ラストリゾート
この危機的状況を打開できうる奇跡のようなアイデアがたった一つ頭に浮かぶ。
が、それでもその作戦には二つ、致命的な欠点があった。
一つめは、暴走列車となったルシャの気をなんとかして引かねばならない事。
そしてもう一つは…
「先生!!!」
「おっっと!!」
シャンティの声に我にかえった時、少し反応の遅れた左腕が思いっきり炎に触れた。
絶えず襲いかかってくる蔦腕に気を取られている間に、背後に広がる炎の壁へもろ突っ込みそうになったのだ。
スペーススーツがなければ火傷は間違いなかっただろう。
速度を落とさず全力で炎の外壁をなぞるように走る俺たち。
本来ならば、この炎の中心が俺らの拠点だった。
しかし、今やそこは逃げ場のない地獄と化している。
故に今俺たちが目指すべきは我らが宇宙船。
俺らに残された安全地帯はもうそこしかない。
しかし船までの最短経路は炎によって阻まれている。
右も左もお先真っ暗な、そんな状態だ。
バタバタバタ…!!!
背後から木々が薙ぎ倒される轟音が響き渡る。
その音は少しずつだが着実に近づいてきており、悠長に思考する猶予などもう残されていないのだと肌に伝わる。
もうこれ以上、決断を待つことはできなかった。
俺は吸えるだけ最大量の酸素を取り込み、子供たちに向かって叫んだ。
「お前ら!!!! 足止めずによく聞け!!!
30秒後、二手に分かれる!!
俺とシャンティ、そして残りのメンツだ!!!
お前らはこのまま火を避けながら、最短で船へと向かえ!!!
シャンティのみ俺について来い!!! ルシャの足止めを行う!!!!」
突然繰り出されたこの指示に対し、真っ先に顔色を変えたのはサハだった。
「シャンティ!? どうして!!?
俺も行ける!!!」
「いやダメだ!!」
「どうして!!?」
「危険だからだ!
そもそも、足止めなんて俺一人でするべき仕事だ。
だが、不覚にもさっきの一撃はいいのを貰っちまった。
不甲斐ないが、俺一人じゃ戦力に心許ない。
だからここはもう一人、このグループのリーダーとしてシャンティについてきてもらう」
「ならよりいっそう俺が!!!
シャンティは俺らに必要だから…!!」
サハの反対は必死だった。
そうだよな、お前ら二人は昔っから一緒だったもんな。
こんな明らかに危険な役目、軽々と任せるわけない…
「うるさいぞサハ!!!」
その時、空気がビリビリとなるほどの声が響き渡る。
そう強く言い返したのはシャンティだった。
こんなにも気迫の籠った奴の声は初めて聞いた。
「俺が行きます、先生。 大丈夫です。」
その目は真っ直ぐ俺を見つめ、少し恐怖すら覚えるほどだった。
だが、よし。
それでいい。
これにはそれなりの覚悟がいる役割だ。
にしても、こいつがこんな顔をするとは…。
「なんだよお前!! 一人カッコつけんなよ!!!」
「サハ!!! こんな状況で場を乱すなよ!!
俺はこのグループのリーダーだ!
お前らは俺らを信じる義務がある!!! そうだろ!?」
その言葉を受けたサハは顔を歪め、すぐには言い返せなかった。
信じる、か。
なんともズルい言葉だな。
「大丈夫だ、サハ。
先生は算段の低い勝負をする人じゃない。
そうですよね、先生?」
そう言ってシャンティはこちらのほうを見返してくる。
ほう、言ってくれるじゃないか、シャンティ。
俺が今構えているのは良くて五分五分、不確定要素もりもりの絵空事のようなもんだぞ?
