親友の告白
逃げると決めた。
だが、それに対しての不安はある。
ミヤビとは気まずいし、ジンに対しての不安が大きい。
勘付かれないように対策を取られているのかもしれない。
もし、そうならどうしようと思いながらも、今の状況を心地よいと思っている。
精鋭の皆と少しでも長く仲間でいたいと思っているのは間違いない。
だが、一刻も早くミラと一緒になりたいとも思っている。
両立することのないものだが、どっちも選んでいない今が心地よい。
流石にミヤビは仕事に持ち込まないが、今までの同期同士のような感覚はない。
「どうしたの?ライガ。」
筋トレを終えたマルコムが、湯気を頭から上げながら近寄ってきた。
汗臭そうだと思う場面だが、筋肉馬鹿でもマルコムは不思議と臭くない!!…といわれている。
ただ、湯気を上げているのは暑苦しい。
「…すごいな…」
「え?ああ。だって、あのくそ双子を絞め…修行に付き合うのは中々楽しいからね。」
マルコムは暑そうに鎧を脱いだ。
鎧を着ていると分からないが、やはりすさまじい筋肉だった。
ライガも鍛えているが、マルコムのそれは違った。
見た目で分かる狂暴性。
「ミヤビと…どうしたの?」
「え?」
「俺、君たちの同期だし…こう見えて、ミヤビとはいい友達だから」
マルコムは君もだよ、と笑いながら言っていたが、目は真剣だった。
ライガは言っていいのかわからなかったが、ミヤビのことを自分よりもマルコムの方が分かっているのは確かだ。
「…ミヤビがおかしいんだ。」
ライガはミヤビに言われてことをマルコムに話した。
マルコムは驚いた顔をしたが、直ぐに顔を顰めた。
「どうした?」
「いや…、ライガさ…何かあるの?」
マルコムはライガを探る様に見ている。
「何かって…どうして?」
「ここまでされたならわかっていると思うけど、ミヤビは君のことを好きだよ。」
アシにも言われたことだ。
そうだと知っていたとしても、仲のいいマルコムに言われるのでは現実味が違う。
「俺は…彼女をそう見れない。」
マルコムはライガを見て何かに気付いたようだ。
「君…他にいるんだね。」
「え?」
「君は、感情面に関しては鈍感で、俺よりもずっと穏やかだ。…相手がいないなら、もっと濁す。けれど、君は…ミヤビを拒絶している。言葉は柔らかくしても、態度では顕著だよ。」
マルコムは頭から湯気上げながら、鎧の下を脱いでいた。
マルコムの言うことは勿論当たっている。
彼はやはり鋭いし、ライガのことをよくわかっている。
「…マルコムは、俺とミヤビにくっついて欲しいのか?」
「まさか?…俺とミヤビもライバルだよ。」
マルコムは笑顔でサラッと言った。
「そうなのか…って、えええ!?」
ライガもサラッと流しそうになったが、彼がとてつもないことを言っているのに気付いたライガは飛び上がった。
「変な意味に捉えないで欲しいよ。俺は、ライガを尊敬しているし、色んな方面と角度、要素から見て君のことが好きだよ。」
「ええ…うーん」
「俺は、ライガの隣に立っていたいってことだよ。友人とか相棒とか、君に頼られる位置にいたいんだ。」
マルコムは笑顔でライガを見ていた。
マルコムとミヤビは同期だ。
ミヤビは別として、彼は男同士だ。
頼られる位置にいたい…
マルコムを頼ることは、してもいいのだろうか…
「…なあ、マ…」
ライガが言いかけた時
バタン
と勢いよく詰め所の扉が開かれた。
「飲みに行こうぜ。」
ヒロキが楽しそうに飛び跳ねながらやってきた。
詰め所に精鋭は、マルコムにボコボコにされた双子と、難しい顔で何やら話し込んでいるアレックスとサンズ、そしてなにやら他の騎士たちに何かの説明をして居るジンがいがいる。
ミヤビは見あたらない。
「ヒロキさん。珍しいですね。」
マルコムが驚いたようにヒロキを見た。
弾け過ぎが珍しいのではなく、飲みに誘うのが珍しいのだ。
「いいだろ。お前らは全員参加な。」
ヒロキはマルコム、双子、アレックス、サンズを指した。
そして
「お前もだからな。ライガ。」
ヒロキはライガを見て言った。
「…は、はい。」
ライガは何故かわからないが、姿勢を正して返事をした。
ヒロキはミヤビを探しているのか、部屋中をきょろきょろと見渡していた。
「でもいつもならヒロキさんは自分から誘うことないですよね。俺らが誘っても、いっつも団長と飲んでいて、来ない時が多いですよね。」
サンズは何やら含みを持たせたような言い方をしていた。
「そう言うなよ。お前の言う通り、いつも包帯の変態野郎と飲んでいるんだ。たまには可愛い部下と飲みたいと思ってもいいだろ?」
ヒロキは自分よりも背の高いアレックスの頭を撫でた。
「俺は包帯の変態野郎とは言っていないです。」
サンズは訂正するように言った。
「じゃあ、ヒロキさんのおごりで。」
アレックスはしめたという表情をしていた。
「いい財布がいる。」
ヒロキはにやりと笑った。
