早速面倒事です
「で、何ですかお義母さん」
私はソファーに座った。
「これを見て欲しいのー」
お義母さんは私の正面に座った。相も変わらず背が低くい。もうちょっと座高の高いソファーを買えば良かったのに。
ポッイと机に置いたのはパンフレットだった。
「何々……これは学校のパンフレット?……コレ、あの有名なレイシン学園のパンフレットじゃないですか」
――レイシン学園
それはありとあらゆる国の子供達が通う国一番のマンモス校である。
科学や魔法学を特に力を入れており、学びたい意思さえあれば奨学金を無償に支給される。しかも学園内で親や家の権力は関係なく、平等に生徒を指導している。
上はどこぞの王家のご子息から下はスラム出身の生徒まで様々な地位の人がいる。ありとあらゆる価値観の人と交流しながら、質の高い授業を受けた卒業生は一流魔導士や科学者達が生まれている。そのおかげでレイシン学園は国一番の人気学校だ。
「私の旧友がここの理事長なのよー」
「へー」
義母さんの旧友なら相当の年寄りかもしれない。
「その人によると学園に推薦制て言うのがあって、今までの功績と誰かの推薦で受験をしなくても入学できるて」
そう言うとお義母さんはまるで悪だくみを考えている子供の様な笑顔になった。
「…………それが私と何の関係あるのですか」
「レイシン学園にカランちゃんの功績と私の推薦状を送ったら一発で受かったよ」
満面の笑顔のお義母さんの手には私の履歴書と合格通じが握っていた。
「……………………………………ハッああああああああああああアアアアアアアアアア!!!!!?????」
一瞬、頭をフリーズしたが内容を理解すると立ち上がり、盛大に叫んだ。
「まあまあ、落ち着いて」
「落ち着けますか!!」
やっと出た言葉を叫ぶと、息をゼェゼェと吐きとソファーに座り、思わず片手で顔を覆った。本人の了承せずに許可書を出すとかバッカじゃないの!?
「何で応募したのですか?」
「カランちゃんも十六歳になるじゃない? せっかくの青春を学校に行かしてあげたいなーと思って」
「私のサインは?」
「前書いてもらった大量の書類の中に入れたの」
「……」
ある日、明らかに自分の仕事ではない物まで私に押し付けてきた日があった。あまりの書類の量に殆ど内容を確認せず、事務的にサインし続けていた時があった。あの時めんどくさくても良く内容を確認すれば良かった。心からそう思う。
「入学式は再来月だから。制服は私の友達がやってる洋服屋に頼んであるから今日中に行ってね。学校用品は入学式に販売するそうよ。これが服屋の住所」
机に置かれたメモを見ると服屋はギルドから相当距離が離れていた。……一端帰って白露に乗せてもらうか。
「あとは何かありますか?」
「特にないよ~」
「それじゃ、いろいろ準備しなくてはいけないので失礼します」
「うん。頑張ってこい!」
アイニアが敬礼する姿をを若干イラッとした私は少し乱暴にドアを閉めた。
ドアが閉まるのを確認したあと、アイニアは自分の席に座った。
「うんしょ」
……正確にはよじ登ったあと座ったのだが。
「良いのですか?」
アイニアの背後から霧の様にインテリの女性が突然現れた。
「何が?」
「あの子に学校に行かせるなんて」
インテリの女性、セレスティア・アレントは眼鏡を掛け直した。
「うーん。まあね」
アイニアは疲れた様に背もたれにもたれた。
「確かに学園内なら彼女は大丈夫でしょう。しかし貴女もご存知でしょう? 卒業後の悲劇は他よりも惨い事は貴女が誰よりも知っているでしょう? ……私達だけで十分じゃないですか」
そこまで神妙に聞くとアイニアはセレスの方を向いた。
「……分かってる」
「でしたら」
「それでも!!」
セレスの声を遮りアイニアは席から立って窓辺へと近づいた。
「……この世の中一人でもどうにか出来ない事でも仲間がいればどうにかなることができるの。昔の私がそう気付くのは相当時間がかかったけど。それに」
アイニアは立ち上がり暖炉の近くに近寄った。そして暖炉の上に置いてあった写真立てを取った。
「…………それが彼の願いだと思うから」
そう呟くアイニアの顔は寂しく悲しげな顔だった。その顔と写真に気付くとセレスは黙った。それからため息を出した。
「……ギルドマスターの命令は従います。これからゆっくりと見守りましょう」
そう言ってセレスは傅いた。
「うん。ありがとうセレス」
アイニアはくしゃくしゃな笑顔をセレスに向けた。