だが、この細い可能性を手繰らなければ、俺たちの命が危ないことも間違いじゃない。
ここは売り文句に買い文句。その虚勢をお裾分けいただくとしよう。
「ああそうだ、シャンティ。
足止めとは言ったが、面と向かってルシャと対峙するつもりはない。
今の目標はただ一つ、お前らを無事に船まで送り届けることだからな。」
「はぁ?面と向かって戦わないなら、どうやってルシャの暴走を止めるんだよ!?」
アシュがそう割り込む。
彼の顔にも、心配の色が浮かんでいる。
いつの間にかこんなにも周りから愛されるようになっていたんだな、お前は。
「それは直に分かる。
が、今はその説明をする時間すら惜しい。
シャンティは俺の命令厳守でついて来い!! あとのお前らとは船で合流するぞ!!!」
シャンティ以外の顔がまだ暗い。
脳が理解を拒んでいる様子だ。
だが、今は緊急も緊急。無理にでも飲み込んでもらうしかない。
俺はもう一度肺が痛くなるほど空気を吸い込む。
「お前ら、分かったか!!!!」
「「「…ガッチャ!!!」」」
その返事を皮切りに俺とシャンティは急ブレーキをかけその場に立ち止まる。
急に速度を落としたから相対的に、迫り来る巨大な怪物がドッと加速したように見えた。
先と比べて少しばかり背が伸びたように見えるその黒い影はバッタバッタと木々を薙ぎ倒し、ブルドーザーのような轟音を響かせ迫りくる。
この場所にも、あと数秒もしたら追いつかれるだろう。
この数秒で、俺たちの運命が決まる。
俺はシャンティの腕を強引に掴んだ。
「シャンティ、悪いな。
一旦地獄を経由してからいくぞ。」
そう一方的に言い残してから今度はルシャへ向かって叫ぶ。
「ルシャア!!!
担任命令だ!!! 三者面談をおこなう!!! ついて来い!!!!」
スラスター、オン。
ビュンッ!!!
俺はそのまま左手方向へと舵を切り、ゴウゴウと燃え盛る業火の壁へシャンティ諸共突っ込んだ。
出力全開のスラスターは慣性を強引に動かし、俺とシャンティは勢いよく炎の壁を貫く。
ここの重力が弱くて助かった。 そうでなきゃ、いくら全開でもここまでの速度を急には出せなかっただろう。
一瞬目の前の景色が赤色に染まったのち、すぐに暗い森へと戻された。
よし、イメージ通り。
俺たちは強引に炎の内側へと入り込むことに成功した。
さぁ、ここからだ。
一つ、運試しといこうじゃないか。
===
「悪いな、一旦地獄を経由してからいくぞ。」
そういった先生の目は真剣さの裏にどこか今を楽しんでいるように見えた。
そんな考えにうつつを抜かした瞬間、俺の肩が思いっきり引っ張られる。
脳が揺れる衝撃と共に、気がついたら俺の体は炎の壁を超えていた。
一瞬にして、目の前の景色が変わった。
さっきから煙と炎でむさ苦しかったが、ここはその比じゃない。
自分たちが通り抜けた炎の壁は依然としてメラメラと燃え続けている。
でも一瞬だったからだろう、体には特に火傷を負った感覚もない。
中は外と比べ遥かに視界が悪く空気も悪辣だが、それもヘルメットさえつけていれば問題ない。
なるほど。
俺はそう思った。
ルシャを足止めすると言った先生。
けれど、あんな非現実的な力を持ったルシャにどうやって対抗するのか。
その答えは、今まさに俺たちが乗り越えた壁。
火なんだ。
ルシャの体には今、何十、何百もの蔦が巻き付いている。
俺たちと比べ、その胴体は引火する可能性がずっと高く、そのうえ火によるダメージも大きい。
さらに今、ルシャはその大きさ故に地上のものを薙ぎ払いながら進んでいる。
俺たちが中に入った以上、火を避けて追うことはできないんだ。
ミシミシミシ…… どーーーん…!!!
