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学園祭 3

 (レオとエリザ様ってそういう関係なの?)


 エリザ様には婚約者がいた筈なのにとか、禁断の恋なのかなとか、色々思考が駆け巡る。


 「お待たせしました」


 着替えを終えて更衣室から出た私は少し離れた場所にいるヴィンスの元へ駆け寄った。


 クラスの皆はもう既に劇の片付けを終わった様で誰もおらず、今ホールでは別のクラスの劇が行われている。


 先日私が階段から落ちて以来、1人で行動させるのが心配だとヴィンスは今もこうして私の事を待ってくれていたのだ。


 「もうすぐお昼だし何か買いに行こうか」

 「うん!校舎前にお店いっぱい出来てたよ。見に行こう」


 さっき見た事は一旦忘れてヴィンスと学園祭を楽しもうと思った。

 のだけれど…


 「よっ」

 「……レオ」

 「ニーナ衣装着たままだったからここにいるかなって、当たったな」


 先程ぶりに会うレオが普通に話しかけてきて戸惑う。私は何を言っていいのか躊躇ってしまって返事が出来ない。


 「俺に聞きたい事ない?」

 「俺は言いたい事ならあるけど?」

 「…そうだよな」


 ヴィンスはまだ怒っていたみたいでレオを睨んでいる。


 「ごめんヴィンセント。ニーナも」

 「いいよ。私は『協力』出来たの?」

 「…充分過ぎるくらいに……ありがとう」

 「よかった」


 レオは聞きたい事はないかと言っていたけど、エリザ様との事とか質問してもいいのだろうか。

 ヴィンスは「協力って何?」と怪訝そうだ。


 何の話をするにも、この場所は他の人も通るし移動したい。


 「ねえ、場所を移動して話しない?」

 「お腹も空いたな。出店でお昼買ってから話できるとこ行くか」

 「うんっそうしよう。ヴィンスもいいよね?」

 「……ああ」


 話も聞きたいけど、折角の学園祭だしお店も見てみたい。ヴィンスはまだちょっと不機嫌そうだけど半ば強引に返事をもらった。




 「わあっ凄く賑わってるね!」

 「だな。王都にある商店からの出張店舗もあるって」

 「ニーナの好きな串焼きの店も来てるよ」

 「本当?あれ美味しかったよね」


 街歩きでヴィンスと一緒に食べた串焼きお肉は美味しかった。ヴィンスも沢山のお店を前にテンションが上がったようで、さっきまでの不機嫌さは消えていた。


 「ニーナ串焼き肉もいけるんだ?肉にかぶりつく令嬢って貴重だな」

 「褒め言葉として受け取っておくね」

 「もちろん」


 前にヴィンスにも同じ様な事を言われたが、2人共引いてはなさそうだから良しとする。

 色々迷って、3人共学園祭ならではの生徒が出店しているお店のランチボックスにした。


 人がいない所で話をしながら食べよう、とまたもや選択授業の校舎の一室へ来た。皆ここへ立ち入っていいのか分からないのだろう。本当に人気(ひとけ)がない。


 「いただきます」とランチをいただく。話をする前に、とレオは何かの魔法を私達の周りに掛けた。


 「それ何の魔法なの?」

 「一応、防音魔法を掛けておいた」

 「レオは色んな魔法使うよな」

 「ヴィンセントも出来るだろ?」

 「その魔法は使えるけど、髪の色変える魔法は出来ないよ。後で教えて」

 「いいよ」


 魔法上級者達の会話についていけない。

 学園祭の準備もあり、レオとの魔法の練習も暫くしていない私は未だ基本魔法を単体でしか使えない。防音魔法なんていうものを普通に使える2人が不思議だ。


 「で、さっきの説明してくれるの?俺は何となく分かってるけどニーナは違う想像してると思うよ」

 「何も言ってないのに分かるヴィンセントが凄いな」

 「割とヒントあったけど」

 「そうなんだ?気をつけなきゃな」


 どうしよう。こっちの会話にもついていけなかった。ヴィンスは何で分かってるんだろう。


 「私は勝手に色々妄想してしまってて、レオが話してもいいと思うなら聞きたい」

 「そうだよな。俺は………」


 聞くのもドキドキする。エリザ様と禁断の恋をしているというのなら、応援するべきか、悲恋になる前にやめた方がいいと言うべきなのか。


 「実は皇女の婚約者なんだ」

 「え?!」


 私の想像には無かった答えが返ってきた。


 「レオが、エリザ様の婚約者?」

 「そうだよ」

 「冗談、ではなく?」

 「冗談ではなく。びっくりした?」

 「……うん。……よかった。禁断の恋をしているのかと思ってた………」

 「ははは!禁断とかエリーが聞いたら喜びそうな単語だな」

 「……エリー」


 愛称呼びで親しそうだ。けど全然分からなかった。前にヴィンスに聞いたエリザ様の婚約者の家名とレオの家名は異なる。


 隠しているというのもあるかもしれないけど、剣術の授業の時も近くにいるのに2人は全く話もしていなかった。


 「内緒にしておいてくれる?」

 「うん、もちろん。ヴィンスは気付いてたんだ?」

 「ああ、気付いたのは最近だけどね。ヴェルディ伯爵家の令息の名は『マティアス・ヴェルディ』1人だけで、『レオナルド・ヴェルディ』という人物はいないからな。ヴェルディ伯爵の姉君がロズウォール公爵に嫁いで、その息子が『レオナルド・ロズウォール』、皇女様の婚約者であるレオの本当の名前だよ」


 前に学園に通っている貴族の名前は把握していると言っていたから、レオが母親の姓を名乗っている事に気付いたのだろうか。


 「……ヴィンス、凄いね」

 「本当に、敵に回したくないタイプだよな」

 「お前な。そもそも本気で隠す気が無さそうだったけど?」

 「まあ俺は隠す気なんて無かったけど、向こうが俺は母親の姓を名乗る事を願って…そこら辺のすれ違いもあって、やっとさっき仲直りしたばかりなんだ」

 「そうだったんだ……」


 エリザ様は婚約者と――レオと仲良くしたそうだったのだ。仲直りできてよかった。


 「仲直りできてよかったね」

 「そうだな、ありがとう。これからは拗らせる前に仲直りするよ」

 「どのくらい拗らせてたんだよ」

 「……2年近く」

 「長っ!」


 ヴィンスに同感だ。2年近く好きな人とすれ違っていたなんて辛い。

 何に対しても完璧なレオも恋愛に関しては不器用なんて可愛いところもあるんだなぁと思う。


 「…仲直りできてよかったな。で、これからも『レオナルド・ヴェルディ』のままでいくんだ?」

 「ああ。いまさらロズウォール姓を名乗ってもややこしいし、皆どう接していいか分からないだろうし。そういう事でよろしく」

 「うん」

 「エリーには2人に話した事を言っておくよ」

 「わっエリザ様と恋バナが出来る」

 「……色々話さないように言っておかないとな」

 「そうだな」


 レオの事が少し知れて嬉しい。


 「レオ『金髪の美少女』とお似合いだね」


 私がそう言うと、レオは一瞬キョトンした後にははっと笑った。その顔は本当に幸せそうで、私はヴィンスと顔を見合わせて笑ってしまった。


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