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学園祭の準備 4

 ヴィンスとの勉強は捗る。ふざけたらいけないようなピリッとした空気感がいい。本人には言えないけど。


 ノックの音が響く。応えるとサラが「休憩にどうぞ」とティーセットを持ってきてくれた。


 「ニーナ、捗った?」

 「うん、かなり勉強出来たよ」

 「よかった。休憩しようか」

 「うん」


 ヴィンスの手元を見ると勉強道具の他に楽譜が置いてあった。


 「楽譜を見てたの?」

 「持ってきたノートを見終わったからどんなのかなと思って。これ、デュエットなんだね」

 「うん。ソロでも歌える様になってるけど今回はデュエットで歌うんだ」


 (あ、そうだ)


 「来週から、放課後に声楽で一緒のウィルくんと練習するね」

 「ああ……男と2人とか嫌だけど、仕方ないよね」

 「練習する時はリリーも一緒にいてくれるって言ってたよ」

 「そうなんだ。リリーにお礼を言っておくよ」


 ヴィンスはそれ以上その事について何も言わず、私の手を取って手の甲に口付ける。映画のワンシーンの様な仕草にドキドキする。


 「ニーナの歌を聴かせて」

 「……うん」


 この曲は、愛を知る喜びや誰かを愛すると世界が変わる、という内容の歌詞だ。

 自分の想いも込めてヴィンスの為に歌を歌う―――




 歌い終わると、ヴィンスが一呼吸おいて拍手を送ってくれた。


 「今まで歌劇を観ても何も思わなかったけど、ニーナの歌は心に入ってくるな」

 「心に…」


 プロの歌劇団の人達もびっくりだ。彼女補正が強過ぎる。


 「うん。愛の告白をされているみたいで、ずっと聴いていたくなる」


 かあっと顔が熱くなる。言葉にして愛を伝えるのは恥ずかしいから、歌に自分の気持ちを込めたのが伝わったのだろうか。


 「そう言ってもらえてよかったです」

 「けど」


 ヴィンスが立ち上がり私の耳に顔を寄せる。『けど』何だろう?


 「他の人達にニーナの歌声を聴かせたくないな」

 「えっ」

 「独り占めしたい」

 「〜〜っ」


 耳に囁かれる真っ直ぐな言葉への返事に困ってしまう。私も気持ちを素直に表せられるようになりたい。


 「せめてニーナと同じクラスだったらいいのにな」

 「ヴィンスと同じクラスだったら、休み時間話したり一緒に教室移動したり出来るね」


 それは楽しそうだ。お昼も一緒に食べたり、勉強で分からない所を聞いたりも気軽に出来る。


 「ああ…でもやっぱり同じクラスは無理かな」

 「何で?!」

 

 同じクラスになった時の事を想像して浮かれていたのに地に落とされてしまった。

 

 「他の男子と楽しそうに話してる姿とか見たくない」

 「えっ」

 「想像しただけで嫉妬した」

 「ええっ」


 (男子と楽しそうに話してたら…ヴィンスの前でレオと話してるのはセーフなのかな?)