そんなことを考えるのもつかの間、ついに目の前の木々が割れ、巨大な影が目の前に立ちはだかった。
地に倒れた炎は依然勢いを保ったまま勢い良く燃え上がり、自然に流れる先へと無造作に広がる。
それはもちろんルシャの体も例外ではなく、足がわりの蔦がメラメラと炎を帯び始めた。
引火した炎がその巨大な影を下方から照らし上げ、その全様を徐々に明かしていく。
それは高さ三メートルほどだろうか。
蔦をぐるぐると巻き付けた胴はまるでドレススカートのようになり、上へ進むにつれその半径が狭くなっていく。
途中、網戸のように粗い目で覆われた幕の中に、少しの空間が見えた。
中は暗くて見えずらいが、そこに何があるのかはすぐに分かった。
ルシャの顔だ。
一瞬、舞い散る火の粉がその空間を暖かく照らす。
温かみを含むその光に対し、映るルシャの顔は表し難いほどに無惨であった。
双眸は瞼が千切れてしまうほど大きく見開き、充血した眼球からは溢れんばかりの血涙がトロトロと垂れ流れている。
中途半端に開いた口からは嫌に感情が読み取れない。
あらゆる所が茨のような蔦でギリギリと締め上げられ、あふれ出る鮮血が顔中を真っ赤に染める。
もはや彼女自身にすらその力を制御できていないことなど明らかであった。
それはかつての仲間の姿とは似ても似つかない異形。
その凄惨さに俺は思わず目を逸らしてしまう。
「シャンティ!!!走れ!!!」
先生が俺の体を無理やり引っ張り立ち上がらせる。
そこで初めて、自分が地面に転がっていたのだと気がつく。
「せんせー…、、、
面談、…は……?」
逃げようと背を向けた俺たちにルシャが消え入るような声でポツンとつぶやいた。
が、次の瞬間にはもう見慣れた蔦腕が宙を舞い、明らかな殺意を纏って襲ってくる。
「もう死んでよ……
みんな死んじゃえよ……!!!!」
悲鳴のような叫びと同時に放たれた蔦腕は即座に先生が光銃で打ち抜き、それが地に触れるや否や勢いよく炎の燃料と化する。
明らかに殺意のこもったその攻撃。
けれどそんな行動とは裏腹に、彼女の叫びからはなぜか怒りの色が感じられなかった。
それよりもただ、全身をキツく締め上げるその制御不能の痛みを必死に噛み殺しているような、激痛に悶えながら瀕死で送る、悲痛なSOSのような。
「シャンティ、走れ!!!
このまま拠点へ真っ直ぐ走って、最短距離で宇宙船まで走るんだ!!!」
「ガ…ガッチャ…!!」
俺は先生の指示に従った。
そうすることしかできなかった。
あの、苦しそうで痛そうで、見ることも拒んでしまうようなルシャの姿を背に、俺はただまっすぐ逃げることを選んだ。
ルシャの攻撃が矢継ぎ早に繰り出されるのを背に感じる。
そしてそれらを全て先生が撃ち返していることも。
俺はその攻防には加勢せず、ただひたすら前を向いて走った。
背中を先生に任せ、暗い森の中をただ真っ直ぐに駆ける。
本当は、先生のように後ろを警戒し、光銃で応戦しながら走りたい。
けど、もうその体力が残っていなかった。
ただでさえ、少しでも気を抜けば足を絡ませて転んでしまいそうなんだ。
地を踏み込む足の感覚が掠れていて、走ることにしか集中できないんだ。
いや
本当にそうなんだろうか……?
