第95話「共存の形」
翌朝、カーラを呼んだ。
ヴォルトの提案——「迷宮と外をつなぐ道を作る」という案を伝えた。
「「道を作る」というのは、物理的な道ですか」
「スキル的な意味だと思います。実際に何ができるかは、試してみないとわかりません」
「でも——」
「でも」
「「中に入る」のではなく「行き来できる道を作る」という考え方は——」
カーラが少し考えた。
「迷宮を征服するでも、封じ込めるでもない。第三の選択肢になり得ます」
「そうです」
「議会が飛びつくかどうかは——わかりませんが」
「わかりません。でも、提案する価値はある」
俺はスキルを展開した。
「通路設計」という機能が、今まで使ったことのない位置に表示されていた。
【迷宮管理Lv.7:新規機能——「通路設計」解放可能状態。解放条件:全当事者の合意が必要】
「全当事者の合意」
俺はその表示を見た。
「誰が「全当事者」になるか」とカーラが聞いた。
「少なくとも三者だと思います。王国。迷宮側の知性体。そしてヴォルト」
「王国の署名は——議会の決定が必要です」
「そうです」
「迷宮側の知性体は——ゴブか、あるいは外に出た知性体の代表か」
「ゴブに聞きます」
「ヴォルトは」
「ヴォルトは合意しています。すでに「来ることはできる」と言った。それが合意の意思表示だと俺は受け取っています」
カーラが「……なるほど」と言った。
「王国の署名が、一番難しいですね」
「そうです。議会全体ではなく、権限を持つ誰かの署名が必要だと思います」
「誰ですか」
「議長か、あるいは——「封印維持への協力」を管轄する委員会の委員長になる人間が適任かもしれない」
「委員会の委員長は——まだ決まっていません」
「だからこそ、ウォリック議員に声をかけたい」
カーラが驚いた顔をした。
「……ウォリック議員に?」
「反対票を入れた人間が委員長になれば——信頼性が上がります。「反対派が納得した」という事実は、賛成派だけが進めるより、重みが違う」
「……」
「ウォリック議員は、「証明できれば信じる」という態度でした。今日の採決で、反対を選んだのは証明が不十分だったからかもしれない。なら、もう一度話を聞いてもらう価値はある」
カーラが「……試みます」と言った。




