第九章:人形
孤児院への到着
モンスターの混乱が過ぎ去ったあと、エリナはアリスとともに、自分の孤児院へゆっくりと歩いていた。頑丈で、なかなか大きな煉瓦造りの建物が、生い茂る木々の間に静かに佇んでいる。広い庭には、小さな花々が一面に咲いていた。
エリナが庭に入ってくるのを見るなり、一人の女性が急いで駆け寄ってきた。息は切れているが、その美しい女性の姿からは優雅さが滲み出ている。顔には、不安と安堵の入り混じった表情が浮かんでいた。
「エリナ! 無事なの?」女性は声を震わせて叫んだ。「ものすごいモンスターの襲撃があったって聞いて。とても心配したのよ!」
エリナはゆっくりと頷いたが、その目には、たった今起きた出来事の緊張がまだ残っていた。彼女の隣では、一人の少女が体を半分エリナの陰に隠し、まだ恐怖の残る目で、見知らぬ周囲を見つめていた。
「それで……あなたと一緒にいるこの子は?」女性は、アリスに気づいて声を和らげた。
エリナは少し身をかがめてアリスのほうを向いた。声は優しく、慈しみに満ちている。「この子は、壊された村の生き残りなの。名前はアリス。今日から、ここで私たちと一緒に暮らすのよ」彼女は親友に温かな笑みを向けた。「アリス、紹介するわね。私の親友のノヴィよ。この孤児院を、私と一緒に切り盛りしてくれているの」
アリスはまだ一歩を踏み出せずにいた。手はエリナの服の裾をぎゅっと握りしめている。その眼差しは警戒に満ちていた。まるで、自分の世界を壊したばかりの襲撃の影に、まだ囚われているかのように。
「他の子たちは?」エリナが尋ねた。声に心配が滲む。
「地下室で無事よ。もうすぐ出てくるわ」ノヴィは安堵の息をつきながら答えた。
ノヴィはすぐにアリスの前にしゃがみ、できるだけ優しく微笑んだ。傷ついた子供へどう近づけばいいか、彼女はよく知っていた。
「ようこそ、アリス。ここなら安全よ。もう怖がらなくていいの」
彼女は、ゆっくりと手を差し出した。無理強いはせず、受け取る準備ができているかどうかは、アリスに委ねて。
アリスは長いあいだ、その手を見つめていた。心の中では、恐怖と、失われた温もりへの渇望がせめぎ合っている。ついに、そっと、指先でノヴィの手に触れた。
他の孤児院の子供たちが、すでにノヴィの後ろに集まり始めていた。興味津々で囁き合いながら、こちらを覗いている。はしゃぎすぎないよう我慢している子もいれば、新しい仲間に挨拶したくて、うずうずしている子もいた。
エリナは子供たちに、優しく微笑みかけた。「この子が、あなたたちの新しいお友達よ。仲良く迎えてあげてね」
――
アリスが孤児院に来てから、二週間が過ぎた。
他の子供たちが何度も近づいて遊びに誘っても、アリスは部屋の隅に座り、エリナがくれたうさぎのぬいぐるみを抱きしめたままだった。その視線はしばしば虚ろで、窓の外を見つめている。二度と戻らない誰かを、待ち続けているかのように。
ノヴィは、子供たちのための毛布の山を抱えながら、遠くからアリスを見守っていた。小さくため息をつく。自分だけの世界に囚われたままの幼い少女を見ていると、胸が詰まった。
「アリスのことなんだけど……」ノヴィは、たまたま通りかかったエリナに囁いた。「あの子、まだ他の子たちと関わろうとしないの。トラウマに浸りすぎているんじゃないかって、心配で」
エリナは振り向いた。その眼差しは優しく、深い理解に満ちていた。
「あの子が、自分のペースで道を見つけるのを待ちましょう、ノヴィ。あれほど大きな傷は、温かい言葉だけでは癒えないわ」声がわずかに震えた。アリスを見つけた、あの暗い夜を思い出して。「私たちにできるのは、あの子のそばにいること……あの子がまた、心を開けるようになるまで」
ノヴィはゆっくりと頷き、もう一度アリスを見つめた。深い憐れみがあった。だが同時に、希望もあった――いつの日か、あの幼い少女が、恐れに影を落とされることなく微笑んでくれるだろうという。
――
その夜、孤児院の屋根に、激しい雨が降りつけた。瓦を打つ雨音が、時折落ちる雷の轟きと混ざり合う。他の子供たちはすでにぐっすりと眠っていたが、アリスはまだベッドの隅に座り、うさぎのぬいぐるみを抱いて、恐怖に震えていた。
雷が落ちるたびに、体が激しく震えた。頭の中では、雷の音が、人生を永遠に変えたあの夜の悲鳴と化け物の咆哮に混ざり合っていた。
隣のベッドで、赤い髪に温かな茶色の目をした少女、セレナが、小さなすすり泣きの声で目を覚ました。目をこすり、振り向くと、一人怯えているアリスの姿が見えた。
「ねえ、アリス」セレナは、他の子を起こさないよう小声で囁いた。「雷が怖いの? あ、そうだ、私の名前はセレナ。覚えてるかな?」
アリスは深くうつむいたまま、答えなかった。ただ、うさぎのぬいぐるみを抱く腕に、さらに力がこもる。まるでそのくたびれた物が、恐ろしい世界から彼女を守ってくれる唯一のものであるかのように。
セレナは、分かってくれているような薄い笑みを浮かべ、ベッドから降りて、アリスのベッドのそばの床に座った。