 「レオは大丈夫だよ。お互いにそんな気が無いのが分かってるから」

 「なっ」


 声に出して言ってたのかなって思うくらい、心の声を読まれて思わず聞いてしまう。


 「何で……ヴィンスって私の心読めるの?」

 「ニーナは思ってる事が顔に出るからね」

 「……そうなの?どうしよう……」

 「………」


 リリーやレオにもいつも心を読まれている気がする。そんなに分かりやすいなんて、いつか()()()の事も気付かれてしまったらどうしようと不安がよぎる。


 そんな事を考えていたら、ヴィンスに両頬を覆われて上を向かされた。


 「何か隠してる事があるの?」

 「ううん。何も……」

 「……本当、嘘が下手だよね」


 いっそのこと、私は元いた()()()では無いと言ってしまいたい。でも……そうしたらヴィンスはどうするんだろう。……フローレス家は罪に問われたりするんだろうか。


 ヴィンスは頬から手を離すと、私の手を握った。


 「無理に暴こうなんて思ってないけど、何か困った事があったらすぐに相談して欲しいな」

 「……うん」


 やっぱり、フローレス家の為にもそんな事は出来ない。


 「ヴィンス、ありがとう」


 私は手をギュッと握り返してヴィンスに微笑んだのだった。




―――――




 「ニーナ、テストどうだった?」

 「割と解けたから赤点は無いと思う。リリーは?」

 「私も大丈夫そう」


 ヴィンスと勉強をした事もあって結構解けたと思う。赤点が無ければ課題も出ないので、歌やダンスの練習に時間を掛けられる。


 「ニーナ」

 「うん?」

 「脚本出来たよ。先に渡しておくね」

 「ありがとうございます。ってシモンくん、テスト勉強もあったのにもう出来たの?」

 「実力テストは勉強しなくても点取れるよね?」

 「それ頭の良い人のセリフだね」


 リリーの言葉に納得だ。もしかして、この前ヴィンスは勉強しなくてもいいのに付き合ってくれたのだろうか。もう、色々と格好良過ぎる。




 脚本も出来上がった為、他の皆も役割が決まった。リリーは衣装、レオは大道具と演出だそうだ。


 「ニーナ、エマ、衣装の採寸しに行こう」


 衣装係のルシアナとリリーに声を掛けられて空き教室へ向かった。ルシアナはデザイナー志望で裁縫を選択しているそうだ。ドレスのデザインはもう出来上がっているという。


 シモンくんといい、ルシアナといい皆生き生きしていて、自分の好きな事を学園祭で活かせるなんて、ステキなイベントだなと思う。


 「後夜祭はドレスを着てもいいんだって」


 ルシアナが教えてくれる。お母様が言っていた通りだ。じゃあ、一緒に踊ると結ばれるというジンクスもそのまま残っているかもしれない。


 「相手がいたら出るのになぁ」

 「別に彼氏じゃ無くても、友達と出てもいいんじゃない?リリーはレオと仲良いよね?」

 「レオと出たら隠れファンが怒ってきそうだし、折角だから好きな人を作って出たいよ」


 レオに隠れファンがいるとか全然知らなかった。


 「後夜祭で一緒に踊った相手と結ばれるっていうジンクスがあるらしいよ」


 お母様情報を伝えてみる。


 「あっ私も聞いた事がある」

 「えー!じゃあ尚更好きな人とじゃないと駄目じゃん」 

 「私も出たいなぁ」

 「エマちゃんは好きな人いるんだ?」

 「う、うん。ニーナちゃんとは一緒に練習する時間増えるし、その内バレるかもしれない。私態度を隠せて無いらしいから」

 「今のでほぼバレてるよ」


 ルシアナがエマちゃんに突っ込む。一緒に練習していてバレるって事は、私達と一緒で劇に出る人?


 「あっ!分かったかもしれない」

 「ウィルくんだ」

 「きゃー!!」


 リリーが名前を出して悲鳴を上げるエマちゃん、可愛い。


 「内緒ね」

 「告白しないの?」

 「上手くいくんだったら告白して後夜祭に一緒に出たいけど、そうじゃなかったら劇で顔合わすのが辛くなっちゃうから」

 「そっかぁ」

 「応援してるね」

 「ありがとう」


 これが恋バナか。エマちゃん達が上手くいったらいいなぁと思う。


 「ニーナちゃんはいるの?好きな人」

 「……いてます」


 自分の恋バナは苦手だけど、エマちゃんのを聞いておいて自分が答えないとかは無いだろう。


 「私、この前ニーナがヴィンセント様と歩いてるの見ちゃった」

 「えっじゃあニーナちゃん、ヴィンセント様と付き合ってるの?」


 前にリリーもヴィンセント様呼びをしてたけど、何で様付け何だろう。それに、クラスが違っても知られてるなんて改めてヴィンスって有名なんだと実感する。


 「うん、付き合ってます」

 「えーっ凄い!」

 「ヴィンセント様には溺愛してる婚約者がいるって噂聞いたことあるんだけど、もしかしてニーナちゃんの事?」

 「!」


 (何その噂、恥ずかし過ぎる……)


 「婚約者は合ってるけど語弊がある、かな」

 「事実だと思うよ」

 「〜〜っリリー」


 「羨ましい」と言われたけれど、ルシアナも1つ上の彼氏がいるそうだ。後夜祭もその先輩と出るらしい。

 恋愛初心者の私には、付き合うという事において分からない事が多すぎるから、今度ご教授お願いしますと頼んでおいた。



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