髪飾り
結末1の犠牲や悲劇や激情は全てなかったことに。(人間性や潜在意識は別です。)
第一章の出来事と、結末1で語られた過去の話だけが生きる、優しい世界です。
黒幕も陰謀も忘れてみんなで楽しく皇国へ逃亡からの各国放浪をダラダラしていくお話です。
ご都合主義の、ギャグ展開。
思わせぶりBLから、多少のBL描写もありますので、ご了承ください。
ライガはミラのことしか考えていなくて、ミラは穏やかにライガのことしか考えていないけど天真爛漫。
ジンはヒロキに超過保護で、ヒロキは自由気ままに過ごして、マルコムは強い奴と戦いたくてうずうずして戦うとわくわくする脳筋で、ミヤビはカオス状態の精鋭や同期は自分がどうにかして面倒見ないといけないという義務感で常識人に、アランとリランはより一層頭が軽くなり、サンズは少女趣味アンド恋愛小説大好きなロマンチストで、アレックスはひたすら頭痛と胃痛と戦う。
誰も死んでおらず、みんなが思いやりを持っているため、人格崩壊は起きていません。
そんな彼らが帝国も騎士団も無視して、ストーカーと化した皇国の襲撃犯や責任感を始めたとした現実から仲良く逃げるお話です。
皇国の人たちは、アシはヒロキのストーカーと化し、イシュはミヤビに憧れて、シューラはそんな二人に振り回されながらもマルコムとの再戦の機会を虎視眈々と窺っている。
平和な世界ですが、ほどほどの乱闘や血なまぐささはあります。
ミラの目が潰されるという話は全く出てこなかった。
意図的に隠しているのはわかった。
流石に騎士団もそんな儀式の守りに付きたくない。
ライガもミラには言わなかった。
彼女の目に不安が浮かぶのが嫌だった。
自分以外の者のせいで、彼女の目に何かが浮かぶのが嫌だった。
「警備は精鋭には王族とお宝様を守ってもらう。」
団長であるジンが王都にいる騎士団全員を見渡して言った。
「当日はアレックスが代理で代表だ。俺は王族の席につく。ヒロキは剣舞を任せられている。…せいぜい俺たちを守ってくれ。」
ジンは口元に笑みを浮かべた。
こんな人間的な笑みを浮かべる彼を、他の団員たちは見たことが無かった。
説明が終わるとあちこちで団長の笑みの話が出ていた。
「ヒロキさんが剣舞ですか。絶対に綺麗ですよね。」
アレックスは羨ましそうにヒロキを見ていた。
「せいぜい期待しないでくれよ。」
ヒロキは謙遜するように言うと、ライガを見た。
ライガはヒロキの諦めたような目が、自分のやろうとしていることを察している気がした。
何で彼に質問してしまったのだろう。
今更ながら少し後悔した。
「珍しいわよね。お宝様が出て来るなんて。」
いつもの王都巡回でミヤビが声をかけてきた。
「そうだな。」
ライガはいつも通りにミヤビに返事をした。
「可哀そうだものね。せっかく綺麗な子なのにあんな糞みたいな王子に…」
ミヤビはあくまでも日常の会話の一つとして言っていた。
「そうだな。」
ライガはミラと逃げることをで頭が一杯だった。
おそらく逃げることを考えていなかったら、ミヤビのこの話題に突っかかりかねない。
「そうそう。今日の団長の様子いつもと違ったわよね。」
ミヤビもどうやらジンの様子について気になったようだ。
「そうだな。何か、人間になった…って感じだった。」
ライガは思ったことをそのまま言った。
人間的…もしかして、ヒロキとの関係から考えると…ジンはライガのやろうとしていることを察しているのではないかと考えた。
それなら、王族であり、精鋭の隊長である彼は、他の者達に言っているのかもしれない。
ライガは探るようにミヤビを見た。
ミヤビは可笑しそうに笑っていた。
その表情からは、ライガのやろうとしていることを察していない様子だった。
ミヤビにはいつ、あの白い髪飾りのことを聞かれるかわからないから、出来れば二人きりにはなりたくなかったが、もし、他に察している人がいるならそれとこそ一緒になりたくない。
巡回しながら、他の騎士の様子を察せられないかと探していた。
「ねえ、ライガ。今度さ。ご飯でも行かない?」
ミヤビはなにやら緊張しているのか、ぎこちなく言った。
「いつも行ってるだろ?そんな改めなくても…」
ライガはミヤビに答えながら他の騎士を見つけた。
アランとリランだ。
向こうもこっちに気付いたようで、満面の笑みで向かってくる。
巡回中だから、この双子の様子を団長に言うと説教ものだ。
「お二人さん!!」
「美女とイケメン!!」
アランとリランは何やら囃し立てている。
「よう。赤蠅」
ライガは二人の様子に何となく安心した。
「「だからそれやめろ!!」」
双子は声を合わせて言った。
ミヤビは少しがっかりしたような顔をしていた。
「さっき、団長の話をしていたんだけど、二人はどう思った?」
