公爵令嬢とデート①※ルードルフ視点
クラウディアに自分の気持ちをはっきり伝えたくて城下町で遊ぼうと誘った。
八年も好きでいたのに気持ちを伝えられなかったのは嵌めるような形で彼女を自分の婚約者にしてしまった負い目があったからだ。
ただ最近の彼女は様子がおかしい。私を見つめる目が寂しいものになったり、熱っぽいものになったりと忙しないのだ。意識してもらっているのは分かる。それなのに彼女自身が自分の気持ちを否定しているようにも感じられた。
本心を知りたい。
なにより自分の気持ちを知ってほしかった。
出かける直前になって足を止めたのはクラウディアに迷惑をかけ続けているバルバラという傍迷惑な女についての重要な報告が入ったせい。
彼女に何かあるといけないと思ってバルバラの調査をしていたのだ。
「暗殺者か…」
調査報告書に載っていたのはバルバラが暗殺者を雇ってクラウディアを殺そうとしている事だった。証拠が不十分である為、現段階では彼女を拘束する事は出来ない。
「キーランドを護衛につけているから大丈夫だとは思うが心配だな」
前に一度クラウディアは学園で命を狙われた。犯人は見つかっていないが調査報告書を見るかぎり雇ったのはバルバラなのだろう。
命が狙われた事がきっかけでクラウディアには王家が用意した専属の護衛をつける事となった。
彼女の護衛となったのは兄が一番信頼している騎士のキーランド。
兄は失礼な事を言ってしまったお詫びとか言っていたけど実際は彼女が心配だから貸してくれたのだろう。あれでも兄はクラウディアを気に入ってるから。気に入ってるから余計に厳しく接しているのだけど。
そしてキーランドは気難しい性格をしているが決して悪い奴じゃない。クラウディアが美人すぎてどう接して良いのか分からないらしい。横恋慕するような奴じゃないと知っているから護衛として容認した。
「今日は護衛の数を増やすか」
町では何があるか分からないのだ。
クラウディアに被害が及ばないよう細心の注意を払わなければ。
護衛の指示を出して彼女の元へ向かった。
「ディア、おはようございます」
城下町に着くと既に待ってくれていたクラウディアに挨拶をする。変装として平民の衣服を身に纏っているが気品を隠し切れていない。
愛らしいから仕方ないか。
「おはようございます、ルード様」
「お待たせしてしまって申し訳ありません」
「公務だと聞いております。お気になさらずに」
公務ではないが本当の事も話せない。
嘘をつくのは心苦しいが全てが終わったら話すつもりだ。笑顔で返事をしてくれる彼女に安心して守るように腰を抱き寄せた。
「行きましょうか。キーランドは離れたところにいてください」
二人きりでいたいという気持ちが大きい。
ただキーランドにも状況説明をしなければならないのも事実だ。
渋った表情を浮かべた彼だったがすぐに「かしこまりました」と頭を下げて離れて行った。
「ディア、遅れたお詫びをさせて」
こちらから誘っておいて待たせてしまうという失態をしてしまった。好きな物を何でも買ってあげようと思って提案するとクラウディアは首を横に振って「気にしないでください」と返事をする。
相変わらず欲張らない子だ。
たまにはねだってくれても良いのに。
「お詫びはただの口実。初デートの記念に贈り物をさせて」
これなら彼女も贈り物をする事を納得してくれるだろう。
そう思ったのにクラウディアは頬を引きつらせた。台詞が軽薄だっただろうか。
ちらりとこちらを見上げてくる彼女に「どうかした?」と尋ねる。
「いえ…。何でもないです」
首を振ったクラウディアは今度は頬を緩める。
まるで何かを楽しみにしているような表情。もっと見たくなって俯く顔を覗き込んだ。
「それで贈り物の許可はもらえるかな?」
「でしたら贈り合いをしましょう」
苦笑いで提案してくるクラウディア。
一方的な贈り物は許さないと言ったところだろう。しかしお互いに好きな物を贈り合うという経験は初めてだ。嬉しくなって「そうしよう」と頷いた。
「ディアは何が欲しい?」
「新しい本ですね」
「相変わらず読書家だね」
出会った時からクラウディアは読書家だ。
そのおかげで彼女と婚約する事が出来たのだけど。申し訳ない気持ちもあるが彼女が他の男に奪われなくて良かったとも思う。
「ルード様は何が欲しいですか?」
「ディアがくれる物なら何でも嬉しいよ」
困る答えだと分かっていたが本当に何を貰っても嬉しいと思う。クラウディアから貰える物は全て宝物なのだから。
「そろそろ行こうか」
「そうですね」
こうしてクラウディアとのデートが始まった。
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