ケース1
昼下がりの陽射が真っ黒なカーテンを突き抜けるように照らすある日の午後…暗い闇のような部屋にいるジャネットは幼稚園の園長を務めるため正装に着替え、昼の明るい街へと向かった。
日の光で輝いた金の髪が肩から流れる。整った顔によく似合うブラックパールのような深みのある瞳。暖かさの奥にある冷たさをも感じさせる。ホワイトパールの肌が顔いっぱいに広がり、真っ赤なルージュが大人の色気をふんだんに放つ。
ハイヒールの音が金属の階段にこだまする。
歩いて10分程の距離にその幼稚園はあった。「ナンシーさんこんにちは。」
昼の顔の名前はナンシー。
平和的な一般庶民の名前だ。昼はナンシーという名で園長をしている。
「こんにちは。今日は遅くなってすみません。」
まさか人を殺しに深夜までうろついていたなんて言えないだろう。
「いえいえ。園長はこの街の幼稚園の顔ですもの。出席されているだけでも嬉しいかぎりですわ。」
この幼稚園で夜9時頃まで事務をし、暗闇が空を支配し始めた頃に幼稚園から出かける。秘密犯罪暗躍組織LEVEL77へと。暗い夜の街路樹に、カラスのように黒い車が止まっている。中から現れたのは少しパーマがかかった茶髪の男。
顔は二枚目だが、闇から生えてきたような鋭い瞳。
心をズタズタに切り裂かれそうだ。背は高く、ジャネットの頭に男の胸板がある。「ジャネット・ベルサイト。緊急の任務だ。早く車に乗り込め。」
「あら、あなた直々の迎え?珍しいわねシェルス。」
シェルスという名の男はおもむろに銃を取り出し、ジャネットに手渡した。
大口径の自動拳銃マグナムリボルバーだ。
「護身用にしては大きいわね…難易度は?」
「Sだ。時間がない。すぐに向かうぞ。」
ジャネットの夜の顔が輝きを増した。