ライガはミヤビと先ほど団長が人間になったということ話していたと言った。
「やっぱり?そう思った?」
リランは同意しているのか、頭を激しく振りながら言った。
「鬼の目にも涙というからね。」
アランもリランと同じように激しく頭を振りながら言った。
「ちょっとお、団長の目は隠れているから涙わからないよー」
リランは芝居がかった仕草でアランに言った。
「あ!!そうだった。じゃあ、鼻水!!」
アランも芝居がかった仕草で言った。
「よだれ!!」
リランはアランに続いて言った。
「どうでもいいが、これ、聞かれると説教どころじゃないと思うよ。」
双子の後ろにマルコムが立っていた。
「マルコムじゃないかー。こんな時だけいい子ぶりやがって。」
アランは後ろのマルコムに突っかかるように言った。
「いい子だから。」
マルコムは笑顔で返した。
「聞いてくださーい!!王都の皆さん!!マルコムは普段めっちゃ団長の悪口を言っています!!」
リランはマルコムを指差して大声で言った。
「おい!!ちょっと、これはやばいって。」
ライガは流石にこれは団長の耳に入ると思い、三人を宥めるように言った。
「非力双子が、いきがるな。」
マルコムは双子を睨んで言った。
「隠れムキムキが!!」
アランは威嚇するようにマルコムを見た。
「ちょっと!!三人とも!!団長の耳に入るって!!」
ミヤビも三人を宥めるように言った。
「もう手遅れだ。」
低い声が響いた。
流石に五人とも動きを止めた。
五人はゆっくりと声の元を見た。
「珍しく王都に出てみると…俺の話が聞こえてな。」
そこには団長であるジンが青筋を立てて立っていた。
「「お疲れ様です!!団長!!」」
アランとリランは、姿勢を正して礼をした。彼等のこういう時の切り換えの速さは尊敬に値する。
「お疲れさまです。」
マルコムは半ばあきらめたような表情だった。
「三人は、後で俺のところに来るといいだろう。」
ジンはいつもと同じような笑みを口元に浮かべて言った。
彼等の様子を見ると、ライガのやろうとしていることを察しているのか怪しい気がしてきた。もしかして自分の思い過ごしだったのではと思って、ライガは少し安心した。
「団長!!ライガが団長がやっと人間になったって言っていました!!」
リランは慌てるように言った。
「はあ?」
ライガは思いがけない流れ弾を食らった気がした。
安心したところにそんなことだから間抜けな声が出た。
「じゃあ、お前もだ。」
ジンは呆れたように付け加えた。
思いがけない流れ弾を食らったと思いながらも巡回をミヤビと続け、路地の壁に寄りかかり、人目のないところで休憩を取った。
「はあ。」
ジンのことや双子とマルコムのことでライガが溜息をつくと、ミヤビは面白そうに笑った。
「笑うなよ…」
「だって、とばっちり過ぎて…気の毒だもの…」
「いや、だから笑うなよな…」
気の毒なら笑わないで欲しいと思いながらも、ミヤビのいつものと変わらない様子に安心していた。
「さっきの話…」
ミヤビは声色を変えた。
「え?」
「今度ご飯行こうって…二人でってことなの。」
ミヤビは少し俯いて、照れくさそうにライガを見上げた。
「二人…」
ライガは祭典までの期間を考えた。
不可能ではないが、ミヤビと二人でご飯に行くことがミラに対して後ろめたい気がした。
彼女はミヤビと自分の仲を気にしていた。
「それは…」
「白い花の髪飾り…」
「え?」
ライガは急に言われたことに驚いた。
そうだった。ミヤビはその髪飾りを気にしていた。
それを避けていたはずだが、ジンとヒロキの様子に気を取られて忘れていた。
「誰にあげたの?」
ミヤビは泣きそうな顔をしていた。
「誰って…」
「…ライガは、誰か好きな人がいるの…?」
ミヤビは声を震わせていた。
いる
ミラだ。
ライガは心の中で叫んだ。
しかし、それを口に出すことは出来ない。
ミヤビから目を逸らしながらライガは頷いた。
その反応はとても不誠実なものだと思ったが、下手に勘繰られるのを避けたかった。
「…私は?」
「え?」
予想外の言葉が出てライガは間抜けな声を上げた。
ライガの声を聞いてミヤビは顔を歪めた。
「…なにそれ。眼中にないって…反応だ…」
ミヤビはとても悲しそうな顔をしていた。
「ミヤビ…それって、どういう…」
ライガが聞こうとして手を伸ばしたが、ミヤビはライガから離れた。
「あ…おい!!」
ミヤビは走って、去って行ってしまった。
「どういう…ことだ?」
ライガはポカンとして一人、ミヤビの後姿を見送った。
「罪だねー。イケメン君。」
後ろの壁から声がした。
「…お前はアシ。」
ライガは声の主を思い浮かべて咄嗟に構えようとした。
「バカ。止めろ。怪しまれる。」
