学園祭 5
「エマちゃんおめでとう!乾杯」
学園内のテラスでジュース片手にエマちゃんのお祝いをしている。
「恥ずかしい……でもありがとう」と顔をほんのり赤くして応えているエマちゃんが可愛い。私がヴィンスと両想いになった時に可愛くなったと言われたのが分かる気がする。
「昨日からふわふわしてて、夢なんじゃないかなって思うんだ。次会う時にどんな顔をしていいのか分からなくて、今日ウィルくんが休みでちょっとほっとしてるの」
「分かる……!」
私もどうしたらいいか分からなかった。嬉しい。エマちゃんは私寄りだ。
「えーっ会いたいとか思わないの?」とリリー。
「私は会いたいし隙があらばイチャイチャしたい」
「きゃー!」
ルシアナの発言に私とエマちゃんは、両手で顔を覆ってしまった。ルシアナが言うイチャイチャとは何なのか気になる。けど、聞いたら大人な答えが返ってくる気がして聞けない。
「会いたい、とは思うけど…イチャイチャって何するの」
私が敢えて聞かなかった質問をエマちゃんが聞いてしまった。
「それはもちろん、手を繋いだりキスしたりその先も――」
「ルシアナ」
リリーが止めてくれる。私とエマちゃんはそれどころではない。2人共テーブルに突っ伏して顔を上げられない。
「ニーナとエマちゃんにはまだ早いみたいだよ」
「そう?エマはともかくニーナは付き合って長いんでしょう」
「……両思いになってからまだ3ヶ月経ってないくらいかな」
「私もそのくらいだよ」
「えっ」
空いた口が塞がらない。そういうものなのか一般的な感覚が分からない。
「イチャイチャしたいって思わないの?」
「……考えた事なかった」
「手を繋ぎたいとかは?」
「それはある、かも」
「向こうは色々したいと思ってるかもよ」
「えっ」
(ヴィンスは…色々したいと思ってる?色々って何?)
「ニーナが固まっちゃった」
「もうっルシアナ!ニーナを揶揄わないの。人それぞれなんだからニーナはニーナの思うようにしたらいいんだよ」
「うん。ルシアナちゃんの話は刺激が強すぎるよ」
「えーそうかな」
ルシアナは楽しそうだ。本当に同い年だろうか。リリーの言う通り人それぞれだから気にしない気にしない……
―――――
その後も他のクラスの劇を観に行ったり、お店を見て回ったり、あっという間に時間が過ぎていった。
「ニーナ、後夜祭楽しんできてね」
「ニーナまたね」
「ありがとう!またね」
私は後夜祭の支度を、慣れているサラにお願いする為に一旦家へ戻ることにした。ヴィンスも夕方に家まで迎えに来てくれるそうだ。
早速ドレスに着替えると、手伝ってくれているサラがにこにことしている。
「サラ嬉しそうね」
「それはもう。お嬢様が愛されていてサラは嬉しいです」
「あ、愛…?」
何だかんだでドレスもプレゼントされたから?この後エスコートしてくれるから?確かにそうかもしれない。
「ドレスはヴィンセント様が選んでくださったのですよね?」
「うん、ヴィンスが選んでくれて…私も最近この色が好きだからいいかなぁと」
仕立てる時間が無く既製品だけど…とヴィンスが選んでくれたのはヴィンスの瞳と同じ深い青色をしている。
劇で着た華やかな色のドレスも素敵だけれど、このドレスはデザインは華やかでも色は落ち着いていてバランスが良く、ヴィンスと並んでも遜色ないだろう。
「ヴィンセント様がお嬢様を自分の色で包みたいっていうのが伝わってきますね」
「自分の色で……包む?」
(そうなの?そういう事なの?)
顔が熱くなっていく。そんな事を言われると、このドレスを身に纏うのがくすぐったく感じてしまう。
「サラ、恥ずかしいんだけど」
「愛されているんだと堂々としてください。ほら、とてもお似合いです」
ドレスが映えるように動きやすいようにと、アップスタイルの髪型にしてくれた。サラは私を可愛く見せるのが上手だ。
「ありがとうサラ」
「いいえ、楽しんできてくださいね」
「うん」
支度を終えたところにタイミング良くヴィンスが迎えに来てくれた。玄関へと降りていくと、正装に身を包んだヴィンスの姿が見える。
(………っ!)
黒髪なのに黒の燕尾服と合わせても雰囲気が暗くなる事なく、こんなに似合うとかあるのだろうか。髪型もいつもと違って後ろに流しているので男の人なのに色気が漂っている。
「ヴィンス………格好良い……」
挨拶よりも迎えに来てくれたお礼よりも先に、心の声が漏れてしまった。
「ありがとう」
私はヴィンスが格好良すぎて直視出来ずにいる。ヴィンスは私の側まで来ると耳打ちをした。
「ニーナはすごく……綺麗だよ」
どくん、と心臓が波打つ。かぁぁと顔が赤く染まるのが分かる。私はいつになったらヴィンスの言動に慣れるのだろう。
この一連のやり取りを家の皆に見られているのはいつもの事で、皆に見守られながら私達は家を出た。
馬車に乗り込むと、隣に座ったヴィンスからの視線を物凄く感じる。
「ニーナ、さっきから目線が合わないんだけど」
「……ヴィンスが眩しくて………直視できません…」
「ははっ何それ。俺はニーナをずっと見ていたいな」
「ひゃっ」
ヴィンスの手が私の頬を包み込み彼の方を向かされる。私はその綺麗な顔を間近で見てしまって息をのんだ。
「そのドレス似合ってるよ」
「ありがとうございます……」
「……そんな顔をされると色々したくなるよ」
「っ!」
(色々?!)
昼間、ルシアナに言われた言葉を思い出す。
「色々って何?」
「えっ………」
聞き返されると思っていなかったのか、珍しくヴィンスが言葉に詰まっている。けど、何か考えた素振りをしてから口を開いた。
「………聞きたい?」
「………」
少し意地悪そうな顔で私を見る。聞きたいと言ったら何を言うつもりなんだろう。
「そんな悩まなくても…」
「だって、ヴィンスが意地悪そうな顔して聞いてくるから…聞きたくても怖くて聞けない」
「はははっそっか。ごめんね」
そう言ってヴィンスは私の手を取り、指先に口付けた。
「困ってる顔も可愛くてつい意地悪を言ってしまうのかも。でも、その話はまた今度にするよ」
「〜〜っ!」
「ほら、もう着くよ。見て」
「わあっ」
ヴィンスに言われて窓の外を見ると、陽が沈んだ直後の空をバックに学園が幻想的にキラキラと照らされていた。恐らく魔法で彩られているのだろう。
「キレイ……」
「だね」
馬車が停まり、先に降りたヴィンスに手を差し出される。
「行こうか」
学園もヴィンスも私でさえも非日常の雰囲気で、楽しみでもあり少し緊張もする。
ダンスが行われるホールでは既に演奏が始まっており、廊下まで聴こえていた。
「…今日は俺以外とは踊らないでいて欲しいな」
「うん?分かった」
「それと、なるべく俺の側にいて」
「…うん」
ヴィンスの台詞にドキドキしながら、私たちはホールへと入っていった。
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最近スローペースの更新ですみません。
当初、50話くらいで完結するつもりで書いていましたが今回で50部分でした。纏めるの難しいですね。
年内には完結する予定なので引き続き見ていただけると嬉しいです。




