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【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


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40/40

第40話「今日も明日も」

十二月三十一日。

大晦日。

澪は、合気道の稽古納めを済ませて、ひよりの部屋へ。

初めて訪れる、ひよりの部屋。

年越しそばを食べて、紅白を見て、カウントダウン。

二人で迎える、新しい年。

それでは、第40話、どうぞ。

十二月三十一日。


大晦日。


朝、ゆっくりと目が覚めた。


今日は、合気道の稽古納め。


それから、ひよりの部屋に行く約束をしている。


ひよりの部屋。


初めてだ。


いつも私の部屋に来てもらってばかりだったから。


今日は、ひよりの部屋で年越し。


楽しみだ。


朝食を済ませて、道着をバッグに入れた。


道場に向かう。


電車に乗って、三十分。


いつもの道場。


静かな住宅街の中にある、古い建物。


ドアを開けると、師匠がいた。


「おお、澪か。来たか」


「おはようございます、師匠」


「おう、おはよう」


師匠は、七十歳を超えているけど、まだまだ元気だ。


背筋がピンと伸びている。


「今日で、今年も終わりじゃな」


「そうですね」


「一年、早いのう」


「本当に」


私は、道着に着替えた。


道場に戻ると、他の門下生も何人か来ていた。


みんなで、稽古を始めた。


基本の型。


受け身。


投げ技。


体が、自然に動く。


何度も繰り返してきた動き。


稽古は、心を落ち着かせる。


余計なことを考えない。


ただ、体を動かす。


それだけ。


一時間ほど稽古をして、休憩。


師匠が、私の隣に座った。


「澪、お前さん、今年はどうじゃった?」


「まあ、いろいろありました」


「そうか」


師匠は、じっと私を見た。


「お前さん、そんなに強かったら男が寄り付かんじゃろ?」


「ふん!」


私は、そっぽを向いた。


「別に、いいです」


「そうか」


師匠は、笑った。


「まあ、無いものを嘆いても仕方がない」


「はい」


「今、お前さんの周りにいる人たちを大切にしなさい」


師匠の声が、優しい。


「人生とは、誰かの為に生きてこそ価値があるものじゃ」


「師匠……」


師匠は真面目な顔でまっすぐ前を向いている。


「あの……またヒジがおっぱいに当たってますけど……」


「うひょひょひょー!」


師匠は立ち上がって逃げていった。


「わざとじゃよー!」


「もう……」


私は、少し笑ってしまった。


「ほんと元気なおじいちゃん。」


師匠は、いつもこうだ。


真面目な話をした後に、必ずふざける。


そのバランスが、好きだ。


稽古が終わって、みんなで道場を掃除した。


一年の埃を落とす。


綺麗になった道場。


来年は、もう少し通わないとなぁ。


「じゃあ、皆さん、良いお年を」


師匠が、手を振った。


「良いお年を!」


みんなで、道場を後にした。


私は、駅に向かった。


これから、ひよりの部屋に行く。


ひよりから、住所を聞いていた。


駅から徒歩十分。


ワンルームのマンション。


到着した。


少し古めのマンションだけど、綺麗に管理されている。


三階の一番奥。


インターホンを押した。


「はーい」


ひよりの声。


「ひより、私」


「澪さん! 来たー!」


ドアが開いた。


ひよりが、満面の笑みで立っていた。


「いらっしゃーい!」


「お邪魔します」


部屋に入った。


ワンルーム。


狭いけど、綺麗に片付いている。


ベッド、小さなテーブル、テレビ。


シンプルだけど、温かい。


「狭くてごめんね」


「いいえ、素敵な部屋じゃない」


「本当?」


「ええ」


ひよりは、嬉しそうだった。


「あのね、澪さん。実家から、年越しそば送られてきたの!」


「そうなの?」


「うん! 出雲そば!」


「そういえば、ひよりって島根出身だったわね。」


「うん。実家がそば屋の近くでね、毎年送ってくれるの」


ひよりは、嬉しそうに箱を開けた。


中には、乾麺の出雲そばが入っていた。


高級そうだ。


「これ、すごく美味しいんだよ」


「楽しみね」


「じゃあ、茹でるね」


ひよりは、キッチンに立った。


小さなキッチン。


でも、ひよりは慣れた手つきで鍋を火にかけた。


お湯を沸かして、そばを茹でる。


私は、テーブルを拭いて、準備した。


薬味は、ネギと海苔。


つゆは、ひよりが作ってくれた。


「はい、できた!」