本当はただ、見たくなかっただけなんじゃないだろうか。
あんな姿のルシャを、あんな苦しそうなルシャを、もう視界に入れたくなかったんじゃないのだろうか。
程なくして、俺たちは拠点へと辿り着く。
たった二週間しか滞在していなかったはずなのに、その場にはいくつもの思い出が刻まれている。
皆で食べたご飯。
テント割りを決めたあの夜。
初めて獲物を持って帰ってきた場所。
キャンプファイヤー場。
ルシャの研究室。
みんなで夜空を見た、あの広場。
どうして、こうなってしまったのだろう。
どこで、おかしくなってしまったのだろう。
記憶の中に残る綺麗な青緑色は今、醜い赤と黒で覆われている。
テントや草木が燃え散るにつれ、まるで俺たちの思い出も燃えて消えていってしまうような。
溢れ出そうになる感情を胸の奥に押さえ込む。
まだダメだ。
今はまだ。
今はまだ、ダメなんだ。
ふと、耳がよく冴えた。
音が、少し、足りない。
足音が、少し足りない。
囂々と周りがうるさいから、脳が勝手にシャットアウトしていた雑音。
自分の足音しか、聞こえない。
「先生!!!!!!」
振り返ると、ずいぶんと後ろに先生のシルエットがあった。
重心が片側に寄り、両手で光銃を構えている。
銃口の先にルシャはいて、先生の目の前で止まっていた。
「…やっと、
追いついた。
せんせー? せんせーって、ほんと、なんでもできちゃうよね…?」
ルシャの声が遠くに聞こえる。
周りがうるさくて、しっかりと聞こえない。
「オールマイティっていうか…、
なんかすごく…
うざい__」
その音は震えていた。
あたりがものすごく静かだった。
「ルシャ、
君があの湖で一体なにを経験したのか、何が君を駆り立てているのか、先生には分からない。
ゆっくりでいい。
ゆっくりでいいから、何があったのか、先生に聞かせてくれないか…?」
ルシャは小さく息を吸った。
「…全部
私のせいなの……
分かってるの………全部私が出来損ないだから……
…お兄ちゃんだって………」
「大丈夫だ、ルシャ。
大丈夫。
君は決して、君が思っているほど悪い子じゃあない。
これまでだって沢山、君にしかできないことがあっただろう…?」
「そんなことない……
私にできることなんてみんな、やろうと思えばすぐできる。
いつまで経っても、できないのは私だけ」
先生がその場から一歩だけ、足を踏み出した。
「ルシャ、
君はみんなに、先生たちに。
これまでたくさんのことを貢献してきたんだ。
君が自分をどう思おうと、その事実は変わらない。
そうだろう…?」
「……違うよ。」
そのとき、空気が凛と鳴った気がした。
「私がみんなに貢献したことなんて一つもない。
私はただみんなについてきただけ。
みんなの話に頷いてただけ。」
遠くに映る暗い幕の奥に、キラリ透明な雫が光る。
「この星に着いて、やっと活躍できると思ったのに…。
やっぱりできなかった…
できないだけじゃなくて…
私、アスヤー君を殺しかけた…。
私の浅はかな勘違いで、みんなのことを殺しかけたの……!!」
その声は、もうルシャの声だった。
聞き覚えのない怪物の声じゃなく、あの、ルシャの声だ。
「それなら」
先生が優しく続けた。
「それなら、
もう一度、研究を再開させればいい。
大丈夫。
次はきっと、成功する。」
「そ…そんなこと、できるわけないじゃん…!!!
みんなを殺しかけたんだよ!?
アスヤーくんもアティーテさんもリタちゃんもニルくんも…!!
みんな、みんな…!!!
もう遅い…遅すぎるの…!」
「そんなことはない。
過ぎたことは、ぜんぶ過去の話だ。
過去のことは、今にはもう、関係ない。
みんな、君のことを待っている。
このチームにはまだ、君の力が必要なんだ。」
「でももうダメなんだよ…
私がもう…全部台無しにしちゃった…。
みんなの気持ちも、私達の居場所も、全部、全部…!」
「…大丈夫。」
そう言って、先生はルシャの顔をまっすぐに見つめた。
ああ、そうだ。
あの男は、いつもそうだった。
施設に来たばかりの時
俺たちの荒んだ心を魔法のように落ち着かせ
どんな過ちも全て包んで受け止めてくれるような
そんな温かい眼差しで。
「大丈夫だ。
大丈夫なんだ。
だから、
みんなの元へ、帰ろう。」
「わたし…」
ズシャッ…!!
その時、何かが宙に飛んだ。
細い、腕のようなものが。
それは、
誰の?
視線が跳ね飛んだ物体から先生の方へ移る。
その影に変化は無い。
じゃあ、さっきのは…?
飛んだ先へ目を凝らすと、一際太い蔦腕が一本、地面に転がっている。
あれは、ルシャの腕だったものだ。
でも、なぜ…?