「…まさか、ヒロキさん。」
マルコムは彼のやろうとしていることに気付いたのか、顔を青くした。
「団長!!」
ヒロキは詰め所の別の場所で、他の団員と話しているジンを呼んだ。
「…お前、今俺を財布と言ったな?」
ジンは聞こえていたようで、多少の青筋を立てていた。
彼と話していた団員は顔が真っ青だった。
「ヒロキさん。まさか…おい、嘘だろ?」
サンズの顔がどんどん青ざめてく。
「いいじゃねーか。サンズ。お前団長と腕相撲したいって言っていただろ。」
アレックスも顔が青かった。
「ぼくちゃんたちも逃げるなよ。」
ヒロキはなにやら打ち合わせしている双子を見て言った。
「「…はーい」」
アランとリランは沈んだ声で応えた。
ヒロキはミヤビが見当たらないのが気になったのか、マルコムを呼んでどこにいるのか聞いていた。
その様子を見てライガは何とも言えない罪悪感を覚えた。
ライガ:
主人公。帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。ミラと深く愛し合っており、彼女が絡むことには若干頭に血が上りやすい。ミラのことしか考えていない。ミラミラミラミラ
父が前騎士団団長で行方不明。
ミラ:
ヒロイン。「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっていた。ライガと深く愛し合っている。外の世界に憧れて、見るものすべてに新鮮さを感じる。天真爛漫で穏やか。
ジン:
帝国騎士団団長。歴代最強と言われた前騎士団団長であるライガの父を決闘で破り、最年少で団長に就く。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。剣の腕はまさに帝国一と言われるほどである。副団長のヒロキに精神的に依存していて超過保護。
ヒロキ:
帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。女性顔負けの端麗な容姿で女性に間違われることもある。ジンとは付き合いが長い。流れるような剣術で他の騎士に比べて非力だが、目の良さと器用さがあり、確かな実力を持っている。作中一番の美人設定。皇国の元大臣の息子。
ミヤビ:
精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。剣の腕は他の精鋭に比べると劣るが、弓の名手。ライガに片思いをしている。
マルコム(マルコム・トリ・デ・ブロック):
精鋭部隊の一員。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な顔立ちをしている。国境の貴族ブロック伯爵の息子。槍使いで、顔からは想像し難いほど筋肉質で高い身体能力を持っており誇っている。強い人が好きで、それと戦うのも好き。脳筋。
アレックス
精鋭部隊の一員。ライガの先輩。ジンの代理で全体の指揮を任さる。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。普段の生活態度とは違い、堅実で手堅い戦い方をする。また、派手な様子からは察せられないほどの苦労人。サンズ同様に戦場経験者。精鋭の困った奴らを面倒見ないといけないと使命感を持ち、彼が面倒を見ないといけない。
サンズ(サンズ・デ・フロレンス):
精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。見た目通り力が強く、騎士団一の怪力を誇る。王都の貴族で父が公爵だが階級意識が無い騎士団を好む。先輩のアレックスと親友。精鋭では数少ない戦場経験者。少女趣味のセンスで、家庭的なことに憧れるが、料理も裁縫もセンスは壊滅。恋愛小説を好み、文学青年でロマンチスト。
リラン:
精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。アランと二人で「赤蠅」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。うるさい。兄。
アラン:
精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。リランと二人で「赤蠅」と呼ばれるほど戦いにくいと騎士団内で有名。うるさい。弟。
アシ:
隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。大きい目と大きい鼻が特徴的な顔の造りをしている。小刀を使う。
イシュ:
隣国の皇国の者。黒髪と褐色の肌、グレーの目をしている。彫が深く、目が細く鋭い。弓を使う。
シューラ:
隣国の皇国の者。白い髪と赤い目をしている。牙のような八重歯が特徴的。長い刀を使う。




