私の死んだ理由
「実は『世界』は君がいた『世界』だけではないんだ。『世界』はいくつもの分岐点に別れていて、その都度莫大な数で産まれてくるんだ。例えば君が高校卒業して大学に行くか、それとも就職するかで悩む。悩んだ結果、大学に進学する事にした。そして選ばなかった就職する未来はこの時消える。だけど、それと同時に『就職を選んだ世界』――つまりIF、もしもの世界があるんだ」
「つまり、『パラレルワールド』の世界が無数に産まれてくると言う事?」
何と言うかスケールが大きすぎてあまり実感できない。その理論が通ればこうして話しているだけで数億いや、数兆の世界が産まれる計算だぞ。
「簡単に言ったらそうなるね。で、私の仕事はその世界をある程度管理する」
「『ある程度』?」
確かに膨大な『世界』を管理しない筈がない。しかし『ある程度』とはどういう事だろうが?
「 神は人への干渉はあまりしない。世界が未熟な時期はある程度関わったけど、今ではその世界が滅ぶレベルの事がない限り何もしない。まあ、観光で下界する神もいるけど」
「ふ~ん。つまりたとえ子供が虐待で死のうが、何もしていないのに殺されようが神様は無視する。随分薄情な所があるわね。てか、観光? 神様が観光するの?」
「そう言わないで。昔、神が干渉し過ぎてその世界を滅ぼしたり、神vs人との戦争したりで、大変だった時期があったから。それに観光できるのは上級レベル以上の神とその従者と身内しかできないから。私は中級クラスだからいけないけど」
スケールでかいし悲惨だな。でも、世界を管理する神だから上級クラスに行っても可笑しくはない筈では?
「私以外にも数百にも及ぶ名も無き神がこの仕事をしているんだ。上級の神は人の信仰によってやっと成れる場所。私達の様な人に名も知れず消え去る様な神は、せいぜい中級位しか上がれない」
私の心の胸を知ってか知らずか神は説明した。どこか自虐的なの気のせいだろうか?
「で、あんたの仕事である『管理』は具体的に何するのさ。人にあまり干渉出来ないのでしょう?」
「そうだね。まあ、私がやるのはその世界が滅ばない限りの大災害を起こしたりとか、景気悪化とか。その他いろいろだね」
「おい、簡単に言うけど一歩間違えれば世界滅ぶレベルですけど?」
「人口が増やし過ぎると、世界が滅ぶケースがあるんだ。だからある程度減らす事も必要なんだ。無論その時死んだ魂は来世に生まれ変わる時最大限の加護は与えるけどね」
神様の加護、か。中級の名も無き神とは言え、神の御加護があると考えれば納得出来る……いや、神の都合で殺されるからやっぱり納得出来ないな。
「さて、次に話す事は君と彼の事だけど。まず、もう少し私の仕事を話せて欲しい」
私は頷く。
「さっき言ったけど私の仕事は世界を管理する。そしてあまり干渉しない。滅ぼさないようにするけど、例外がある」
「例外?」
「そう。『その世界が他の世界に悪影響を起こしたり、その世界に住んでいる住民がその世界を滅ぼす場合その原因を排除する』」
「つまり……」
「私の最後の仕事は、その原因となる世界と住民を殺す」
「……」
「出来れば使いたくない事だけど、こうでもしないと世界の均衡が一気に破壊する」
「……その話と私の死に何の関係が? 私が世界を滅ぼすような事はないかと思いますけど」
普通の人間だと自負している。私が原因で世界が滅びるとはありえないと思うが……もしかすれば未来の私が独裁者になって悪逆非道な政治を行うのであろうか? それとも危険物を開発するのだろうか? ……いや、私の夢は翻訳家だからそんな未来はないと思うが……
「ここから本題。君の知りたかった彼が出てくる」
やはりと言うべきか。生前の周りの人間のアイツに対する異常な好感度。冷静になれば可笑しいと思うが、あの時は私もその異常に気付く事が出来なかった。
……一瞬神の顔が能面の様な無表情になった事に気付き、ゴクリとつばを飲み込み腕を摩った。
「彼の存在は稀に見るケースだった」
「稀?」
「彼の存在は英雄であり、そして魔王でもある」
「何それ?」
「彼は英雄になれる体質、私は『主人公体質』と呼んでいるけど漫画やゲーム欠かせない主人公の存在なんだ。彼の才能は君がよく知っているだろ?」
「……まあね」
成程う。周りの異常な好印象はその『主人公体質』のせいなのか。しかし漫画等の主人公もあそこまで好かれてはいないと思うが……下手をすれば読者に嫌われると思う。
「彼は典型的な『努力型優等生タイプ』だね」
「タイプ分けとかあるの?」
「『不良タイプ』、『落ちこぼれタイプ』とかいろいろ見たね」
「はあ~。ゲームか漫画みたいな話ね」
いや、どちらかと言えばなろう系か。
「主人公の条件は『絶対最強』。主人公が負けるのはめったにないし、負けたって最後勝つが世の中の常識だよね」
「まあ、主人公が悪の組織にやっけられて終わる話は私は聞いたことはありませんが……」
「そうだね。だけどこう考えない?『絶対最強』は扱えを間違えれば世界を滅ぼすことなんて簡単だよね」
「……だから『英雄でもあり、魔王でもある』、て事か」
使い方次第で神にも悪魔にもなれる力、確かに『排除』の対象に選ばれても可笑しくはない。
「しかし『主人公体質』は本当に稀で、砂漠に砂を一粒取る位確率が低い。だから私達はその場合、あることをとっている」
「あること?」
「『主人公体質』を他の世界に転生させる」
「他の世界に?」
またなろうの世界観だな、
「その世界にとって有害でも他の世界にとって必要な存在になるケースがあるんだ。まあ、どの世界でも破壊させるケースもあるけど。その場合は一度死んで無害な魂に生まれ変わらせる、彼の場合はある世界で生きれば破壊を起こさないケースで、すぐにその準備をさせたんだ」
「……ちょっとまって。それなら私関係ないじゃん。なんで一般人である私が死ななきゃいけないの」
いっそ謎が深まったじゃあないか。
「……予想外な事が起きたんだ」
「予想外?」
「君を殺した同級生、仮に名前はAさんとする」
「はあ」
同級生だから一応名字は知っているけど……まあ、個人情報が厳しい昨今に会わせているのだろう。
「Aさんは少しメンタルに問題があった。妄想が強く勝手に自分の事を好きだと勘違いをして、はてに自分はその人の彼女だと思い、少しでも他に気がある異性には徹底的に潰す子だっだんだ」
「実際体験してるから分かるなー」
「その思いが暴走してあの日彼女は彼を駅から突き落とす筈なのに彼女、君の姿を見たとたん憎しみを君に向けて君を突き落としたまあ、結果的に彼も一緒に死んだから結果オーライだけど」
「……つまり私は巻き込まれて死んだて事?」
「そうゆうことになるね。ハハハハ…………」
「ク、クッフフフ」
「ア、アハハハ。なんで机を持ち上げているのかな。ちょと落ち着いてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめ・・・」
ギャアー!!