に疎まれていることが知られ、お姉様のお下がりばかり着ている情けない娘。
お父様やお母様に疎まれていることにすら気付かない、馬鹿な娘。
馬鹿で何もできない、何も持っていないわたしが、伯爵として領地を治めているクラレンス卿に頭を下げさせるなんて、とんでもないことだ。次期当主であるお姉様が全部、正しいってわけではないけど、万一、間違っていても、わたしなんかが謝ってもらうなんて求めちゃいけない人物。
それなのに、なんで、もう謝らなくていいと言ったら、卑下しているって言われるんだろう?
「過ちを犯したのなら、謝るのは当然の行為だ。謝罪を受け取るのに何の資格もいらない。しかし、君は受け取ろうとしていない。受け流しているんだ」
険しい顔でクリフトン卿が言う。
「・・・」
受け取ろうとしていない? 受け流している?
どういうこと?
「謝罪を受け入れ難いなら、受け流してしまえばいい。だが、君は謝罪を受け入れながら、受け流している。君にとって私の謝罪は意味がない、ということだ」
「!!」
違う!!
意味がないなんて思っていない! お父様もお母様もわたしに謝らない。間違っていても、全部わたしが悪いのだと言った。謝ってくれるのは、貴重で・・・。
そんなクリフトン卿の言葉を受け流したりはしていない。
そう思うのに、何故か声が出ない。
クリフトン卿の謝罪には意味があった。
わたしを軽くあしらわない。
蔑ろにしない。
尊重してくれる。
クリフトン卿の謝罪を受け流したりなんかできない。
なのに。
なのに。
声が出ない。
どうして、そんなふうに受け取られるんだろう?
なんで?
なんで?
頭ごなしに言われなくて嬉しかったのに。
なんで、そんな風に言うの?
ブライアンが溜め息を吐いて言った。
「あのよ、クラレンス。こいつには悪気なんてねーよ。ただ、馬鹿なんだよ」
「ば、馬鹿?!」
聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、わたしはブライアンに抗議しようとした。
けど、続くブライアンの言葉に黙った。
「長女至上主義でいらない子扱いされてたのだって、さっきまで気付かなかったんだぜ?」
「・・・」
そう言われてしまうと、反論の余地がない。わたしもさっき、家を出かける時まで気付かなかったのだ。
お母様に面と向かって、『いらない子』だと言われた。言われるまで、気付かなかった。
「お姉様至上主義に洗脳されて、毒親でも毒親だってわからねー、かわいそーな子なのさ」
「・・・」
まったく、その通りで何も言えない。
あんなにもユージェニーやマーゴも言っていたのに、気付かなかった馬鹿はわたしです。
「お前のこと、蔑ろにしたんじゃなくて、自己肯定感が低すぎて卑下すんのが当たり前なんだよ」
「?」
ブライアンがまたわからないことを言ってきた。
卑下って、なんなの?
そうは思っても、可哀そうだと気付かなかった馬鹿な子なので黙っておいた。
だって、また何か気付いていなかったことを自分でバラすなんて、余計に馬鹿だと思われてしまう。
そんなわたしの気持ちを察したわけではないけど、ブライアンとクラレンス卿の間で話が続く。
「それをどうにかしようとしているんだ」
「責めているようにしか聞こえねーよ」
まったく、その通り。
責められているようにしか聞こえなかった。




