閑話、又はワーウルフの王は主達の行く末を案じる
色々忙しくて遅れてしまい申し訳ありませんでした。
カランとカイリが直接対決している頃――
すやすやと眠っている吹雪の寝顔に癒されながら白露は物思いにふけていた。
思い出すのは白露とカランが出会ったあの森の出来事である。
低レベルの魔物しかいない初心者冒険者が腕を上げる為に作られた人工の森だ。作ったのは『十二賢者』の一人、グレン・ターナー。
グレンは最初に冒険者ギルトを作ったマスターであった。彼は冒険者成り立ての人達の為に王国からかなり離れた、周りに人の存在がまずない森に目を付け、そこに魔物達を番と一緒に離した。
無論これには非難する声が大きかったが、グレンは雑魚モンスター達が突然変異をしない様に彼が設立した冒険者ギルトの人間を定期的に森に派遣すると言い、何より当時の国王が許可した為結局その案は通った。
因みに魔物達の餌である負の感情は魔物達の弱肉強食の中で少しずつ出るのでそれで何とかなっている。
白露がそんな所に居たのは単純に腹を空かしていたからだ。と言うのもその時の白露は何十時間に渡り戦っていたからだ。
相手は白露よりも劣るがそれでもワーウルフの中で血統も腕も良いワ―ウルフだった。簡単に言えば下剋上を狙ったのだが、白露にとっては敵ではなかった。
だが、そのワーウルフそこそこ強いだけではなく頭もそこそこ良かったのか色んな策を使って白露を襲ったが白露に傷をつける事無く死んだ。
しかし何日も戦っていたのでお腹が極限までに空いていた。空き過ぎて普段は絶対に食べないであろう低級の魔物を狙った。
しかし降り立った場所でそこにいたのは魔物ではなく、一人の貧弱な女の子が立っていた。
本当なら人間なんて魔物よりも食べたくはないのだが(なんせ人間の肉は魔物よりも不味く、色々と問題が起きるからだ)
しかしその時の白露の脳裏には空腹の事しか考えておらず、腹を満たす為なら後々の問題事等気にはしなかった。
女の子は剣を持っていたのだが、か弱い子供に攻撃のする暇も無く一押し倒し女の子の喉仏目掛けて噛みつこうとしたが。
女の子を守る様に眩い光が少女を包み、そして白露は弾かれた。
一瞬何があったが分からなかったが、それでもワーウルフの王は直ぐに立て直し攻撃をし続けたが光によって攻撃は弾かれた。
光に導かれて何頭か魔物が近寄り、白露の狙いはソレ等に向かい食事にあり付けた。大きい個体だった為直ぐに腹が満たされ、冷静に女の子を分析する事が出来始めた。
どうやら光は女の子を守っている様だ。神か精霊の加護なのだろうか? そう思っていたが良く良く見ればそれはそう言った高位な存在の加護ではない。恐らく人間……しかし人間にしてはとても強い『思い』だ。
『この少女を絶対に守りたい』と言う思い。
白露に敵意がなくなったと分かったのか光は徐々に消え、白露は少女の元へ近寄った。
少女は貧相な普通の子供だった。何故この様な子供にあんなモノが……? そう頭を傾げるとある事が分かったのだ。
「……何だこの娘は……?」
ワーウルフの王である白露は魔力所か魂すら見る事が出来る。少女の魂は通常の人間の魂よりも歪で、何度も引き裂かれたのを縫い合わせた継ぎ接ぎだらけの魂だ。
この様な魂は初めて見た。恐らくは何度も魂が裂かれる程の『死』を何度も味わっている。普通なら魂事消えるのだが、誰かが何度もこの女の子の魂を消える前に無理やり魂を繋ぎ合わせて生き返らせている。
そんな事をすればこの女の子所か女の子を処置した人間も何かしら身体か精神の異常が出る筈だ。
白露は少し女の子に興味を持った。
何故こんな普通の子供が此処までされるのか、此処までこの子供に執着する人間は誰なのか? そんな興味を持った白露は自分と契約させようと無理やり起こそうとすると……
「あら~? こんな展開は初めてね?」
後ろから声がした。
振り向くとそこには一人の幼女が平然と立っていた。
「……貴様、アイニア・アンソニーだな?」
「流石ワーウルフの王ね。でも幾ら王様でもいたいけな子供を無理やり契約するなんて使い魔として失格よ」
「黙れ。下等な人間やハーフエルフの意見等聞かん」
この言葉にキレたのかニコニコと笑っていたアイニアが、一瞬で無表情になった。
「……どうやら躾し直さなければならない様ね。……この駄犬が」
「黙れ下等生物が!!」
そうして女の子を放っておいて戦いが始まったのだが……
――瞬殺だった。
アイニアとの戦いを思い出して白露は顔を青ざめて身震いを起こした。
見事躾直された白露はアイニアに『あの子と契約したければ誠意を持ってやれ』と言われて、同類が見れば仰天する様な事をやった。
そのせいで眼を覚めた女の子――カランは眼を大きく開いて怯えていたが今となっては良い思い出だ。
何年か経った後吹雪も一緒に家族に成り、昔の自分には考えた事すらなかった合成獣の立冬もこの間家族として迎え入れられた。
本当に丸くなったと笑いながら、ふと一抹の不安を覚える。
アイニアは何やらカランの魂について良く知っている様だが、白露には何も説明をしない。『時が経てば話す』としか言わなかった。
一体カランにどんな秘密があるのか分からないが、それでもマスターとして家族としてカランの幸せな未来を祈っている。
……そしてカランを生き返し続ける彼の未来も案じた。




