ケース7
不思議な少女は、私の部屋に突如現れた。ジャネット自身もまさかこんな少女と任務をこなすとは夢にも思ってなかっただろう。
正午をすぎた真昼間。2人はまるで親子のように歩いていた。
「あ、自己紹介が遅れました。私はエイブラハム・マリー。一応あなたと同じ准将よ」
まるで子供とは思えないほどの口調、容姿端麗・才色兼備の言葉がよく似合う。
こんな小さい子供がLEVEL77の准将なんて……とジャネットは思った。
「マリーはどうしてLEVEL77に? パパとママは?」幼稚園の園長の肩書きは健在だ。実にソフトな尋ね方だ。
「両親はいないわ。幼い頃に捨てられたの……」
初めて見せたマリーの幼い少女の表情。思わず抱きしめてやりたくなる。
「そうなの……ごめんなさいね……」罪悪感が溢れてくる。しかしマリーは天使のような笑みを見せ、何事もなかったかのようにジャネットに寄り添う。
数分後、南東の空き倉庫に着いた。
かなり使い古されているようで、所々に穴が空いている。
一階は大きなガレージで、二階に行けるのは外のある鉄の階段のみ。二階にはどうやら誰もいないようだ。
「マリーはここで待ってなさい。すぐに済むわ」
暗殺モードへとジャネットのスイッチは切り替わった。
LEVEL77専用の自動拳銃ベレッタに弾を込め、階段を一段ずつ慎重に昇っていく。
硬い鉄の扉が姿を現した。錆びれたドアノブに手をかける。
キィィィと嫌な音が響き、部屋には火薬の臭いが立ちこめている。
誰もいないが、誰かがいた形跡はあるようだ。爆弾の設計図が散らばっている。
「随分物騒な部屋ね。あら、これは次の爆弾の設置場所……」ジャネットは顎に手をつけながら考えている。その時だった。
「なんじゃこのガキは!? どけぇ!!」野太い男の声。よぎったのはマリーが危ないという暗示だった。