私の家族を紹介します
―グローデア王国の古びた商店街―
私は寂れた商店街の中を歩き続けた。
ここは寂れているがなかなか面白い商品が売ってあるから、人がまばらにいる。静けさはあるが、静かすぎてはいない所が好きだ。
商店街を通りすぎると目の前に小さなマンションがあった。
ここは小さいからエレベーターがないのが少し不便だが、まわりが静かで部屋が広く防犯も完備している。
階段を登り最上階に着いた。最上階の角に私達の部屋がある。
家のカギである指紋と虹彩のチェックをした。
『カラン・アンソニー氏と認識しました』
機械的な声がしたあとロックが開く音がした。
「ただいま~」
私はそのまま靴を脱いだ。台所から誰かが飛び出してきた。
「おっかえりなさ~い♪」
そのまま私に飛び付いてきた。飛び付いてきたのは五歳の可愛らしい男の子だ。
「ただいま吹雪」
私はさっきまでの陰気な気持ちから、心を暖かくなって、微笑みながら吹雪の柔らかい銀色の髪を撫でた。
吹雪は嬉しそうに赤色の目を細めていた。
「お帰りなさいカラン様」
また一人誰かが台所から出てきた。
出てきたのは驚くほど美しい青年だった。
白銀の腰近くある長い髪。女の私が思わず嫉妬するぐらいのサラサラヘアーだ。
碧眼の切れ目がより青年の美しさを際立っている。服は中華風と洋風が足したような水色と白の服だった。それすら青年のミステリアスな雰囲気に合っていた。
……その服の上にエプロンと鍋を掴んでいたが、それでも美しい。
「ただいま白露。今日のご飯は?」
「ハヤシライスですが、夕飯の時間までまだありますので出かけるのなら今ですよ」
「……義母さんから聞いたの?」
「いえ、先程セレス様から連絡がありまして」
ホント、セレスさんは頼りにしてるよ。
「それじゃ私は服を着替えるから準備お願いね。吹雪も今日はちょと寒いから暖かい格好にしなさいね」
「はーい」
「あとコレが目的地の地図」
白露に義母さんがくれた地図を渡した。
「……少々遠いですが、帰りを飛ばしていけば夕飯の時間には間に合いますね」
「それじゃ着替えてくるわね」
私はそのまま自分の部屋に入った。
私達はマンションの玄関に立っていた。今日は昼までに雨が降った影響で寒かった。
そのため私や吹雪はマフラーやコートなどで温かくしていたが、白露はいつもの姿だ。
「白露は寒くないの~?」
吹雪はそんな白露の格好を心配した。
しかし当の本人はクスッと笑っただけだ。
「吹雪様お忘れですか?私の真の姿を」
「・・・・・・ああ。そうだったね。忘れてた」
吹雪はすっかり忘れてたようだ。この美男子の真の姿を。
「それではやりますよ」
白露はそのまま目を瞑った。すると眩い光が白露を包んだ。
眩い光が消えるとソコにいたのは。
二メートルはある大きな狼がいた。銀色の毛に王者の風格を漂わせる顔。
『お忘れ物はありませんか?』
金色の眼を持つ狼から声が聞こえた。その声は狼と入れ替わっていなくなった白露の声だった。
「サイフもケータイもカギも持った」
ポケットから私が言ったのを取り出した。
『それでは出発しますね。二人共しっかり捕まってくださいね』
「はいはい」
「ワーイ!白露に乗るのは久しぶりだ~」
私や吹雪はそのまま狼の背中に乗った。
私達が背中に乗ったのを確認してそのまま天高く飛んだ。
まるで地面を蹴るように空気を、時に屋根を蹴って優雅に飛んでいた。
白露は気高い種族と言われているワーウルフ族の王だ。
そして私、カラン・アンソニーの頼もしい相棒である。
白露との出会いは長くなるので簡潔に話すと。
私が昔いた屋敷から飛ばしたのはある森だった。屋敷にあった本によると、その森はスライムなどの低レベルの魔物しか居らず、近くに街があったから私にとって腕試しに立ち寄っただけ。ヤバイ魔物がいない安全な森だから選んだのに。
……なのに着いた先で二メートルもある狼に出会ってみろ。しかも大きな口開けて襲われてみろ。恐怖のあまり気絶しちゃったよ。
で、気がつくとベッドの上で寝ていて横には美男子がいた。で、その美男子が最初に発した言葉が。
『私を貴女様の下僕にしてください!!』
・・・・・・美男子に土下座された、あの時ほど引いたことはないなー。
最初は分かんなかったけど その美男子がさっき襲った狼で、名前が白露て名乗って、ここは王国の城の中とか情報量が多すぎてもう一度倒れたのが今となっては良い思いでだ。
まあ、何で白露が私を主に選んだのか、気絶した時何があったか解らないけど。だれも教えてくれないし。
「お母さんどうしたの?」
吹雪が私の顔を見上げた。
「う~んちょと状況整理」
「?」
吹雪は頭を傾げてしまった。
ちなみこの子は吹雪。私の大切な家族の一人。訳あって私が赤ちゃんの頃から育てることになったけど。
・・・・・・ホントイイコ。ホント天使。
何度この子の言動に白露と二人で悶えたことか。育児は大変だけど、改めて母親の大変さと偉大さをみにしみた。それをチャラにするくらい可愛くて可愛くてそしてお利口さんで。
とりあえず「吹雪は誰の嫁にやらん!!」と宣言したら「そこは『嫁』ではなく『婿』では?」と白露のツッコミがあった時もあったが。それ位吹雪は可愛い。
「僕も学校に行きたいな~」
吹雪が口を尖らせた。
『吹雪様は来年入学できますよ』
「でもお母さんと同じ学校に行きたい~」
コラコラ。そう足をバタついじゃダメ。胸がキュンキュンしちまうぜ!。
「吹雪。いっしょの学校はむりだけどお母さんの通うことになった学園の近くに小学校があるから、来年は一緒に通学しようね」
「ホント!?」
「ホント」
「ワーイ!! お母さん約束だからね! 指切りだよ!」
「はいはい」
指切りげーんまん嘘ついたら針千本のーます。ゆびきった!
何て微笑ましい。白露は心にそっと呟いたのはカランは知らない。




