先輩と旅館
──探偵。
隠された真実を暴く者。
依頼を受け殺人事件の調査などを行う。
探偵は[死神]と評されることもしばしば。
彼ら彼女らの行く先々で必ずと言っていいほど事件が起こるからである。
しかしそれこそ名探偵のスキルなのかもしれない。
探偵は物語を始める者であり終わらせる死神なのだろう。
「あの事件ですか?……ああ、それなら先程違う探偵さんが来られて見事に解決されました」
「解決……なるほど……片道3時間かけて来たのに解決。ほう。しかもさっき」
旅館の女将さんが申し訳なさそうに謝ると、黒いセーラー服姿の少女は残念そうに肩を落とした。
彼女の名前は茅野 まりか。
自称探偵でありに僕にとって高校の先輩である。
見た目の説明を加えるとするなら少し近寄りがたい美少女だろうか。
モデルのような体系とツンとした顔。髪型はセミロング。
80デニールのストッキングを愛用している。
僕から言わせてもらいたいことがあるとするなら、先輩は美脚で美肌なんだからデニールを薄くしても良いと思います。
後輩へのサービスが足らんのです。
事件現場ではあるけど温泉旅館に来ているのにどうしてセーラー服なのかは、触れてはいけない。
「まただよ悠木クン。ここまで来たら『呪い』とやらを信じてしまいそうになる。探偵としてはシャクだけど」
「そうですね。とりあえず予約してありますしこの温泉旅館に泊まりますか?」
「はぁ、仕方ないよね。ここまで付き合ってもらったのに事件はもうない。探偵もその相棒も手持ち無沙汰だよ。すまない」
「いつも通りですから慣れました。僕は先輩と一緒なら幸せですよ。ミステリーがなくなったんですから旅行を楽しみましょう」
「……はぁ、ミステリーが恋しい」
『いつも通り』。
これが僕・悠木 継春と茅野先輩の日常。
自称探偵と紹介したのもこのためだ。
先輩が探偵になってから事件に遭遇したこともなければ、依頼された事件ですらこうやって別の探偵に横取りされてしまう。
行く先々に事件が起こる探偵がいるとするなら、その探偵に事件を先に解決されてしまう探偵も存在するらしい。
もちろん茅野先輩の探偵としての実力は本物だ。
正直世界一の探偵と評されても驚きはしない。
「お背中流しますよ先輩」
「残念だったね。混浴温泉は事件現場で使用禁止だよ」
それでも茅野先輩はミステリーの蚊帳の外。




