ともになりたい
ライガはミヤビを探した。
彼女は店の中にはいなかった。
店の外に出て辺りを見渡したがいない。
気持がもやもやして、どうしても彼女と話したくなった。
ミラのことを考えた時、どうしても後ろめたさがあるのだ。
それはミヤビに対してではない。ミラに対して、ミヤビと話をしていないことについてだ。
「…そういえば…」
ライガは以前、店で飲んだ時に自分が雑貨屋に向かったことを、その時にミヤビが探してきたことを…
ライガは気が付いたらその雑貨屋に向かっていた。
夜独特の町の雰囲気を感じながらライガは何となく確信を持って辺りを見渡した。
「…あ」
以前髪飾りを買った店は閉まっていた。
だが、その前にはミヤビが立っていた。
「…」
ミヤビは何も言わず、ライガを見た。
「…えっと、ミヤビ…」
ライガは何を言っていいのか分からず、言葉を探した。
あんなに話さないといけないと考えていたのに、言葉が出てこない。
「…あの髪飾り…買ったの?」
「え?」
「この前見ていた、白い花の髪飾り…買ったの?」
ミヤビはライガをじっと見つめていた。
「…うん…」
「…それは、好きな人に買ったんだね。」
ミヤビは悲しそうに笑った。
「…うん…」
「それは…私じゃないんだね…」
ミヤビは悲しそうに言った。
「…うん…」
ライガの返事を聞いて、ミヤビは泣きそうな顔になった。
「…ごめん。」
「謝んないでよ…」
ミヤビは涙声で言った。
「…でも、俺はミヤビの気持ちに応えられない…」
ライガはミヤビに向かって頭を下げた。
「…ずっと一緒にいたから、自然に一緒になると思っていた。」
「…ごめん。」
「だから謝んないでよ」
ミヤビはライガの頭を叩いた。
ライガは微かな痛みに目を細めたが、すぐにミヤビに視線を向けた。
「…私じゃ、ダメなの?」
ミヤビはやはり悲しそうにライガを見ている。
「ごめん。…彼女じゃないとダメなんだ…」
ライガははっきりと言った。
「だから…謝んないでよ。」
ミヤビは呆れたように笑った。その目には涙が見えている。
その様子を見てライガは何か声をかけようとしたが、何を言っていいのか分からない上に、また謝りそうだったから黙った。
「私…ライガが好き。」
ミヤビは絞り出すような声で言った。
「…ミヤビのことは、信頼できる仲間…だと…」
「わかっている。…私がライガに向ける好きと、ライガが私に向ける好きは…かみ合わないものだって…」
ミヤビは少し諦めたような、投げやりな口調だった。
そんなミヤビを見ていると胸が痛み、ライガは何か出来るわけではないが、手を伸ばそうとした。
そんなライガの手をミヤビは振り払った。
「…ごめん…、ちょっと一人にして…」
ミヤビは俯いて手で顔を隠して言った。
ライガはまた彼女に何か言おうとしたが、同じく謝りそうだったから黙った。
そして、ミヤビの言う通り、彼女を一人にして酒場へ向かった。
酒場近くの道に入った時…
「…モテる男だね…」
冷やかすような声が聞こえた。
その声にライガは舌打ちをした。
「こわいこわい。でも、心残りを減らすというのはいいと思うぞ。」
壁の向こう側から聞こえる声は、ライガを誘うアシの声だ。
「楽しんでいるんだな…」
「まあな。娯楽が欲しいからな。」
アシはどこまでも楽しそうに冷やかすようだった。
彼の声は聞こえるが、ライガは気配を察することができなかった。
見ているぞ…と示しているのだろう。
事実、ライガは少し萎縮している。
「…まあ、楽しめよ。」
姿は見えないが、アシはきっと笑いながら言っている。
ライガはアシに返事をすることなく、急ぐように酒場に戻った。




