特別な能力測定
「能力測定が気になる?」
考え込んでいるところをレオに問いかけられる。
簡易の能力測定では特殊な石版に手を当て、浮き出た色やその濃さによって使える魔法と得意とする魔法が分かる。ニーナはきっと力を抑えて測定に臨んだと思うが、使える魔法の種類を隠す事は出来ず結果どの属性の魔法の色も万遍なく浮き出ていた。
私自身が受けるのは初めてなのでそれは気になるの一言だ。
「うん。今私が使える魔法はどれくらいあるのかなって。もし、素質があるなら練習して使えるようになりたいな」
「ニーナ向上心高いな」
「えらーいっ」
縁があって魔法のあるこの世界に来たのだから謳歌しないとね、とは言えない。私は「そうかな」と返事をしておいた。
ヴィンスとリリーに褒められる中、レオだけは私の様子をじっと見ていた事に私は気付いていなかった。
―――――
1年生の最終試験は可もなく不可もなく前と同じ様な結果となった。休んでいた分順位を落とすかもと思っていたけど、ヴィンスと会えない日々に勉強も頑張っていたお陰で功を成したようだ。
そして春期休暇に入り、能力測定の直前に学園から手紙が届いた。
(??)
届いた手紙には私個人の名前と測定日の日時が記載されていた。『◯組は◯日◯時から』という具合にクラス単位で決まっていた筈だ。直前になってやり方を変えたのだろうか。
疑問に思うも能力測定に変わりは無い。指定された日時に学園へと向かうしかない。ほんの少しの不安を覚えたが、無視してその日を迎えた。
コンコンと学園の指定された一室のドアをノックする。
「どうぞ」
(……えっ?)
ドアの向こうから聞こえる聞き慣れた声にドアを開けるのを躊躇する。……けど引き返すわけにもいかない。不安な表情を隠せないままドアを開けた。
「…………なんで…」
そこにいたのは、声の主は思った通り――レオだった。
「ま、入って」
戸惑う私に構う事なく中へ促される。当然私に拒否権はなく言われるがままに中へと入った。
「………なんでレオがいるの?」
「俺神官の称号を持っているんだよね。人手が足りないから人助けかな」
「レオが神官の称号を……知らなかった」
本当に知らなかった。何でも器用にこなすレオは寧ろ何の称号でも持っていそうだ。けど…
「というか、神官様による能力測定って卒業時にするんじゃないの?」
「あっ知ってたんだ?まあそうなんだけど、ニーナは入学してすぐに色々あったから特別に、ね」
「特別……」
なんでだろう。特別にしてもらえて喜ぶべきかもしれない。けど、レオがすると言うだけで胸がざわつく。
「基本的には去年したのと一緒だよ。この石版に手を当ててみて」
「……うん」
そっと石版に手を当てると自分の中から魔力が流れていくような、それは初めての感覚だった。
レオはそんな私を見てクスッと笑った。
「大丈夫?この石版は特殊で魔力を吸い込むんだよね。魔力を上手くコントロール出来なくて暴走してしまう人なんかは、これと同じ石を加工したものを身に付けたりもするんだ」
「レオは色んな事知ってるよね」
色々と知っていて――全てを見透かされていそうで、逃げ出したくなる。
そんなレオは「へえ」と面白そうに石版を見ている。
「ニーナ見て。殆ど薄い色ではあるけど、どの属性にも反応してて鍛錬したら使えそうだな。濃いのは風と火。練習した成果が出てる」
「えっ」
練習した成果が目に見える形で現れるのは嬉しい。でも今はそれよりも気になる言葉があった。
「どの属性も使えるの?治癒魔法も?」
「うん、使えるね」
「そうなんだ……」
どの属性も使えると聞いて密かに安堵した。ニーナと一緒だったから。
魔力の性質は生涯変わる事がないと習ったのだ。『魔力が乏しくなったから治癒魔法は使えない』と押し通しているけれど、実際に石版に反応の無いものがあったとしたら前回と比較して不思議に思われるだろう。
「安心した?ニーナは入学時も全ての属性に反応してたらしいしね」
「えっと、レオ?」
レオの言葉にドキッとする。まるで私の心の声に返事をしたみたいだ。
「ここまでの測定は誰でも出来るんだよね」
「うん?」
「で、神官にしか出来ない測定があるんだけど何か分かる?」
「神官様しか出来ない事…」
神官になれるのは特殊な能力を持っている人だと授業で習った。
前に水を掛けられた時にレオが言った言葉が蘇る。
『魔法にもその人によって癖や特徴があるからな。魔法を使って水を掛けたなら、水に魔力がのこってるだろうから誰が掛けたのか調べようと思ったんだけど…』
「神官様は、レオは魔力を見分ける事が出来るんだ」
(そうだ。あの時は何でその事を気にかけなかったんだろう)
レオはニーナの魔法を見た事があるのだろうか。実習クラスは違うし、私が知る限りではニーナはレオに魔法を見せた事はない。私とニーナの魔力の特徴が一緒であれば、せめて似ているものであればいいのだけど。
「正解。神官は魔力を読む事が出来るんだ。卒業時には魔力の特徴も国に報告される。魔法による犯罪防止にもなるからね。ニーナの魔力は元気な猫って感じだな。主人の意志でなく自由気ままに動こうとする」
「猫…ふふっ魔力が読めるって面白いね」
「そうだな。……ニーナやっと笑ったな」
「そう、かな」
「出来ればそのままでいてほしいんだけど、どうだろうな」
レオが呟くように言った言葉は私に聞こえていて、これからレオが言おうとしている事を想像出来てしまった。
「ニーナ。入学当初、俺はニーナの魔法を見た事があるんだ。その魔力は、穏やかな川のせせらぎのようだった。今と……全然違う」
(ああ、やっぱり……)
目の前が真っ暗になりそうだ。このまま倒れてしまいたい。
「ニーナ……………きみは誰なんだ?」




