魔法の授業
初心者クラスはグラウンドの一角で行う。その昔室内で実習をした際、力の加減が出来なかった生徒が屋根を吹き飛ばしたのだという。それ以来、初心者クラスと初級クラスは屋外での青空授業をする事になったのだ。
魔力が多いのと魔法の才能とは比例しないらしい。魔力が多くても才能が無ければ初心者クラスから勉強し、逆に、魔力が少なくても魔法の才能が有れば上のクラスへと上がっていく。
(折角の学べる機会だから、絶対に魔法を習得したい。目指すは上級クラス!)
誰に宣言をする訳でもないが、少しだけ遠慮した目標を掲げてがんばることを誓う。
先程、風魔法の使い方とその応用の講義を受けたので、授業ではそれを実践する事になった。頭の中で風が起こるイメージをして手に力を込める。それをグラウンドに落ちている落ち葉にあてて動かすのだ。
「風が起こるイメージ、風が起こるイメージ…」
目を瞑り想像してみる。
「出来た!」
今の声は私ではない。
「リリーすごい!もう出来たの?!」
「うん。こうやって手から風が出るイメージをしてみたら出来たよ」
「手から風…私もやってみる!」
手から風が出てくるイメージをする。すると手が温かくなって、近くにあった落ち葉がフワッと一瞬浮いた。
「出来た、出来たよリリー!」
初めて魔法を使えた!うれしくてリリーに報告してしまう。
「うんうん見てたよ。すごいね!」
「リリーの教え方が上手なおかげだよ。ありがとう!」
リリーに褒めてもらえた事もうれしい。2人で出来た事を喜んで、今日はもうこれで満足だ。その後は、葉っぱを魔法でクルクル回すという簡単な応用まで教わる。私の集中力が続かなかったのか成功率は半々というところだ。もっと魔法を練習したかったけど、お昼の時間になり午前の授業は終了した。
お昼は皆、学園にいくつかある食堂で食べるそうだ。お手洗いに寄ってから行くことを伝えると、リリーは先に行って席を取っておくと言ってくれた。
一人で歩いていると、夢の中で見覚えのある集団に出交わす。ニーナに『大した事ないわね』と言っていた集団である。嫌な予感しかない為、知らんぷりして通り過ぎてしまいたかった。
が、案の定絡まれてしまった。
「しばらくお顔を拝見しない間に魔力が乏しくなったそうですね?」
「………」
実はニーナの夢の中でもこの人達が誰か分かっていない。向こうは何故私の事を知ってるのだろうと思いながら、何と返事をすればいいのか分からないので黙ってみる。
集団のリーダーっぽい人は黒髪ロングの綺麗な女の子だ。黒髪と言えば魔力が多い人の特徴の筈。
「自分の身の程を知って、いい加減ヴィンセント様の婚約者を辞退されたらいかがですか?」
なるほど、どうやら私がヴィンセントの婚約者である事が気に入らないらしい。
「それは私が決めることでは無いので。ましてや貴女がどうこう言うことでは無いですよね」
「なっ!私は認めませんからね!」
負けたくない気持ちから言い返すと、そんな捨て台詞を吐いて行ってしまった。
ニーナに度々嫌がらせをしていたのも絶対あの集団だろう。結局黒髪ロング少女の名前も分からず、誰かも分からない人に認められないと言われた事に悶々としながら食堂へ向かった。
「って事があったんだ」
「えっ!ニーナってヴィンセント様の婚約者なの!?」
さっきあった事を食堂で席を取っていてくれていたリリーといつの間にか一緒にお昼を食べているレオに話すと、別の事で驚かれてしまった。
「隠してたつもりは無かったんだけど」
多分…と心の中で呟く。ニーナは隠してたのだろうか?いや、恐らくニーナの性格からして『ヴィンセントの婚約者なんだ』とペラペラ言いふらすような事はしないだけで伝えるきっかけが無かっただけだろう。
「違うクラスなのにヴィンセントの事知ってるの?」
「ヴィンセント様は黒髪だし有名だよ。ニーナ、有名人の婚約者なんて羨ましい!」
「んー、でも紹介された日以来全然会った事ないしさっきだってそのせいで絡まれてるし、今のところ羨ましい事何も無いよ」
「その黒髪ロングの子は多分、というか確実にレイラ・スカーレット伯爵令嬢だな。親が野心家で有名の。大方ヴィンセントの婚約者の座を狙ってるんじゃないか?厄介なのに目をつけられたな」
「えーっと。私は楽しい学園生活を送りたいんだけど、どうしたらいい?」
よしよし、と2人に慰められる。何の解決策もないままお昼時間は過ぎてしまった。
さっきまでの満足感を返してほしい。そんな事を思いながら午後の講義を受けて割と波乱な学園初日を終えたのだった。




