告白
目が覚めると王城のベッドだった。
やたらと豪華なここには前に一度だけ来た事がある。
どうやら私はレッドモンドから救出されたらしい。よくあの天才暗殺者から助け出せたものだ。どうして助かったのか考えていると隣から「起きた?」と尋ねる声が聞こえてくる。
そちらに顔を向けるとひっと声を上げそうになった。
「る、ルード様…」
目が覚めた私の傍にいたのはルードルフだった。
彼を見た瞬間、自分のやらかしが頭の中を駆け巡る。
初デートの最中にルードルフが好きだと気がついて彼の前から逃げ出してレッドモンドに捕まって。挙げ句の果て、救出に来てくれた彼に好きだと言ってしまったのだ。
私、何やってるのよ…。
この世界に生まれて一番のやらかしを思い出して頭が痛くなる。
「おはよう、ディア」
「お、おはようございます…」
にっこりと笑いかけてくるルードルフは私の手を握って離さない。まるで逃す気はないと言われているような感じだ。
逃げ出して身を危険に晒したからだろうか。
「起きて早々で悪いけどディアに話があるんだ」
「お話ですか?」
まさか告白の件?ってそれはないか。
普通に考えて私の誘拐事件に関する事だろう。
馬鹿な事を考えていないでちゃんと話を聞かないと。手伝ってもらいながら起き上がりヘッドボードに寄りかかる。
「レッドモンドという男にディアの暗殺を依頼したのは例のバルバラって女だった。彼女の身柄は既に拘束されている」
「え?」
ヒロインが捕まったの?どうして?
彼女なら何をしても許されるはずなのに。
ゲームとは違いすぎる展開に頭がついていかない。
「取り調べをしたところ、彼女は意味が分からない事を言っていたよ」
「意味が分からない事ですか?」
「うん。自分はヒロインだとか、愛されるべき人間だとか、悪はクラウディアだとか、とにかく滅茶苦茶な事ばかり言っていた」
馬鹿じゃないですか。
それを言ったところでこの世界の住民の人が理解を出来る訳がない。
普通に考えたら分かる事なのに。バルバラがここまで愚かだと思わなかった。
「それらは罪から逃れようとするふざけた発言として処理したんだけどね。彼女の発言の中で一つ気になるものがあって」
「何ですか?」
「彼女は君も転生者と騒いでいたんだ」
ひゅっと息を呑んだ。
バルバラには転生者である事は明かしていない。明かすと面倒な事になると分かっていたからだ。
それなのにどうして余計な事を言うのか。
「ねぇ、ディア。君は私に隠し事をしているよね?」
「それは…」
「そろそろ全てを話してくれないかな?」
ヒロインが捕まってしまった。
つまりゲームは強制終了を迎えた。
私は破滅を回避出来たという事になる。
それならルードルフにも全てを話しても良いのかもしれない。
「………信じてもらえないかもしれませんが私には前世の記憶があるのです」
「前世?」
「はい…」
ぽつりぽつりと全てを話した。
この世界が前世にある乙女ゲームによく似た世界である話をした時のルードルフは驚き、理解出来ないという顔をしていたけど黙って私の話を聞いてくれていた。
「俄かには信じがたい話だな」
「やっぱり信じてもらえないですよね」
こんな突拍子もない話を信じろと言う方が無理がある。ルードルフがこういう反応になっても仕方ない。
頭のおかしい女の戯言だと私も捕まるのかしらね。
「ディアの話じゃなかったら信じてなかったと思う」
「えっ?」
「もちろん信じるよ。だからそんな悲しそうな顔をしないで」
信じると言ってくれた。
いつものように優しく笑うルードルフに泣きそうになる。
「それにしても、その、乙女ゲームというのは凄いな」
「創作物ですよ、現実ではあり得ない恋愛です」
苦笑いで返す。
創作物だからヒロインに都合が良いように出来ている。
そしてヒロインが絶対の存在であると思っていたからこそ私は恐れ続けていたのだ。
「そうだね、それらは全て創作物だ。だって君は悪役じゃないのだから」
「ルード様…」
「クラウディア、君はお姫様だよ。私の大切なお姫様だ」
手の甲にキスをしてにっこりと笑いかけてくるルードルフの姿は見た事がある。
ああ、そうだ。
私が一番好きだったスチルによく似ているんだ。それを見てしまったからなのか。
「私はルード様が好きです」
思わず本音が漏れてしまった。
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