「私はね、怖いときはいつも……雨の音を数えるの」セレナは、落ち着かせるような小さな声で言った。「一つ……二つ……三つ……十まで。なんでか分からないけど、そうすると、ちょっと落ち着くんだ」
アリスはゆっくりと顔を上げ、まだ潤んだ目でセレナを見つめた。恐怖の奥から、小さな好奇心が顔を覗かせ始めていた。
セレナは優しい笑みでウインクし、歌うような声で数え始めた。「一つ……二つ……三つ……」
無意識のうちに、アリスも心の中で一緒に数え始めていた。雷がまた轟いて落ちたとき、体はまだ震えていたけれど、今度は、いつものように泣かなかった。
セレナは、その小さな変化にほっとして微笑んだ。「ほらね? ほんとは、あなたも強いんだよ。よかったら、明日、紙飛行機の作り方を教えてあげる。高く飛ぶから、紙飛行機と一緒に、雨から逃げるふりができるよ」
ここに来て初めて、アリスは、視界を曇らせる恐怖なしに、誰かを少し長く見つめた。唇はまだ微笑んでいなかったが、目の中の恐怖は、少しだけやわらいでいるようだった。代わりに、小さいけれど確かな好奇心が宿っていた。
少し開いたドアの向こうで、夜の見回りをしていたエリナとノヴィが、ふと足を止めた。二人は目を潤ませながら、その小さな会話を見守った。心が温かくなる――ついにアリスが、新しい世界への小さな扉を開き始めたのだ。
――
翌朝、金色の朝日が孤児院の大きな窓から差し込み、昨夜の雨が残した冷たさと暗さを追い払った。子供たちはすでに庭で賑やかに遊んでおり、その笑い声が、爽やかな朝の空気に満ちていた。
アリスは、扉の近くの木のベンチに座っていた。うさぎのぬいぐるみは、まだしっかりと腕の中にある。駆け回る子供たちの動きを目で追い、笑い声を聞いていたが、安全だと思っている場所から、体は動こうとしなかった。
突然、セレナがいたずらっぽい笑顔で現れた。手には、きれいに折られた小さな紙飛行機を何枚も持っている。
「アリス、行こう!」セレナは意気込んで叫んだ。「昨日約束したとおり、紙飛行機を作ってきたよ。一緒に飛ばしてみない?」
アリスは、紙飛行機を見つめた。目に、小さな輝きが浮かぶ。ゆっくりと手を伸ばし、セレナが差し出した一機を受け取った。
ためらいがちな動きで、アリスは紙飛行機を投げた。驚いたことに、それは彼女の予想よりもずっと遠くまで飛び――庭の端で弓の練習をしていた男の子の頭に当たってしまった。
アリスはすぐさま驚き、恐怖を覚えた。体が強張り、逃げるか隠れるかしようとする。
エンセイ――黒い髪に優しい目をした男の子――が、友達のバタラとともに、頭に当たった紙飛行機を手にして歩いてきた。
「セレナ、お前、またいたずらか?」エンセイは冗談めかして言ったが、怒ってはいなかった。
「あ、今回は私じゃないよ!」セレナは、いたずらっぽく舌を出した。「投げたのはアリスだもん」
エンセイは、怯えているアリスを見て、温かく微笑んだ。「アリスっていうんだ? 君の投げる紙飛行機、命中率がいいね。今度、一緒に弓で遊ぼうよ」
怒られるのを覚悟して身構えていたアリスは、エンセイの偽りのない笑顔を見て、少しずつ落ち着いていった。
「僕はエンセイ」男の子は、友達を指さして言った。「それで、隣にいるのがバタラ」
「……アリス」アリスは小さな、けれどはっきり聞こえる声で答えた。
「よろしくな、アリス!」バタラが張り切って叫んだ。「君、ここに来てもう二週間くらいになるのに、僕、君がしゃべってるの聞いたことなかったよ!」
バタラの無邪気な言葉を聞いたセレナは、すぐに小さな紙くずの玉を、笑いながらバタラの頭に投げつけた。「あんた、空気読めなさすぎ!」
アリスは、二人のやりとりを見つめた――抗議しながら笑うバタラ、いたずらっぽくからかうセレナ、そして、二人の様子に微笑むエンセイ。そして、この二週間で初めて、唇の端が持ち上がり、小さな微笑みを形作った。
――
遠くから、エリナは目を潤ませ、感動しながらその光景を見つめていた。ノヴィがその隣に立ち、親友の肩を優しく叩いて微笑んだ。
「見て、少しずつ自分の世界を取り戻し始めているわ」ノヴィは、希望に満ちた声で囁いた。
エリナは頷いた。心は、深い感謝の気持ちで満たされていた。「子供たちには、本当にすごい癒やしの力があるのね。あの子たちが、アリスに教えてくれているの。この世界にはまだ優しさがあって、笑って遊べる場所があるんだって」
その夜、家族を襲った悲劇以来初めて、アリスは悪夢を見ずに眠った。胸の中には、小さな希望が育ち始めていた。
眠りにつく前、彼女はうさぎのぬいぐるみに囁きかけた――そしておそらく、今もどこか遠くから自分を見守っていると信じているキンバリーの魂にも。
「今度こそ、きっと大丈夫。そうじゃなきゃいけないの」彼女は囁いた。小さな、けれど真摯な決意のこもった声で。
窓の外では、星々が明るく輝き、まるで賛同を示しているかのようだった。アリスはついに、新しい家族を見つけ始めていた。心の傷はまだ完全には癒えていないけれど、幸せはまたきっと見つけられる、と信じ始めていた。
――
――つづく。