「…いいな、いいなー!」
その時、かすかに聞こえてきたその音はまるで無邪気な子供のように明るく、愛くるしい響きだった。
「あ…
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”…!!!!!」
鼓膜をつんざくようなルシャの悲鳴が辺り一体に響き渡る。
「わ、わたし…
あ、あの子を……!!!」
「いいなー、でっかい、でっかい!」
「僕も、僕も!!」
「ルルの!! あれ、ルルの!!」
ルシャの他に、だんだんと音の数が増えていく。
森の奥から、彼らの影がモゴモゴと動いて近づいてくる。
その一部分に明かりが宿っているように見えるのは何かの見間違えだろうか。
「シャンティ、ぼーっとすんな!!!!」
そんな怒号と同時、急に左腕が掴まれ、勢いよく後ろに引っ張られる。
体の向きを変える余裕すらなかったから、俺はなすがままに引きずられる。
「行くぞ、シャンティ!!!」
いつの間に走り出していたのだろう、先生は有無を言わせず俺を引きずる。
あまりの速度に、体が宙に浮いてきそうな勢いだ。
俺はなんとか体勢を立て直そうと足を動かすのだが、視線だけは後ろの光景から離れてくれなかった。
ますます離れていくルシャの姿から、蔓腕が、一本、また一本と跳ね上がっていくその光景から。
「せ、先生…、 ル、ルシャが…
…うわっ!!」
その時、先生は急に俺を上へ引っ張り上げる。
肩が外れそうになりながら、俺の上半身が縦に伸びる。
そしてそのまま、気がついた時には俺は先生の背中の上にいた。
「…ちょっ……先生…!」
この後に及んでおぶられるとは思わなかったから、その状況にそこはかとない恥を感じた。
けど、そんなこと一瞬で忘れて、再度後ろを振り返る。
ビシュッ ビシャッ ビシュッ ビシャッ…!!!
どんどん小さくなっていくルシャの姿に、花吹雪を降らすように蔦腕が舞い落ちる。
目にも見えない速度で何かが宙を裂き、ルシャの装甲が次々に剥がれ飛んでいく。
俺には今何が起きているのか、全く分からなかった。
ただその場で唯一わかったこと。
ルシャが危ない
「先生!!!! ルシャが…!!!」
そう先生に叫んだ次の瞬間
「ぐっ…!!」
電撃のような激痛が全身に走り、俺の意識は驚くほどはやく遠のいていった。
まるで寝落ちしてしまうように、ゆっくりとルシャの影を眺めながら。
「……_ティ! ……__ンティ…!!
シャンティ…!!!」
近くから声がする。
聞き馴染みのある、安心する声。
その声に俺はゆっくりと目を開けた。
周辺が嫌に明るい。
自然由来じゃない、人工的で無機質な光。
きょうび感受してなかったものだ。
周りを見渡すと、そこにはみんながいた。
真横にはサハがいて、その横にはリタ。
ニルがいて、アティーテがいて、その奥にはアシュの姿も見える。
みんな驚いたような顔をして、涙ぐんでる奴もいる。
その時、俺の体からサーっと血の気が引いていくのを感じた。
最後に見た光景が頭の中でフラッシュバックしたんだ。
心臓の音が徐々に速くなった。
ルシャは……?
そう思った時、まだ口に出していないのにサハの顔が歪んだ。
サハの方を見つめる。
サハはゆっくりと首を振った。
〜イルシャー豆知識その16〜
暴走したルシャは蔦を円錐形に纏わせて、緑のドレスを着ているような姿になっているぞ!足元にはたくさんの蔦が欠け落ちたルシャ脚を補完して、人間には出せないような超スピードを出すこともできるんだ!でも、遮二無二に侵攻方向へと進もうとするから、信じられないくらい絡まってしまうぞ!
絡まったら転んじゃうんじゃないかって?モーマンタイ!絡まりそうな時は、太い蔦が細いのを引きちぎって強行突破していくんだ!
故に、ルシャの通った後にはちぎれた蔦腕がいっぱい転がっているらしいぞ!




