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いざ、学園へ

 庭園を散歩した後、私はお母様とお茶をしていた。何だか優雅なひと時で貴族令嬢って凄いと思う。語彙力もなくなる。


 「そういえば、学園の事なんだけれどニーナの体調が大丈夫そうであれば通ってもらう事になるわ」

 「学園!私通うのが楽しみなんです。私の世界では魔法が無かったから魔法を使うのに憧れてて」

 「そう言ってもらえてよかったわ。学園では主に魔法の事を習うのよ。後は国の歴史や文化、選択科目では裁縫やダンス、マナー、あとは領地経営や剣術もあったかしら。幅広く学べるから好きな事を勉強したらいいと思うわ」

 「それは!とても楽しそうですね。早く学んでみたいです」


 実は先程何か魔法を使ってみたいと思い、夢の中のニーナが物を動かす授業を受けていたのを思い出してそれを試してみたのだけど何も起こらなかったのだ。きちんと授業を受けて出来る様になりたい、と思う。


 「魔法に関しては、入学した時点で個々で習熟度が異なるから、それに応じてクラスが5段階に分かれているのよ。初心者、初級、中級、上級、最上級の5段階ね。ニーナは初めてだから先生に魔法が上手く使えなくなった、とでも相談をして初心者クラスへ変更してもらいましょう」


 さすがお母様だ。話が早い。


 「はい、そうしてもらえると助かります。因みにニーナは以前は何クラスだったんですか?」

 「ニーナは力を抑えて隠していたから中級クラスにいたのよ。ただ1年毎に簡単な能力測定があって、更に卒業時には神官様による大々的な測定が行われるの。そこまでいったらもう、ニーナの力は隠し通せなかったと思うわ」

 「そうなんですね…」


 卒業時まで入れ替わらなかったらどうなっていたのだろう…入れ替わった事でニーナは幸せになったのだと思いたい。


 「ニーナの魔力の多さは見た目では分からないからこれまで隠せていたのだけど、実は一目見れば魔力が多い事がわかる人もいるのよ」

 「えっそうなんですか?!」

 「ええ、黒髪の人は例に漏れず魔力を多く保有しているのよ。例えば――


 私も黒髪の人物には心当たりがある。


 「ニーナの婚約者の家系、ランフォード侯爵家とかね」


 (やっぱり……)


 「ランフォード侯爵家は魔法の才能にも優れていて、代々王家に仕えている家系なの。ニーナの魔力の多さと才能に気付いたお父様が侯爵様に話をして先方から婚約を申し込まれたのだけれど、もしかしたら婚約解消の話が出るかも知れないわ。貴女を振り回してごめんなさいね」


 お母様は申し訳無さそうだけど全然問題ない。あっちの世界にいるニーナの見立てによると私の魔力は平均的だ。加えて魔法の使い方も分からない私がそんな魔法に優れた家系に嫁ぐなんて重荷でしかない。


 「全然大丈夫です。寧ろ有難いです」


 私は自分の気持ちを素直に答えると、お母様がふふっと笑う。先程から思っていたけど笑い方も上品だ。真似したい。


 「今は昔と違ってこの世界も自由恋愛が推奨されてきているのよ。貴女は自由が似合うわ」


 そう言ってお母様は私の頭を撫でてくれた。


 学園へ通うのは2日後からに決まった。早く学園へ行きたい私と、私の体調が心配でもう少し休ませたいお母様との意見を足して割ったのだ。お母様は早速、私の魔法の事情を先生へと手紙をしたためてくれていた。


 休暇がもう1日できた私はお母様と買い物へ行ったり午後のお茶を楽しんだり、やっぱり贅沢で優雅なひと時を過ごしたのだった。




 「行ってきます!」


 そして待ちに待った私にとっての学園初日がきた。学園へは馬車で30分もしないうちに着くらしい。本当は景色を見ながら歩いて行きたかったのだけれど、お母様とサラに驚愕され断念した。運動不足になりそうなので選択授業では体を動かすものを選考しようと思う。


 緊張も多少あるものの楽しみの方が勝っていた。夢の中で何度も見た教室へと向かいドアを開けた。


 「おはようございます!」


 教室へ入ると既に登園していたクラスの半数程の生徒が一斉にこちらを見た。張り切りすぎて声が大きかったのだろうか。やってしまった、と思っていると見覚えのある女の子が声を掛けてくれた。


 「おはようニーナ。来るの待ってたよ!体調は良くなったの?」


 癖のあるブラウンの髪にエメラルドの大きな眼――リリーだ。


 「おはよう、リリー。もうすっかり元気だよ」

 「よかった!1週間以上も休んでいたから心配してたのよ」


 リリーはニーナの隣りの席でニーナが最初に仲良くなった友達だ。話し掛けてきてくれてホッとする。


 「あれ?ニーナじゃん、久しぶり。生きてたか?」


 後ろから軽口を叩くのは、シルバーブロンドの髪に碧眼の男の子。


 「レオ!久しぶり。この通り生きてるよ」

 「ちょっとレオ!言い方!」

 「悪い悪い。代わりに休んでた時のノート、貸してあげる」


 レオも内気なニーナに気さくに話かけてくれて仲良くなった1人だ。


 その後もクラスメイト達が『久しぶり』『もう大丈夫?』等話しかけてくれる。クラスの皆が優しい。学校でもやっていけそうだ。


 朝一の授業は魔法の講義だった。講義は夢の中で受けていた事もあり難なく終わった。


 次の授業は魔法の実習だ。それぞれのレベルに合わせて実習を行う為、私はお母様の事前の計らいで初心者クラスの場所へ移動する事になる。確かリリーも初心者クラスだったはず、と思い声を掛けた。


 「リリー、私寝込んでから魔法が上手く使えなくなって、初心者クラスから受ける事にしたの。一緒に行こう」

 「そうなんだ?!ニーナ大変だったね……その、なんていうか……うん。一緒に行こう」


 明らかに気を遣わせてしまった。本当の事を言えたらいいんだけど、それはそれで大事になるだろうから言えないし難しい。


 「初心者クラスへ来たら分かるけど、1年生の大多数は初心者クラスだから気にしなくていいと思うわ」

 「ありがとうリリー。大好き!」

 「私もニーナ大好きよ」


 何故か告白し合い幸せな気分で向かった。ちなみにレオは上級クラスらしい。すごい。勝手に一緒の初心者クラスかな、と思った事は心の中で謝っておこうと思った。


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