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閑話 髪を結ぶのは誰?

 とある剣術の授業のある日。


 「ニーナ…言ったら失礼かもしれないんだけど…」

 「うん?」


 何故かレオが遠慮がちに話しかけてきた。


 「髪の毛、ボサボサじゃね?」

 「……やっぱり?」


 いつも剣術の授業の時は、髪の毛が邪魔にならないように1つに結んでいる。いや、リリーに結んでもらっている。


 今日はリリーが用事があると急いで帰ってしまった為、残念ながら自分で結ぶ事になったのだ。そして残念な髪型になっている。


 「その髪型でも可愛いよ」

 「……ありがとう」

 「………」


 ヴィンセントはフォローして褒めてくれるが、絶対にそんな事ないだろう。隣でレオが絶句しているのは無視しておく。


 「俺が結ってやろうか?」

 「えっ?」

 「!」


 私の髪を結うと名乗りを上げてくれたのはレオだ。


 「レオ出来るの?」

 「自分の髪もいつもしてるし昔幼馴染の子の髪を結んであげてた事もあるし、出来るよ」


 そういえば、レオは少し長い襟足を器用に革紐で結んでいる。幼馴染の子の髪もしていたというなら任せても大丈夫そうだ。


 「じゃあお願いしようかな」

 「っ!待って!」


 ヴィンセントから待ったがかかる。


 「どうしたの?」

 「………俺がやる」

 「えっ?!」


 ヴィンセントが?もしかして彼も器用なのだろうか。確かに何でも出来てしまいそうだ。でも…


 「それは、ちょっと…」

 「俺は駄目?」


 ヴィンセントに髪を触られるのはちょっと…いや、想像すると大分恥ずかしい。けど、レオは良くてヴィンセントは駄目だ、とは言えない。


 「じゃあ…お願いします」

 「うん。任せて」

 「………」


 レオは俺はいないとばかりに無言を徹している。


 私はベンチに座り、ヴィンセントが後ろに立つ。


 「触るよ」

 「……はい」


 ヴィンセントの手がフワッと私の頭に触り髪の毛を梳く。優しく触れられて、私はぴくっと身を竦めてしまう。


 (恥ずかしい……)


 髪の毛を梳かれる度に神経が頭に集中する。


 (早く……早く終わって………)


 中々終わらないこの時間に、ここだけゆっくり時間が流れてるのでは?と思うほどだ。


 「終わったよ」

 「……ありがとう」

 「………」


 もう私は生き絶え絶えだ。

 ヴィンセントが結ってくれた髪の毛を鏡で確認する。


 「………」

 「ニーナの方がマシだな」

 「………」


 やってくれたので「そうだね」とは言えないが、私がした方がマシかもしれない。


 「やっぱり俺が結うよ」

 「待っ、俺がやる」

 「…無理だろ」

 「俺が…魔法でやる」

 「………」


 そう言って、ヴィンセントは私に魔法をかける。しゅるっと一瞬にして髪が綺麗に纏まった。


 「わぁ!ありがとう!」

 「どういたしまして」

 「………」


 魔法で髪を結うなんて、やっぱりヴィンセントの魔法は凄い。


 私が感動している横では2人が話をしていた。


 「最初から魔法ですれば良かったんじゃ…」

 「………」

 「お前、ニーナに触…」


 どかっと何やら音がする。


 「どうしたの?」

 「…何でもない。行こうか」

 「………」


 そんな、平和?な午後のひととき―――




 

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