アシはライガを制した。
しかし、壁越しだと顔も分からない。
「お宝様と逃げるのに、今のままだと厄介になりそうだな…」
「彼女は同期だ。」
「馬鹿だな。あれはお前のことが好きなんだろ。見ればわかる。」
アシは揶揄うように笑っていた。
「え?」
「女の嫉妬は怖いぞ。まあ、男も怖いがな…」
「ミヤビが…」
ライガは考えたことも無かったことに、呆然とした。
「それよりも、見たことないから団長ってのを見てみようと思ったんだ。運よく王都に出てくれたが、あれがお前の言う強い男か?」
アシはどうやら先ほど町に出て来ていたジンを見たようだ。
「言いたければ言えばいい。」
「裏切れるのか?お前は。」
「お前に関係ない。」
ライガはアシの言葉を振り払うように首を振った。
「だって、さっきの女にしても、お前団長に俺のこと言っていないだろ?…裏切らないなら報告して俺らは終わっている。」
アシは可笑しそうに言っていた。
「もしそうだとしても、お前に協力するとは限らない。」
「じゃあ、お前はどうやって逃げるつもりだ?俺らの協力なしで。」
アシの言葉にライガは黙った。
そうだ、逃げる方法は無い。
無謀なのだ。
ミラと一緒に死ぬか、自分だけ死ぬかの結果になる。
あれ?
ヒロキはライガのやろうとしていることを察しているはずだ。
彼はそこまで鈍くないはずだ。
ジンにも伝わっているはずだが、彼は精鋭に言っていない。
今は、二人の中の情報でしかないはずだ。
もしかすると…協力してもらえるかもしれない。
察しているのなら、対策を取られるか上に報告されるだけだ。
先ほどのミヤビの様子を見ると、彼女に協力は頼めない。
「それとも、逃げるために大量殺人をするか?」
「やるわけないだろ!!」
急に掛けられた言葉にライガは声を荒げた。
それに、そんなことをしたらミラが悲しむ。
思った以上に声が大きかったのか、通行人たちがライガを見た。
「大声で言うな。だから壁越しなんだ。」
「…お前は警備のことを知りたいのか?」
「…いや、わかるのは警備についている精鋭の場所だけでいい。他の騎士は有象無象だ。」
アシは嘲るように笑っていた。
精鋭以外は有象無象…
そうだ。精鋭を抑えられればいいのだ。
もし、見逃してもらえることができれば…
ライガ:
帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと想い合っており、彼女と逃げることを決意した。父が前騎士団団長。
ミラ:
「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガと思い合っており、彼と逃げることを決意した。
ジン:
帝国騎士団団長。最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。王族の人間。
ヒロキ:
帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。元皇国の人間。前団長に拾われた。
マルコム:
精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。地方貴族の出。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で、サンズに継ぐほどの力がある。
ミヤビ:
精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。ライガに何か想いがある。
アラン:
精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。弟。
リラン:
精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。兄。
サンズ:
精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。貴族の出。精鋭では数少ない戦場経験者。
アレックス
精鋭部隊の一員。ライガの先輩。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。サンズ同様に戦場経験者。
アシ:
隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。
イシュ:
隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。
シューラ:
隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。