ひよりは、そばを器に盛った。


綺麗に盛り付けられている。


「すごい、上手じゃない」


「えへへ。茹でて盛り付けただけだけどね。」


ひよりは、照れくさそうに笑った。


二人で、テーブルに向かい合って座った。


「いただきます」


「いただきます」


そばを一口。


美味しい。


コシがあって、喉越しがいい。


つゆも、ちょうどいい味。


「美味しい」


「でしょ?」


ひよりは、嬉しそうだった。


「島根のそば、すごいわね」


「うん。実家の近くのお店、有名なの」


「そうなんだ」


二人で、そばを食べた。


温かい。


体が、温まる。


年越しそばは、やっぱりいい。


「澪さん」


「ん?」


「今年もいろいろありがとうね。」


ひよりは、優しい声で言った。


「澪さんと友達に慣れて、本当によかったって思ってるんだ。」


「それは私もよ」


「いろんなこと教えてくれるし、頼りになるし…」


「それもお互い様だって…」


「だから澪さん!来年も仲良くしてね」


「ええ、こちらこそお願いするわ」


ひよりは、またそばを食べ始めた。


師匠の言葉が頭に浮かんだ。


……人生とは誰かの為に生きてこそ価値があるもんじゃ……


確かにそうかもしれない。


私もひよりと友達になれて本当に良かった。


そばを食べ終わって、二人でテレビを見た。


紅白歌合戦。


私は歌番組はあまり見ないから、最近の歌は、さっぱり分からなくなった。


「あっ!ペンシルハイヒールだ!」


ひよりの顔がパッと明るくなった。


「新曲の、私たちの明日って歌の歌詞がすごくいいのよ!」


「そうなの?」


「うん。澪さんも聞いて」


朝の電車に揺られて

眠い目こすりながら

昨日の涙はバッグにしまって

今日も笑顔で歩き出す


書類の山に追われても

上司の言葉に傷ついても

隣で「大丈夫」と笑う君がいる

それだけで強くなれる


私たちの明日が始まる

小さな勇気を重ねて

転んでも 泣いても

また立ち上がる

未来はここから続いていく


ひよりは一緒に口ずさみながら小さく体を揺らしている。


確かにいい曲だ。


気がつくと、もう次がラストの曲だった。


「もうすぐ、新年だね」


十一時半。


「そうね」


「カウントダウン、しようよ」


「いいわね」


テレビの時計を見ながら、待つ。


十一時五十九分。


あと一分。


「来るよ、澪さん!」


「ええ」


三十秒前。


二十秒前。


十秒前。


「九、八、七……」


二人で、カウントダウン。


「三、二、一……」


「ゼロ!」


新年だ。


「明けましておめでとう!」


「おめでとう、ひより!」


二人で、手を叩いた。


新しい年が、始まった。


「今年も、よろしくね、澪さん」


「ええ、よろしくね、ひより」


二人で、笑い合った。


窓の外からは除夜の鐘が聞こえている。


静かな夜。


また師匠の言葉を思い出す。


「今、お前さんの周りにいる人たちを大切にしなさい」


私は、ひよりの隣に座った。


肩が、触れ合う。


温かい。


「ひより」


「ん?」


「これからも、一緒にいてね」


「当たり前じゃん」


ひよりは、笑った。


「澪さんは、大親友だよ。」


頬を、涙が伝った。


「え!えぇ!?ちょっと澪さん、どうしたの?」


なぜだろう…涙が出た……


「ごめん、ひよりの気持ちが嬉しくて。」


「感動かー!良かった!変なこと言ったかと思っちゃったよ。」


ひよりが私を抱きしめてくれた。


「よしよーし!澪さん、泣かないのよー!」


「ちょっとぉ、なんなの、それ…」


二人で、また笑い合った。


テレビでは、新年の番組が始まっていた。


二人で、それを見ながら、ゆっくりと時間を過ごした。


また新しい一年が始まる。


どんな年になるだろう。


ひよりと2人、今日も明日も、そして、これから先も…


ずっとずっと…


私は、そう思いながら、ひよりの隣に座り続けた。

お読みいただき、ありがとうございました。

師匠の言葉。

「人生とは、誰かの為に生きてこそ価値があるものじゃ」

そして、その後のセクハラ。

師匠らしいですね。

ひよりの部屋で、年越しそばを食べて。

カウントダウンをして。

新しい年を迎えた二人。

「大親友だよ」というひよりの言葉に、澪は涙を流しました。

嬉しかったんでしょうね。

新しい年。

二人には、どんな一年が待っているのでしょうか。

そして、これから先も…

【OLふたり、今日も明日も】は、今回の話で最後になります。

また新しいシリーズを楽しみにして下さい!

長い間、読んで頂きありがとうございました_(。。)_

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